会社の福利厚生に、加入自由な確定拠出年金の制度があります。加入した方がいい?
ファイナンシャルフィールド / 2019年5月22日 9時0分
会社の福利厚生制度として、企業型確定拠出年金(以下企業型DC)制度を導入する企業も増えてきました。政府の目標であった「2020年に2万社」を大きく上回り、2019年2月末現在で約32,600社の会社で導入しており、加入者数で約690万人になっています。 個人型確定拠出年金(以下イデコ)の加入数は、同時期で約118万人(厚生労働省HP 確定拠出年金各種データより)なので、実際は、確定拠出年金は会社で加入している人が多いという現状です。 その中でも企業型DC制度に加入するかしないかを本人が意思決定できる、選択制確定拠出年金(以下選択制DC)制度について、従業員側からみた場合で考えていきたいと思います。
選択制DCの中身は会社独自の制度なので会社で確認すること。
ここでは、主に100人以下の中小企業の導入例が多い選択制DCを見ていきます。大企業などで採用されている、給与とは別に退職金を先に受け取る前払い退職金制度を給与として受け取るか? 確定拠出年金制度に拠出するか? を選択するケースでの選択制DCもありますが、ここでは従業員の給与に一部を選択制DCで積み立てる(拠出する)場合を見ていきます。
選択制DC制度は、会社が従業員のために整備する会社の福利厚生制度です。
従業員、役員など60歳未満の厚生年金加入者なら、この選択制DCに加入する事が可能です。高校を卒業して会社員になった20歳以下の方でも加入できます。
会社としては、選択制DC制度の導入するにあたって、労使合意の上で導入するかどうかを検討していきます。制度の枠組みを会社で用意し、実際は選択制DC制度を活用するかどうか? は従業員の意思に任せるという考え方です。よって、加入してもいいし、加入しなくてもいいわけです。
会社側は、導入前に運営管理機関(金融機関)や、別の担当者に依頼して制度の概要や導入のスケジュールなどの説明会を開催して、従業員に周知することが多いです。
選択制DC制度がある会社で最初に従業員の方がやることは
(1)制度に加入するか? しないか? を期限内までに判断する
(2)加入する場合は、毎月拠出する金額を決定する
(3)運用商品を決定する(配分指定)
やった方がいいかどうかは個人の判断になりますが、将来の老後資金として考えるのならば、強制的な貯蓄機能や税制優遇の観点から、優先して活用したい制度です。注意点として、一度選択制DC制度に加入すれば、原則として制度からの脱退や掛金の停止はできません。加入しなかった方は、毎年加入できる制度なので加入できる時期を確認しておいてください。
また、最近多い質問ですが、この選択制DC制度がある会社に勤務している方で、個人型のイデコに加入できるかどうか? これは、会社の規定によりますので詳細は会社の方で確認してください。
選択制DCに加入するメリットとデメリットとは?
会社に選択制DC制度があって、加入した方がいいのか? しない方がいいのか? メリットとデメリットを見ていきましょう。
【メリット】
・強制的な給与天引きで老後の資産形成ができる
・毎月掛ける掛金は給与ではないので、税金と社会保険料が安くなる
・イデコと違い、毎月のかかる運営管理手数料は会社負担
・研修や説明会などで学習できる環境がある(会社で継続研修がある場合)
【デメリット】
・60歳まで現金化できない
・厚生年金の受給額が減る
・健康保険の傷病手当が減る
・雇用保険の失業手当が減る
・運営管理機関(金融機関)は個人での選択はできない
などがあります。会社としては従業員の福利厚生制度として、また退職金制度として採用している場合が多いので、加入するかどうかは、総合的に判断してください。会社側は強制的に加入させることはできません。
また、選択制DC制度に加入した方が途中で転職や退職をした場合、今までの資産はどうなるか? この質問も非常多いですね。これは、自分の資産として持ち運び(ポータビリティ)が可能です。転職した会社に同じ企業型DC制度があれば移換が可能です。ない場合や自営業、公務員、専業主婦(夫)になる場合には、個人型のイデコに移換してください。
今までと違って給与天引きではなくなりますが、引き続きイデコで資産形成を継続することも可能です。自分の資産として移換は可能ですが、60歳までは現金化できません。ここは十分に理解をしておく必要があります。
選択制DC制度は加入した方がいいの?
選択制DCに加入した方がいいかどうかは? あくまでも60歳以降の老後資金として考える場合は、仕組みと税制優遇が手厚いことを考えれば、効果的に資産形成ができる確率が高いと思います。60歳まで現金化できないという点からも、有利に働くと思います。
毎月の掛金の最低額など会社によって規定で決まっていますが、出来る範囲で会社の制度を活用した方が貯まる習慣が勝手に身に付く効果も期待できます。給与の中からなかなか貯蓄ができない方は、少額でも始められた方が自分のためにもなります。年に1回、掛け金の変更も可能です。
無理のない掛金からはじめてみてください。詳細は勤めている会社の規程などでご確認ください。
執筆者:末次祐治(すえつぐ ゆうじ)
FP事務所 くるみ企画 代表
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