【インタビュー】「ハーメルンの笛吹き男」から着想した「クラブゼロ」 ジェシカ・ハウスナー監督が紡いだ「操ることについての物語」
映画.com / 2024年12月5日 13時0分
ミアが作品のコンセプトをはっきりと理解してくれたことが、とても嬉しかったです。私たちがこの映画で作ろうとしているのは、個別のキャラクターや心理状態ではなく、原型、ある種のタイプ、典型的な状況でした。ある種の型を、キャラクターとして演じてもらう。例えばバックストーリーはどうか、そのときの細かい感情はどうか、話す必要は一切なかったんです。
自分の作品では、古来のパワープレイを主軸に置いています。誰かが力を持っていて、ほかの誰かが何かを求めていて、キャラクターは自分の本当の目的を隠したり、社会や集団のルールに従わなければいけなかったり……という物語なんです。だから、個人がどうというよりも、型から物語を作っているということを、ミアは理解してくれました。
――前作に続き本作でも、鮮烈ですがどこか人工的な色遣いが特徴的です。例えば生徒たちの制服は、蛍光色のような黄色ですね。ビジュアル面のこだわりを、教えてください。
それがまさに最初に出てきたおとぎ話とつながっているところで、自分の視覚的なスタイルに影響を与えていると思います。先ほどもお伝えした通り、本作では個人というよりも、アイコンや型のようなキャラクターが、社会のいろいろな立場を代表しているんです。それを寓意的に、視覚的な要素を組み合わせて表現しています。
――本作では、断食する生徒たちがやせ細っていく変化を、衣装を大きくしたり、メイクをグレー系にしたりして表現されたそうですね。特にメイクは、黒澤明監督の「どですかでん」にヒントを得られたと伺いました。
黒澤明監督作品は、自分の若い頃に、大きな存在感がありました。(出身の)オーストリアのみならず、ヨーロッパで最も見られていた日本の監督だと思います。16~17歳頃に作品と出合って、様式美のようなものに感服しました。ヨーロッパのスタイルと全然違うので、とても好きでした。
おっしゃる通り、「どですかでん」にも影響を受けています。「どですかでん」のビジュアルは、シンプルさを際立たせるようなものでした。些末な小屋のような場所に2組のカップルが住んでいますが、黄色と赤色の洋服に身を包んでいて、しょっちゅう喧嘩していて、自分は相手とは違うと思っているけれど、結局は同じだということが表現されている。そういう黒沢監督の視覚的なジョークも面白いと思いましたし、ユニークだなと感じました。
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