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BOOK 探検家・作家の角幡唯介さん 脱システム志向、たった一人「生」か「死」究極の選択 『地図なき山 日高山脈49日漂泊行』

zakzak by夕刊フジ / 2024年12月21日 10時0分

角幡唯介さん(鴨川一也撮影)(夕刊フジ)

笑顔なし、朴訥(ぼくとつ)、鋭い眼光でガンガンにらみつける。これは挑発、それとも憐憫(れんびん)? アンタらぬくぬくと生きて幸せなのかい、って…。文明の利器を拒絶して未踏の地を行く北極圏やチベットでの冒険・探検は角幡唯介さんにとって「生きる」と同義語だ。今回は地図を持たない日高山脈の登山行。「死」と隣り合わせの生き方を問う。

社会にイラ立ち

――「脱システム」の生き方を志向してきた

「イラ立っていたんでしょうね。どんどん社会がつまんなくなっていったことに…。僕がやってきた登山や極地の冒険・探検でも、かつては『前人未踏』とか『地図のない空白部に行くこと』の価値が無条件に認められていました。それが昨今は(そんな所へ行って遭難したら)他人に迷惑をかける、といった自己責任論がはびこっているでしょう。そんな社会にイラ立つというか、皆と同じようなことをしたり、同じような場所に行って何が面白いのか、って」

――イマドキの若者たちもチャレンジをしない安定志向になっている

「あくまで報道などを通した僕のイメージですけどね。(今の若者は)〝行儀よく〟なり過ぎている気がします。言動をとってみても、やたらと感謝してみたり、もの分かりが良過ぎる、というのかな。もうちょっと破天荒、エネルギッシュに生きてもいいんじゃないかとは感じますね」

――野望もない

「僕らが20代前半のころには将来、どうなりたいのか? 大きくステップアップしたい、といった自己実現の野望を抱くのは当たり前でしたけど今の若い世代はそうじゃないらしい。『将来の夢』について聞かれること自体がイヤなんだという。そうした感覚の違いにはびっくりします」

――角幡さんは、朝日新聞をあっさり辞めて「冒険・探検1本」の世界へ飛び込んだ

「迷いましたし、不安はありましたよ。『地図なし登山』と一緒で、未知の世界へ進もうとしているわけですから…。ただ(新聞社に居続けることは)最善の生き方ではないと分かっていたし、ここで辞めないと後悔すると思いました。(やると決めたら)たとえ失敗しても後悔はしない」

――ホームレスになる覚悟もあったとか

「(新聞社を辞める前の)2年間で800万円を貯めました。つつましく生きれば3年くらいは、アルバイトもせずに何とか生きていけるかな、その間に探検をして、それを(文章に)表現してモノになればいい、と考えたわけです。つまり、3年間の猶予期間。それでダメならばホームレスになればいいや、って…」

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