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「東京五輪への推薦状」第19回:通なら分かる、“もう一人の凄い奴”。市船DF原輝綺はちょっと上の世界へ

ゲキサカ / 2016年7月15日 18時55分

 本人の葛藤とは裏腹ながら、ポジションを下げながら原の評価は上がっていた。守備のセンスの良さ、戦術理解能力の高さという個性が見えてきたからだ。何より取り組む姿勢の良さが評価されたのだろう。1年生ながらAチームに上がったこともある。もっともこれは、「2週間くらいしかいられなくて、すぐに落とされました」と本人が苦笑いで振り返るエピソードなのだが。

 今季は杉岡と組んで4バックの中央を担うことが多いが、3バックになっても柔軟に対応し、試合中のポジション変更があっても何ら違和感がない。「CBはもちろん、右も左もボランチもできる」(朝岡監督)守備のオールラウンダーとしての評価を確立させた。Jリーグの2クラブから正式な獲得オファーを受けており、後は本人の決断待ちという状況だ。進学は考えなかったのかと聞くと、こんな答えが返ってきた。

「最初は大学も考えたんですけれど、お金も掛かりますから。弟もサッカーをやっていて、地方に行っている。僕は市船まで3年間通わせてもらっただけで本当に十分。プロに行くと決めました」

 Jクラブの練習参加で手ごたえを感じての結論なのかと思ったが、それはあっさり否定された。「(高校サッカーとは)もう基礎のトラップやパスの次元が違っていた。本当に自分はまだまだなんだと痛感させられただけです」と笑う。年代別代表は狙わないのかというこちらの問いかけにも「そりゃ入りたいですよ」と言いつつ、こんな言葉を返してきた。

「自分は“少し上の目標”を常に持ってやってきました。市船でAチームに2度目に上がったときは『絶対に残ってやる』と思ってやっていて、その後は『スタメン獲ってやる』と思ってやってきた。高望みはせず、いまの自分にやれることに全力を注ぐのが自分のやり方。逆に言えば、与えられた場所で全力を尽くしていれば見えてくるのかなとも思う」

 地に足の着いた物言いだが、別に大人しいタイプではない。「あのプロのプレースピードの中でやれるイメージをもって基礎を鍛え直したい」と語る声にはギラギラした熱いものが確かにこもっていて、“ちょっと上の目標”をつかみ取っていきそうな空気感を静かに生み出していた。

執筆者紹介:川端暁彦
 サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』元編集長。2004年の『エル・ゴラッソ』創刊以前から育成年代を中心とした取材活動を行ってきた。現在はフリーランスの編集者兼ライターとして活動し、各種媒体に寄稿。著書『Jの新人』(東邦出版)。▼関連リンク東京五輪への推薦状 by 川端暁彦一覧へ

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