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列島エイリアンズ 訪日ブーム斜陽編(1)消費額2兆円の大台も「インバウンド復活」と言いきれぬ事情 上昇分は為替変動、財布のひもは緩んでおらず

zakzak by夕刊フジ / 2024年10月2日 6時30分

訪日外国人らで賑わう大阪・新世界だが…=大阪市浪速区(夕刊フジ)

インバウンド需要が絶好調だという。

日本政府観光局(JNTO)が発表した今年8月の訪日客数は293万3000人で、8月としては過去最高となった。

国交省によるインバウンド消費動向調査(旧・訪日外国人消費動向調査)では、2024年4―6月期の訪日外国人消費額は2兆1370億円と四半期としては初めて2兆円の大台に乗った。訪日外国人1人当たりの旅行支出は23万8722円で、新型コロナのパンデミック直前である19年同期の15万4967円と比べても大幅に増加している…ように思える。

しかし、実際は、この増加分のほとんどは、為替変動によるものなのだ。

「円安により訪日外国人の財布のひもが緩んだから」という何度も繰り返された見解をなぞるつもりはない。逆に円安でも外国人観光客の消費意欲は、実はほとんど変わっていないというのが筆者の見方だ。

1人当たりの旅行支出を米ドル建てで、みてみると一目瞭然だ。24年4―6月期の円相場は平均して約156円で、訪日外国人1人当たりの米ドル換算の旅行支出は約1530ドル。19年同期の円相場の平均は約110円で、同約1408ドルということになる。その増加率は10%に満たない。

この旅行支出には訪日のための航空券代金も含まれており、パンデミック以降の燃油サーチャージ高騰の寄与度も高いと考えられる。

つまり、訪日外国人にとってはバーゲンセール状態であるにも関わらず、彼らのドル換算での消費額は、ほぼ変わっていない。

とはいえ、「安い日本」が外国人にとっての訪日の動機となっていることは事実であり、訪日客数が増えれば、関連産業は恩恵を受けるだろう。

ただ、これほどの円安にもかかわらず、訪日外国人の財布のひもを実質的に緩めることができていない事実は、日本経済の頼みの綱たる訪日ブームにとって、黄色信号のようにもみえる。 =つづく

外国人材の受け入れ拡大や訪日旅行ブームにより、急速に多国籍化が進むニッポン。外国人犯罪が増加する一方で、排外的な言説の横行など種々の摩擦も起きている。「多文化共生」は聞くも白々しく、欧米の移民国家のように「人種のるつぼ」の形成に向かう様子もない。むしろ日本の中に出自ごとの「異邦」が無数に形成され、それぞれがその境界の中で生きているイメージだ。しかしそれは日本人も同じこと。境界の向こうでは、われわれもまた異邦人(エイリアンズ)なのだ。

■奥窪優木(おくくぼ・ゆうき) 1980年、愛媛県出身。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国で現地取材。2008年に帰国後、「国家の政策や国際的事象が、末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに取材活動。16年「週刊SPA!」で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論され、健康保険法等の改正につながった。著書に「ルポ 新型コロナ詐欺」(扶桑社)など。

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