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今秋、FIFAマスターに入学する元なでしこ大滝麻未の“第2の挑戦”

ゲキサカ / 2016年8月3日 21時20分

「目標は海外で、サッカーで生活するということでした。その目標がリヨンに入ったことで一気に叶ってしまったから」というのがその理由だ。

 リヨンは欧州屈指の強豪であるだけでなく、欧州の女子クラブでも数少ない完全なプロチーム。サッカーで生活するという夢が、大学卒業直前に、しかも最高峰の環境で実現した。理想的なスタートで満たされてしまったものは大きかった。その一方で、リヨンで先発メンバーに定着し、活躍する難しさも痛感した。

「選手としては、極め切れなかった」。そんな思いも残ってはいる。それでも、すっきり引退できたのにはもう一つ理由がある。

「学生時代から、なでしこは目標ではなかったんです。そこまでの選手じゃなかったから。なでしこが目標だったら、こんな風には引退してないかもしれないですね」

 なでしこ、つまりフル代表入りしない限りは安定した環境を得られないし、選手として多くの人に知ってもらうことも難しいのが女子選手の現状。だからこそ、なでしこジャパン入りとそこでの活躍を目標にする選手は多い。だが、大滝の場合、初めて代表入りしたのがリヨン入団のあと。目標にしてきたものではなく、あとから付いてきたものだった。

 選手を“卒業”し、周囲の勧めがいくつか重なったことで興味を持ち、「FIFAマスター」への挑戦を決めた。国際的な機関で仕事をしたいという希望を持っていた彼女にとって、FIFAや国際オリンピック委員会(IOC)に卒業生を輩出しているこの大学院はとても魅力的に映った。学生時代から英語の習得には力を入れていたし、大学時代にはカナダに短期留学もしている。リヨン、ギャンガンでプレーしている間にフランス語も身に付けた。もともと勉強することが好きで、いつでも見識を広げたいと思っている好奇心旺盛な素養も、再び学びの場に身を置くという選択に直結した。

 子供のころからサッカーに打ち込む一方で、他の選択肢を捨てなかったことが今、可能性を広げる一助になっている。サッカーの指導者など、現場復帰の興味は今のところない。「トップレベルの指導じゃなくて、子供にちょっと教えるとか。そういう関わり方が良いかな」という程度だそうだ。

 両親には「どうしてそこまで頑張るの?」と言われるのだという。「帰って来れば良いのに」とも言われるそうだ。それでも、27歳になったばかりの彼女は新たなチャンスを前にして、まるで水を得た魚のように生き生きと輝いている。過去には宮本恒靖氏が修了したことでも知られるFIFAマスター。この秋からは大滝とともに韓国のレジェンドも挑戦する。「パク・チソンと同級生になるんですよ!」とうれしそうに話す姿は、キラキラと喜びに満ちていた。

 女子サッカー選手のセカンドキャリアに新たな可能性が広がったと言い切るのは難しい。今回のFIFAマスター挑戦は彼女自身のポテンシャルと志向によるものが大きいからだ。それでも、女子選手が引退後、たとえなでしこジャパンで大活躍していなくても、サッカーやスポーツと関わる仕事を続けるにはさまざまな方向からのアプローチがある。そんな可能性を見せてくれる挑戦だと思う。

(取材・文 了戒美子 / 写真 佐野美樹)

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