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ドラマ『僕だけがいない街』監督が語るNetfliXのスゴさ「高クリエイティブな提案をしてくれる“黒船”は日本作品を成長させる」

ガジェット通信 / 2017年12月22日 16時0分

累計429万部を超える大ヒットコミックをドラマ化した、Netflixオリジナルドラマ『僕だけがいない街』。12月15日より、全世界190カ国以上で配信中です。

2016年のアニメ化、映画化に続く3度目の映像化となる「僕だけがいない街」。原作終了後は本作が初。主演に、人気俳優の古川雄輝をむかえ、数々のMV、映像作品を手がけてきた下山天監督がメガホンをとっています。今回は下山監督に作品で工夫した点や、原作の持つ魅力など色々とお話を伺ってきました。

『僕だけがいない街』ストーリー

母を殺された悟に降りかかる、時間が巻き戻る不思議な現象”リバイバル”。悟は18年前へ戻り、同級生が犠牲となった連続誘拐殺人事件を阻止すべく奔走する。

――まず、原作コミックを読んだ時の感想を教えてください。

下山監督:三部先生の作られた世界観や緻密な伏線の張り巡らせ方が素晴らしいと思いました。SF作品ではよく、時間を遡ることそのものが主になってしまうんですが、それ自体が目的じゃなくて手段の一つであって【リバイバル】した後から更にまたその話がゼロから始まり、その向こう側に壮大なミステリーの空間が控えている点に、まずびっくりしました。

――アニメ版や実写映画版をご覧になっていかがだったでしょうか?

下山監督:どれも非常に力作だなとは思いました。ただ、原作完結前の映像化だったこともあり、ミステリーに関しては後半戦の物足りなさがかなりあったのではというのが率直な感想でした。それを今回はしっかり、映画・アニメのクリエイターが当時出来なかった分も引き継いで、なんとか後半戦のボリュームをきっちり描かなければならないなと思いました。

――原作に忠実に、ということを心がけていたのですね。今回、監督に起用されたいきさつや、実際に起用されたお気持ちを伺ってもよろしいでしょうか?

下山監督:昨今のTVドラマの状況に対して、個人的に何年か取り組めずに居たというか、「もうTVドラマを撮る機会は来ないんじゃないか」と思っていた時に、こういう形でNetflixさんという新しいプラットホームでドラマに取り組めたのは自分にとって非常にプラスでした。そして、映画的な思考でドラマに取り組むことが、Netflixユーザーに支持してもらえる、という点も非常にエポックメイキングでした。

――通常のTVドラマとは全く異なる作り方だったということでしょうか?

下山監督:本作は全12話の連続ドラマなんですが、Netflixさんの要望としては、まず「これは長い1本の映画である」と。なので、連続ドラマとして取り組むのではなくて、1本の映画として演出をして欲しいと。1本の映画というのは、12話で割るとなかなか一つ一つで完結していないわけです。昨今の日本のTVドラマは1話1話の視聴率の結果を出さなきゃいけないので、謎の答えが最終回で分かる、という伏線の張り方が出来ない状況があります。

ところが今回は、最後の最後まで連続視聴してくれた方には、各話で観たいろんなエピソードが最後に全部一気に解決する。そういう意味では1話1話の完結ではなくて、1話1話が全部最後の着地に向けた伏線であるという。こういう作り方は、ちょっと今の日本の環境ではなかなか作らせて頂けないですね。今回は、まず撮影前に全話の脚本を完成させました。これもたぶん昨今の日本では映画以外になかなかありえないことかなと。これはどういうことかというと、放送してから様々なことがあっても途中から直せない。直せないイコール初期のプラン通りのものが最終話まで作れる。監督としては、イメージ通りに作り上げることにとにかく集中できる、という意味でも今まで経験したことのないドラマでした。

――監督はサスペンス作品や、MVなど沢山作品を撮られていますが、撮りたかったジャンルや、ご自分の中でこういう作品を撮りたいなどはあるのでしょうか?

下山監督:自分の中では常に切ない作品を作りたいと思っていて、あらゆるジャンルで、自分の中で一番大切にしている部分です。そしてもう一つの部分は、作品は常にクールじゃなきゃいけない、映像は常にクールじゃなきゃいけないと思っていて、『僕だけがいない街』も、僕自身が雪国で育っていますので、北海道の寒さだったり、苫小牧の子供たちの寒さだったり、台詞のない情景で逡巡を表現するっていうことに関しては、今まで積み上げてきた中で本当にやりたかったテーマをかなり込めた作品です。

――改めて『僕だけがいない街』という作品の魅力はどんなところにあると思いますか?

