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“人生における困難から目をそらさないこと”ティルダ・スウィントンが語る、ペドロ・アルモドバル監督作の普遍性と死への向き合い方

映画.com / 2025年2月1日 10時0分

“人生における困難から目をそらさないこと”ティルダ・スウィントンが語る、ペドロ・アルモドバル監督作の普遍性と死への向き合い方

 2024年・第81回ベネチア国際映画祭で最高賞の金獅子賞を受賞した「ザ・ルーム・ネクストドア」が公開された。スペインの名匠ペドロ・アルモドバルによる初の長編英語劇で、ティルダ・スウィントンとジュリアン・ムーアが共演したヒューマンドラマだ。

 病に侵され、安楽死を望む女性マーサは、彼女を古くから知る友人イングリッドに、自身の最期までの時間を共に過ごしてほしいと依頼する。死というテーマから、人間の孤独、かけがえのない友情、家族との関係など、名優ふたりの美しく軽やかな会話劇で、人間誰しもが経験する普遍的な感情、そして最期を丁寧に紡いでいく。昨年11月に来日したティルダ・スウィントンに話を聞いた。

※本記事には映画のネタバレとなる記述があります。

――このインタビューの前にあなたが登壇した「CHANEL and Cinema TOKYO LIGHTS」でのトークで、演技における最近の新しい試みとして、「自分自身を役柄に反映させるようになった」と仰っていました。病に侵され、人生の終わり方を自身で決定するマーサを演じるにあたり「偽物に見せたくなかった」ともコメントしていましたが、あなた自身とマーサはどのように共鳴し、どのような部分を重ねたのでしょうか?

 この物語で、マーサとイングリッドは、病という苦境と、無力というものに直面します。無力という状況に陥った彼女たちは、ある種正直であることに純化したとも言えます。私たちは皆、このような人間関係を知っているし、このような苦境を知っているはずです。人々が人生の中で困難に直面したときに、つながりや誠実さにおいて、美しいこと、本物の奇跡が起こる――しかし、そういった現実はあまり語られません。そして、それを映画で見ることは非常に稀で、特に女性ふたりが一緒にいるところを描く作品はほとんどないでしょう。ですから、ジュリアンと私は、このような作品へ参加する機会を与えられたことをとても光栄に思っています。

 自分の若い時代を知っている人物と再会するということは、とても美しいことだと思うのです。それは、ずっと連絡を取り合っている仲よりも特別なことだとも言えます。そして、会っていなかった間の自分の気がかり、例えば子どものこと、老い、仕事、住まい、転居……そういったことは、本当に深い意味で重要なことではないのです。

 私がこの映画に持ち込んだ私自身の経験は、自分が何度かイングリッドの立場にあったことです。多くのマーサたちを前にし、彼、彼女たちから学びました。ですから、今回、自分をマーサの立場に置くことは、その経験を振り返る素晴らしい機会だったのです。それは、ある家に住んでいて、近くにある別の家を見るようなものです。そしてある日、その家に入ると、違う窓から自分の家が見える――それはとても不思議で啓発的な体験でした。

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