【年金】「過去5年分を一括受給」できる制度とは? 対象者について解説
ファイナンシャルフィールド / 2023年5月21日 3時0分
令和5(2023)年4月から老齢年金の繰下げ制度の一部が改正され、「特例的な繰下げみなし増額制度」が始まっています。当制度の創設によって、繰下げ待機した年金の一部が時効で消滅するという事態を回避できるようになり、過去5年間分の年金が一括受給できるようになりました。 一体、どういうことなのか。本記事では、特例的な繰下げみなし増額制度とその対象者について詳しく解説します。
特例的な繰下げみなし増額制度とは?
特例的な繰下げみなし増額制度は、令和4(2022)年4月の年金制度改正法による、「繰下げ受給の上限年齢引き上げ」に伴って設けられた制度です。
・繰下げ受給の上限年齢引き上げの概要
老齢年金(基礎年金と厚生年金)は65歳から受給できます。ただし、あえて65歳から受給せずに、繰下げて受給することも可能です。繰下げて受給することで、繰下げ待機分(受け取らない期間)だけ年金額が毎月0.7%増額されます(増額率は一生変わらない)。繰下げ受給年齢には上限がありますが、令和4年4月から5歳引き上げられて75歳となっています。
繰下げ受給年齢の上限が引き上げられたのは、「70歳までの定年の引き上げ」などの努力義務を企業に課した、令和3(2021)年4月施行の「高年齢者雇用安定法の改正」が理由です。当改正によって、多くの企業で働く意欲のある高齢者が70歳まで働ける環境が整えられました。
働き続けている間は年金を受給しない可能性が高いため、国は年金の受給年齢の上限を75歳まで引き上げたのです。
・特例的な繰下げみなし増額制度が創設された背景
繰下げ受給を選択した場合の年金の受給方法は、(1)「繰下げ申出月の翌月から増額された年金を受給」(2)「繰下げ申出をせずに65歳までさかのぼって増額なしの年金を一括で受け取る」という2種類です。
ただし、後者の場合にさかのぼれるのは最大5年までのため、例えば71歳になってから一括受給を選択すると、1年分(65〜66歳)の年金は時効によって受け取れなくなってしまいます。これでは、70歳以降も繰下げ待機をしようという人が減ってしまいかねません。
そこで、国は繰下げ受給の上限年齢が75歳に引き上げられるタイミングで特例的な繰下げみなし増額制度を創設し、70歳以降に(2)の方法を選択した場合であっても、時効分を含む過去5年間分の年金を一括で受け取れる体制を整えたというわけです。
特例的な繰下げみなし増額制度の対象者
特例的な繰下げみなし増額制度は、繰下げ受給を選択すれば誰でも対象になるわけではありません。
当制度の対象になるのは、(1)昭和27年(1952)年4月2日以降に生まれた人(令和5年3月31日時点で71歳未満の人)と、(2)老齢基礎年金と厚生年金の受給権の取得日が平成29(2017)年4月1日以降の人で、令和5年3月31日時点で老齢基礎年金と厚生年金の受給権の取得日から起算して6年を経過していない人です。
なお、80歳以降に請求する人や、請求の5年前の日以前に障害年金と遺族年金の受給権がある人は、特例的な繰下げみなし増額制度の対象にはなりません。
特例的な繰下げみなし増額制度の利用には請求書の提出が必要
特例的な繰下げみなし増額制度を利用するためには、年金事務所への請求書の提出が必要です。
すでに老齢年金を受給しているか初めてかで、請求書の種類が異なります。老齢年金を受給しているか受給していたことがある人は「老齢基礎・厚生年金裁定請求書/支給繰下げ請求書」を、老齢年金を初めて請求する人は「年金請求書(国民年金・厚生年金保険老齢給付)」を提出します。
当制度の対象者で、70歳以降に「繰下げ申出をせずに65歳までさかのぼって増額なしの年金を一括で受け取る」方法を選択する人は、忘れることなく所定の請求書を提出しましょう。
出典
日本年金機構 令和5年4月から老齢年金の繰下げ制度の一部改正が施行されました
日本年金機構 年金の繰下げ受給
日本年金機構 令和4年4月から年金制度が改正されました
厚生労働省 高年齢者雇用安定法の改正 70歳までの就業機会確保
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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