就業不能保険って一体なに? どんな人が加入すべき?
ファイナンシャルフィールド / 2021年1月27日 12時10分
近年、働けなくなったときのリスクに備える手段として、就業不能保険という選択肢があります。一家の生計を支えていく人にとっては、必要不可欠に思えることもあるかもしれません。
就業不能保険とはどのような保険なのか、加入するメリットは何か、どのような場合に保険金がおりるのか、どのような人が入っておくべきなのか、などを検証していきます。
就業不能保険とは、どんな保険なのか?
もし生計を支えている人が突然病気やケガで働けなくなった場合に、生活費などをどう賄ったらよいのでしょうか。住宅ローンを支払っている最中であったり、子どもの教育費が多額になる時期であったり、あるいは現時点での貯蓄が少ない場合は、こうした不安が大きくなるでしょう。
そんな不安に備えることができるのが、就業不能保険です。入院や在宅療養などで働くことができない(就業不能)ときに、例えば毎月10万円など一定の給付金を受け取ることで、収入減少の補てんができる保険です。保険金受取期間は、就業不能の期間が終了するまで、あるいは保険期間満了まで、など契約により異なります。
<収入保障保険との違い>
毎月一定の給付金を受け取れるもので、混同しやすいのは収入保障保険です。収入保障保険は、被保険者本人が亡くなったときに、遺族が生活保障として毎月一定額の給付金を受け取るものです。
つまり、保険金を受け取るのは本人ではなく遺族です。これに対して就業不能保険は、本人が働けなくなったときに毎月一定額の給付金を本人が受け取ることができます。保険金を受け取るのが本人(就業不能保険)なのか、本人亡き後の遺族(収入保障保険)なのかという点が大きく異なります。
<医療保険との比較>
医療保険は、一般に病気やケガで入院した際に給付金が受け取れます。手術の際に給付金が受け取れるものもあります。主に治療のための出費に備えるための保険です。
これに対して、就業不能保険は、入院などに加えて、医師の指示などにより自宅で療養する際にも保険金を受け取ることができますので、長期的に収入が減少することに備える保険です。精神疾患に対応しているものもあります。
加入するメリットとは何か? 公的な保障はないのか?
医療保険は、一般に一疾病で保障される期間は30日、60日、120日など、個々の契約によって決まっています。一方、就業不能保険は、一般に60日や180日などの免責期間があり、その期間は就業不能になっても保障されません。
しかし、それ以上の長期にわたり就業不能の状態が続くと給付金を受け取ることができますので、医療保険でカバーしきれない長期にわたる入院や在宅療養による収入減少に備えることができるのが、就業不能保険のメリットです。
では、長期的な収入減少に備える公的な保障はないのでしょうか。実は会社員や公務員の人が加入している健康保険には、傷病(しょうびょう)手当金という制度があります。
傷病手当金は、連続して3日以上(待機期間)仕事を休んだ際に4日目から最長1年6ヶ月まで、平均月収の30分の1(平均日額)の3分の2に相当する額(1日あたりの支給額)が、支給日数分、受け取れるものです。
例えば、平均月収30万円の人が20日間(待機期間3日を含む)会社を休んだ場合は、
- 1日あたりの支給額:30万円÷30日(平均日額1万円)×2/3=6667円(小数点第1位四捨五入)
- 支給額:1日あたり支給額6667円×支給日数17日=11万3339円
となります。
それ以外にも、会社員・公務員の人は、有給休暇なども利用することもできるでしょう。
また、ケガや病気などが原因で一定の障害状態にあると認定されれば、会社員・公務員の人は、障害厚生年金および障害基礎年金を、自営業の人などは障害基礎年金を、受け取ることができます(ただし、年金保険料を滞納せずに納めていることなど一定条件あり)。
どんなときに保険給付金がもらえるのか?
「就業不能」になったときに保険給付金がもらえますが、商品によってその「就業不能」の定義が異なりますので注意が必要です。
以下が各商品の「就業不能」の要件例です。
●病気やケガ、または精神疾患の治療を目的として入院している状態、あるいは病気やケガ、または精神疾患で医師の指示を受けて日本国内の自宅等で在宅療養している状態
●治療を目的とした入院や、医師の指示による在宅療養、国民年金法または精神保健及び精神障害者福祉に関する法律に定める障害等級1級または2級に認定された状態、ただし、在宅療養の精神疾患は対象外
●特定疾病(所定のがん・急性心筋梗塞・脳卒中)により、所定の状態に該当した場合など、商品によりさまざまであることがわかります。
また、就業不能状態になったからといって、すぐに保険金がもらえるわけではなく、60日や180日などの免責期間がありますので、その期間を乗り切るだけの貯蓄や医療保険などは必要になります。
支払いが始まった就業不能保険の給付金は、仕事に復帰すると支給はなくなります。ただし、保険期間満了までは、免責期間を越えて就業不能になるたびに回数無制限(精神疾患は除く)で保険金が支給される商品もあります。
いずれにせよ、保険商品や契約によって細かい点が異なりますので、約款などをよく読んで契約することが大切です。月額保険料は、30歳男性、就業不能給付金月額:10万円、保険期間・保険料払込期間:60歳満了の場合、2200円程度です。
まとめ
どんな保険でも、「公的保障だけでは不足すると考えられる部分」を自分で補っていくことが基本になるでしょう。
したがって、比較的公的保障が少ない自営業の人、長期の入院や在宅療養をした際に貯蓄だけでは賄いきれない人、住宅ローンをかかえている人、教育費などが多額になる時期の人などは、就業不能保険の加入を検討してもよいかもしれません。
一方、会社員や公務員の人は、最長1年6ヶ月の傷病手当金で収入不足分をある程度補うことが可能です。
しかし、上記例のような多額の支出がある、あるいは1年6ヶ月以上の長期療養に備えたいなど、傷病手当金を勘案してもなお保障が不足すると考えるならば、就業不能保険を検討してもよいでしょう。
執筆者:岩永真理
一級ファイナンシャル・プランニング技能士
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