女優・寺島しのぶが語る映画の魅力、それはただ見るのではなく“考えること”
Entame Plex / 2016年10月29日 12時45分
――今回の美咲の破壊力も相当でしたからね。女性は怖いです(笑)。
「女性は我慢するというか、母性が出てきちゃうんですよ。彼女も正夫に対していわゆる介護みたいになっているけど、でもそれが全てじゃない。いろいろなことが積もり積もって最後に……。そこはわからなくもないですね」
――それは男性から見ると恐怖でしかないです。
「私もそうだと思います(笑)」
―― 一方で今作における正夫と宮本の関係性。60歳を過ぎて芯を昂らせている生き方には憧れを感じました。
「そうですね。この作品は監督が親しくされていた作家さん(『そこのみにて光輝く』『オーバー・フェンス』などの原作者である佐藤泰志さん)が自殺したところから始まったと仰ってましたけど、様々なバックグラウンドが監督の中で敷き詰められているんですよ。それはすごく感じました」
――それだけにリアルで説得力もある。
「内容もそうだけど、文字と言葉の力強さみたいなものもありますよね。非常にインテレクチュアル(知的)な作品だと思います」
――言葉という部分ではすごく強さを感じる反面、一瞬音がなくなるような感覚もして。
「セリフ自体は結構美しくてキレイな、そんな言葉を発しているんですが、本当に言いたいことは暗くて、黒い。そこは監督も“僕の作品は美しくもなんともない”って仰ってましたけど、そういう部分も確かにありますね。人間関係のやりとりって、いくつになってもきっと誰かと繋がっていると思うんです。ただ、人と人が繋がりつつも最後は個人でいろいろな葛藤がある。そんな個と繋がりが今回はすごくバランスよく描かれると思うんです。正夫はものすごく孤独だけど、なんとか繋がろうとしてる。それはシビアだなって思うし、考えさせられることも多いですよね」
――バランスもそうですが対比も気になりました。正夫と宮本、美咲とミク。その中で宮本の私生活があまり描かれていないのが印象的で。キーパーソンなのに彼の日常がわからないっていう。
「そこも絶対に何かあるんですよね。そうやって作品を見て考えてもらえるとすごく嬉しいです」
――考えることが重要だと。
「今こういった映画は作られているけど、しっかりとみなさんの前に出せるものは少ないと思うんです。インディペンデント映画ってメジャーのお金のある作品に比べて宣伝費がないし、観客も少ない。でも、私はそういったマイノリティを大切にしていきたい。届き辛いとは思うんです。なぜなら今の世の中は情報が飛び交っていて、映画も言葉で説明して、観客は何も考えなくてもわかるようなものが多いから。でも、それだけだと観客はどんどん浅はかになっていってしまうと思う。この映画のように“何だったの?”って考えることが大事。私はこれぞ映画だなって思います。映画のあり方を改めて感じさせられましたね」
――それは決して規模感で計れるものじゃないんですね。
「どこかフェアじゃない気がするんです。インディペンデントとメジャーで。クオリティで考えればインディペンデントでも高い作品はいっぱいあるのに、興行や動員などの数字でジャッジされてしまうのがどうしても納得いかなくて。だからこそこういった映画、自分がいいと思う作品にはどんなことをしても携わっていきたいし、そういったものを多くの人に見てもらえるような橋渡し的な存在になれたらって思っています」
映画「秋の理由」は、10月29日(土)より新宿K’s cinemaほかにて全国順次公開。
©「秋の理由」製作委員会
スタイリスト:中井綾子(crêpe)
ヘアメイク:片桐直樹(EFFECTOR)
【衣裳協力】
Dorothee Schumacher
REKISAMI
e.m.
Photo by 竹内洋平
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
江口のりこ×内田慈×古川琴音が三姉妹役で壮絶バトル 抱腹絶倒、家族の欠点が愛おしい「お母さんが一緒」撮影の裏側は?
映画.com / 2024年7月14日 10時0分
-
Netflix 映画『Ultraman: Rising』監督&共同監督が語る「ウルトラマンの持つ哲学が、自分が人生を生きるうえでとても助けになっている」
ガジェット通信 / 2024年7月12日 13時0分
-
認知症の父の心の迷宮で見つけたものは… 森山未來&藤竜也、近浦啓監督「大いなる不在」で魅せる居合のような対峙
映画.com / 2024年7月12日 13時0分
-
永瀬廉&出口夏希、愛する人を看取りたい?看取られたい?『よめぼく』期限付きの恋で得た答え
シネマトゥデイ 映画情報 / 2024年7月5日 8時2分
-
河合優実&吉田美月喜、勝てない経験も糧に『ルックバック』が描く嫉妬と憧れに抱く共感
シネマトゥデイ 映画情報 / 2024年6月21日 8時30分
ランキング
-
1《田中美佐子との格差離婚から1年》元夫・深沢邦之が女性ファンと腕組みホテル密会「舞台直後、愛車助手席に乗り込んだ彼女」
NEWSポストセブン / 2024年7月17日 12時30分
-
2お笑いコンビ マンホルモン・秦野隆光さん、交通事故で死去 35歳 相方がコメント「僕も悔しい」
日テレNEWS NNN / 2024年7月17日 16時25分
-
3やす子「24時間テレビ」チャリティーランナーに決定 並々ならぬ想いの背景に児童養護施設育ちの過去「恩返しができたら」
モデルプレス / 2024年7月17日 4時0分
-
4上戸彩「タレントパワーランキング」で1位 38歳でも唯一無二でいられる理由は「圧倒的な華」
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年7月17日 11時24分
-
5MBSテレビ「せやねん」ロケでの相次ぐ事故に「各現場で安全管理の確認を徹底」
スポニチアネックス / 2024年7月17日 16時19分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)