夫の働き方による遺族年金の違いって?~会社員の場合と個人事業主の場合~
ファイナンシャルフィールド / 2021年4月6日 10時10分
遺族年金は、国民年金から支給される遺族基礎年金と、厚生年金から支給される遺族厚生年金の2種類があります。死亡時の被保険者の性別や働き方、子どもの有無や人数によって、遺族年金の種類や支給される金額が違います。
夫死亡時に会社員だった場合と個人事業主になった場合と比べてみます。
夫死亡時に会社員の場合は遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方受け取れる
会社員は国民年金と厚生年金の両方に加入しているため、両方の年金制度から遺族年金が受け取れます。会社員男性(40歳)死亡時に、専業主婦の妻(40歳)と子ども(8歳)が受け取れる遺族年金について見ていきましょう。
【遺族基礎年金】
会社員の場合は、給与から天引きされている厚生年金保険料に含まれているため、保険料の納付要件は問題ありません。遺族基礎年金は加入年数にかかわらず子どもがいる配偶者に支給されます。子どもがいない配偶者には支給されません。
子どもが18歳になって最初の年度末まで、今回のケースのように子ども1人の場合、約100万円受け取れます。この金額は老齢基礎年金の満額に子どもの人数により加算された金額です。なお、障害年金の障害等級1級または2級の場合は20歳まで支給されます。
今回のケースでは、子どもが8歳から18歳までの10年間で約1000万円受け取ることができます。
【中高齢寡婦加算】
子どもが18歳になったときに、妻が40歳以上65歳未満の場合、厚生年金から中高齢寡婦加算が受け取れます。妻自身の老齢基礎年金が支給される65歳までの期間限定で、遺族厚生年金に加算されます。
今回のケースでは、妻50歳から65歳まで15年間で約900万円受け取ることができます。
【遺族厚生年金】
遺族厚生年金は、夫が受け取る予定の老齢厚生年金の4分の3の金額です。ねんきん定期便を見て試算してみましょう。
夫のねんきん定期便発行時の、厚生年金に加入していた期間は180月です。Aの被保険者期間が300月に満たない場合であっても、300月で計算します。これを短期要件といいます。被保険者期間の短い人でも極端に少ない遺族厚生年金にならないための最低保証です。
短期要件の適用を受けるためには以下の条件があります。
●厚生年金保険の被保険者が死亡したとき
●死亡時に厚生年金保険の被保険者ではない場合でも、被保険者期間中の傷病により初診日から5年以内に死亡したとき
●1級または2級の障害厚生年金の受給権者が死亡したとき
今回のケースで被保険者期間A:180月<300月ため、短期要件で計算します。
老齢厚生年金(C)÷厚生年金被保険者期間(A)×300×3/4
ねんきん定期便の数字を当てはめると28万円÷180×300×3/4=35万円です。遺族厚生年金は年間35万円、妻が40歳から65歳までの25年間に受け取る遺族厚生年金は875万円になります。
今回のケースでは、妻が65歳になるまでに受け取る遺族年金の合計は遺族基礎年金1000万円、中高齢寡婦加算900万円、遺族厚生年金875万円の合計2775万円です。
会社を辞めて独立起業、個人事業主になったら保障は大幅に減少
会社を辞めると厚生年金の被保険者資格を失い、国民年金の被保険者となります。個人事業主になってから、死亡すると、先ほどの会社員夫の遺族年金と比べて受け取れる年金額は大幅に減額します。
国民年金の被保険者になると、ねんきん定期便の受給資格期間(B)が300月ない限り、上記の点線で囲まれた部分の「遺族厚生年金」と「中高齢寡婦加算」が支給されません。300月以上(老齢厚生年金の受給資格期間を満たす期間)あれば、遺族厚生年金は実期間で計算して支給されます。中高齢寡婦加算に関しては加入期間20年以上という条件がつくなど、支給される条件が大きく変わります。
ねんきん定期便で直近1年間の納付状況が確認できます。国民年金の保険料を納めていないと、遺族年金の受給権そのものを失うことにもなりかねません。保険料は忘れず納めましょう。今回のケースでは、遺族基礎年金1000万円のみとなります。
遺族への保障が少なくなった分備えましょう
上記のように会社員から個人事業主へと働き方をシフトすると、国の保障は会社員のときと比べて大きく変わります。遺族年金もその1つです。民間の生命保険で足りない分を補うなど、家族を守るための備えを検討する必要があるでしょう。
執筆者:黒木留美
黒木DC調査研究所 所長 AFP 2級ファイナンシャルプランニング技能士
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