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【亀山千広氏が語り尽くす、「室井慎次」2部作誕生秘話Vol.1】柳葉敏郎×君塚良一×本広克行と膝を突き合わせた会談の場で“事件”は起こった

映画.com / 2024年11月27日 12時0分

■これ以上やっても、同じことを繰り返すことになる…

――「室井慎次」2部作については、脚本の君塚良一さんから届いたメールがきっかけだったとうかがっています。

 亀山:一昨年の12月にメールが届いたんです。普段そんなに頻繁にやり取りをしているわけではなく、君塚さんが手がけられた作品を観たときは感想を送るなど、年に1回あるかないかで12年間過ごしてきたわけです。そんな君塚さんから、「室井慎次の終焉を書きたい。もう一度、3人(君塚・本広克行監督・亀山)で仕事をしませんか?」という内容の短いメールでした。これは会わなければならないと思って、すぐに会って話をしたら、「僕らは終わらせたつもりだけど、終わらせていないんじゃないか。一緒に作ってきた仲間はみな、今もそれぞれ背負っているんじゃないか」と言うわけです。

 「踊る大捜査線」って組織論を描いてきたわけです。官僚たちは制度を作る側だから、自ずと制度に縛られる。ただ、それだと捜査は前に進まない。だから所轄はそこから逸脱して自由に動き犯人を逮捕するものの、褒められないという構図。このファンタジーとリアルのせめぎ合いが面白かったんだと思うんです。

 やめた理由も、そこにあるんです。“本店”と所轄という図式が色々な形で扱われ始めて、やり尽くしたとは言わないけれど、青島たちが偉くなっていくことが果たして面白いのだろうか、否、そうではないだろう。室井だって昇格や降格を繰り返している。これ以上やっても、同じことを繰り返すことになってしまう。

 また、君塚さんは「教場」の脚本を手がけられていますが、風間公親の生き方を書いていますから、同じレイヤーにいるわけです。孤独に自分を律して信念を突き通す男に触れるうち、室井のような男をあのまま放っておいていいのか。リアルな人たちに対して、決着をつけないとまずいのではないか…というのが君塚さんの主張でした。

 実際に僕の耳にも入ってきていましたが、柳葉さんは室井を背負ったまま完結後の12年間、オールバックで出るような役、スーツ着用の役は全て断っていたらしいんです。僕らが柳葉さんの役者人生に制限をかけてしまっているのではないかと……。そういう背負わすものを作ってしまった責任は亀山さんにも本広監督にもある。だから3人で仕事がしたい。柳葉敏郎が背負っているものを、楽にしてあげたいんだと。

 君塚さんも12年間、背負ってきたんですよ。現場を離れて久しい僕にしたって、「踊る」のキャスト陣がドラマで活躍しているのを見ると、「織田くん、こういう役もやるのか」「深津さんはますます綺麗になっていく。すみれさんは傷が癒えたのかしら」なんて思うわけです。君塚さんだけじゃない、僕も背負ってきたんだな。じゃあ、わかりました。やりましょう、ということになったんです。

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