夫と離婚したいけど、ずっと専業主婦だったので不安…知っておきたい養育費やひとり親向け公的扶助のこと
ファイナンシャルフィールド / 2020年7月14日 10時15分
新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、家で過ごす時間が増えています。 しかし、夫婦などのパートナー同士が普段とは異なる状況で長時間顔を合わせ続けることにより、ドメスティックバイオレンスの増加や感染症への意識の違いなどによる「コロナうつ」や「コロナ離婚」の増加が懸念されています。 しかし、いざ離婚に及ぼうとしても、専業主婦の方の場合だと離婚後に生活を維持できるのかがネックになって思いとどまってしまうこともあるかもしれません。 実は、離婚などによって収入が減少した場合でも、シングルマザーなどのひとり親家庭であれば、さまざまな公的扶助や助成金が利用できることをご存じでしょうか? 今回はひとり親家庭が児童扶養手当や養育費に関する取り組みなど離婚後のお金について解説していきたいと思います。
離婚後のお金への取り組みについて
生活を維持するための費用は、日々の生活費のほか、子どもがいる場合の教育費や、ご本人の老後の生活費の捻出などを検討する必要があるため、公的な経済的援助もこうした費用に対する援助を中心に整備されています。
1.児童扶養手当制度とは?
児童扶養手当は離婚などにより、ひとり親世帯となった家庭の父母などの扶養義務者に支給される手当です。
支給タイミングは2ヶ月ごとに年6回行われます。支給月額は子どもの人数と扶養義務者の所得によって変わりますが、全額支給の場合は、子ども1人のときは4万3160円、子どもが2人のときは1万190円の加算、3人目以降は1人につき6110円が加算されます(令和2年4月現在)。
子どもの養育やひとり親家庭の家計の充実には欠かせない制度ですが、再婚などにより養育が再開された場合や、遺族年金などの公的年金の支払いを受けている場合は、手当が一部または全部支給されなくなるので注意が必要です。
また、公的年金などの額が児童扶養手当額より低い場合は、その差額分が児童扶養手当として支給されます(※)。
2.養育費に関する取り組み
離婚後の子どもへの養育費については、養育に関する法的義務に基づき当事者双方が合意のもと、円満に支払いが行われることが理想ですが、その合意にも関わらず養育費の支払いを得られないケースもあります。
調停などによって支払いに応じてくれれば良いのですが、終局的には判決による強制執行が必要になることもあります。
養育費の支払いに関する強制執行手続については、今年4月から施行されて民事執行法の改正により以前よりも利用しやすくなっており、給与債権の差し押さえや裁判費用の貸付なども行えるようになっています。
2016年の統計では、母子家庭は約123万世帯あり、そのうちの約80%は離婚が理由になっています。離婚後の収入源も半数近くがパート・アルバイトといった就業形態で賄われており、父子家庭のケースよりも稼得する収入が少ない傾向があるため、養育費の支払いをできる限り求めていくことが重要です。
3.厚生年金は分割することが可能
国民基礎年金には、厚生年金加入者(第2号被保険者)に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者は保険料負担なしで加入することができる「第3号被保険者」という制度があります。
最低限の年金を負担なく準備できる優れた制度ではありますが、離婚などにより厚生年金加入者と家計が分離してしまうと、配偶者は国民基礎年金のみで老後を迎えることになってしまい、年金額が不足してしまうおそれがあります。
こうした場合に備えて、「3号分割制度」と「合意分割制度」という厚生年金の加入記録を夫婦間で分割し、離婚後も厚生年金の給付額の一部を受け取ることができる制度があります。
第3号被保険者一方からの請求によって、2008年4月1日以降の厚生年金の加入記録を1/2ずつ分割することができます。
双方の合意が不要なため、離婚相手と関わり合うことなく手続きを行うことができるメリットがありますが、制度施行以降の年金記録しか分割されないため、婚姻期間が長い夫婦の場合は分割される額が小さくなるといったデメリットもあります。
夫婦双方の合意により、按分割合を定めることができます。家計への貢献度によって、独自の按分割合を設定できるメリットがありますが、双方の話し合いによる合意が原則となるため、離婚理由によっては合意がまとまらず利用しづらいといったデメリットもあります。
しかし、合意がまとまらない場合は当事者一方の主張により裁判所で按分割合を定めることもできますので、3号分割制度と比較し、有利な分割方法を検討すると良いでしょう。
3号分割であれ、合意分割であれ、厚生年金の分割には請求期限があり、離婚などが成立した日の翌日から原則2年以内となっています。ひとり親ご自身の老後生活を支えるためにも制度を有効に活用することが大切です。
まとめ
ひとり親世帯、特に母子家庭は、稼得する収入が減少しやすい傾向にあります。離婚の際は貧困の回避を重視し、養育費の確保や児童扶養手当の受給、老後資金確保のための年金分割などの各種制度を駆使することや、母子自立支援員への相談などを利用して生活の維持・安定を進めていくことが大切です。
[出典](※)東京都福祉保健局「児童扶養手当」
執筆者:菊原浩司
FPオフィス Conserve&Investment代表
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