下山監督:僕の個人の感想でもあるんですけど、常に先行き不安がある。ちょっとした安心の後に、必ず谷あり山ありのうねりがあって、そういったうねりがその場その場のお話の積み重ねかと思いきや、縦軸に一本につながって、最後読み終わった後に、得るものの大きさというか、自分では成しえていない良い映画の典型的なストーリーテリングだなと。色んな細かいところを積み重ねていって、脱線したと思いきや、全てはラストシーンのためだったみたいな。そういう部分や、三部先生の作り方も含めて、非常に映画的だからここまで愛されているんじゃないかなと。

結果的に三度の映像化になっているという意味では、監督的には今回が打ち止めであってほしいんですけど、これがまた何年か経ってなのかまた遠い未来に、誰かがまたリメイクするのも必ずあり得るのかなというくらいに、漫画のコマを見ているようでどこかの場所にいるとか、時間が飛んでいるとか、見ているお客さんが場所と時間の旅ができる作品だから、ここまで愛されているのかなと思いました。

――監督は色々な映像作品を撮られているので、映像的なスペックについてもお話を伺います。今回、Netflix作品ということで映像のトーンなどが従来の作品と違ったりする点についてはどうお考えですか?

下山監督:まず、Netflixさんの要求としては、映像的には暗くていいということや、映像に対しての要求やこだわりがものすごかったです。日本でそこまで言及する映画会社・プロデューサーにはお会い出来ませんが、Netflixさんからしますと、演出は監督責任ですが、映像のトーンにかなりグレードの高い要求がありました。今回は4Kのカメラで撮って、サウンドは5.1chで作られていますが、いま家庭で4Kの5.1chの環境で鑑賞できるのは、ホームシアターを持っている人とか、ごく一部なんです。なぜそこまでのスペックで撮るかというと、Netflixさんはが今後10年間、この『僕だけがいない街』を常に最高のクオリティで配信し続けるためなんです。今すぐこの作品を観ずに、例えば5年後10年後に観るかもしれない。そうなった時に、常に最新の状態で作品のクオリティを保つということを大切にしています。「監督の作品は、向こう10年間、常に最高クオリティで配信し続けます」とNetflixさんが言ってくださったことは、クリエイターとして本当に有難いことです。

――今、現在オーバースペックであったとしても、長く愛される作品になってほしいということですね。その為に作品作りに時間をかけても良いと。

下山監督:そうですね。一つ一つ腑に落ちる仕様なんです。技術仕様もそうですし、脚本もそうですし。「これは1本の映画です」という意味では、彼らは編集段階でも12本つながるまで観てくれなかったです。完全に出来上がってから、最後までつないだものを観る。「監督の意図を全部理解してから観て、我々はレスポンスします」と。

私だけでなく、関わったスタッフ全員が感じていると思うんですが、こういうことがやれば出来るんだということですね。やっぱり日本人って改革をしづらいというか……歴史的にもそうですけど、Netflixは“黒船”と呼ばれていますけど、これだけクリエイティブな提案をしてくれる黒船であれば全く怖くはなく、こういった作品が増えることによって、日本の作品が進化するきっかけになるのではないかと。黒船に決して征服されることはなく、双方の良いところを活かし、日本の現場はまた新しい次元に必ず行くと思います。

もう一つは、彼ら自体が世界190カ国以上に見せるために、ジャパンオリジナルを要求しているというのが、非常に興味深いことだと思います。ハリウッド志向とか、無国籍なものを作って国際商品を売るということよりは、世界の人に見てもらうために、むしろ強靭なジャパンオリジナルを作る。これは逆に日本人の方が意識していなかったのではないかという。これを海外からの視点で要求されるというのは、我々日本のメディアのクリエイターにとっては、すごくこれから素敵なことなんじゃないかと思います。

――今日は大変貴重なお話をどうもありがとうございました!

Netflixオリジナル作品『僕だけがいない街』

https://www.netflix.com/jp/title/80173711

―― 会いたい人に会いに行こう、見たいものを見に行こう『ガジェット通信(GetNews)』

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