勝負師たちの系譜 大島綾華女流二段、福間香奈・西山朋佳の〝2強の壁〟越えられるか マイナビ女子オープン、久々に若手の挑戦者
zakzak by夕刊フジ / 2024年4月27日 10時0分
女流棋界は長らく、結婚で姓が変わった福間(旧姓里見)香奈女流五冠と、西山朋佳女流三冠の2強時代が続いている。
西山はタイトルは3つだが、昨秋、福間から最高賞金棋戦の「白玲」を奪ったから、獲得賞金額では、ほぼ互角(西山の方が少し上か)と見てよい。
タイトル戦はこの2人の対決になることが多く、他の女流棋士が挑戦しても、ほとんど撥(は)ね返される。たとえタイトルを奪取しても、1期で取り返されることがほとんどだ。
ただし2人も、福間が30代前半、西山も20代後半となり、多くの後輩棋士ができてきた。
男性棋界では、藤井聡太竜王・名人だけでなく、多くの若手が先輩棋士を打ち破り、挑戦権を得る棋士も出ている。
しかし女流棋界では、あの2人から何とかタイトルを奪おうという気概のある棋士が、少ないのだ。
『2人は奨励会で三段リーグを経験した、別格の女流』という意識があるかと思うが、それでは何も発展はない。
しかし今回の西山女王に挑戦する「マイナビ女子オープン」では、久々に若手の大島綾華女流二段(挑戦で二段に)が挑戦者として名乗りを上げた。
ベスト8で里見(当時)、準決勝で加藤桃子女流四段という、現と元のタイトル保持者を破っての挑戦だから、価値がある。
大島は広島市出身で、森信雄七段門下だが、私は個人的に大島を注目していた。
というのも彼女は、誕生日が私と同じ1月31日生まれで、ちょうど半世紀後に生まれたからである。
神奈川県秦野市『元湯陣屋』で行われた第1局は、大島が初のタイトル戦で硬くなったか、西山の振り飛車が気持ちよく捌(さば)け、良い所なく大島は敗れた。
ところが甲府市の『常磐ホテル』での第2局で、大島は角交換振り飛車に対して素晴らしい指し回しを見せ、必勝形を築いた。
しかしそこから西山にうまく粘られ、痛恨の逆転負け。この時は実力差というより、やはりタイトル戦の重圧を感じたのではないかと思ったものだった。
一つの壁を越えた者は、何度でも壁は越えられるが、初めての時は、相手と同時にタイトルの重みとも戦うことになる。
この大島や、挑戦者決定戦に出た北村桂香女流二段などの若手が、2トップを抜けるのか、次の世代まで待たねば無理なのかが、問われる時期に来ている。
■青野照市(あおの・てるいち) 1953年1月31日、静岡県焼津市生まれ。68年に4級で故廣津久雄九段門下に入る。74年に四段に昇段し、プロ棋士となる。94年に九段。A級通算11期。これまでに勝率第一位賞や連勝賞、升田幸三賞を獲得。将棋の国際普及にも努め、2011年に外務大臣表彰を受けた。13年から17年2月まで、日本将棋連盟専務理事を務めた。
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