[SEVENDAYS FOOTBALLDAY]:“第2GK”の矜持(成立学園・伊藤快)
ゲキサカ / 2016年10月20日 19時5分
「『いつ出ても良いように準備はしろ』と山郷さんからも言われていて、ずっとその準備はしてきましたし、自分も毎日毎日コツコツやってきたので自信はありました」という伊藤。
「やっぱりいつも出ていない分、『コミュニケーションを取らなきゃな』とは思って、声をいつも以上に掛けるようにはしていました」と積極的に声を出すことで冷静にゲームへ入れたものの、前半21分に先制点を献上してしまう。それでも、後半5分には鈴木龍之介が直接FKを叩き込んで同点に。「ノスケ(鈴木)が決めてくれた時に感極まって泣きそうになりました」と伊藤。さらに、後半12分には竹本大輝のゴールでチームは逆転に成功する。
そして、いくつかの好プレーを披露していた“第2GK”に、「アレは今日イチでしたね」と山郷も納得の、この日最高のビッグプレーが飛び出したのは後半アディショナルタイム。少しでも時計の針を進めたい土壇場で、伊藤が渾身の力を込めて蹴り出したキックは、右サイドの一番深い位置の、なおかつラインを割りそうで割らない絶妙のポイントに落ち、チームメートのキープに繋がる。その完璧な一連にはスタンドからもどよめきの声が。伊藤にそのシーンを尋ねると「自分はキックをずっとこの3年間意識してやってきて、キックだったら誰にも負けないという自信がありました」と言い切りながら、「もう時間がないのでサイドに蹴るというのは自分の頭の中にあったんですけど、本当にあそこに行くとは思わなかったです」と満面の笑み。山郷も「アレは彼の得意なキックですけど、いつもはあんなキックしないですよ(笑) キック力は良いんですけど、コントロールがないんです。でも、ゲームの流れとか、『あそこに蹴る』という意識が集中力の結果として出たのかなと思います」とやはり笑顔。その数分後。伊藤は勝利を告げるホイッスルをピッチの上で聞く。「山郷コーチが来て、GKのみんなに色々なことを伝えてやってきたことが、今日のこの厳しい試合でどれだけできるか」(宮内監督)という大事な一戦で「私が思っている以上のプレーをしてくれたかなというのはあります」と山郷も認めた“第2GK”が勝利に貢献する。正GKの離脱というアクシデントに見舞われたことで、逆に成立学園のGKグループ全体で積み上げてきたものの成果がこの日、1つの大きな形として証明された。
実は園田と同じタイミングで“第3GK”も負傷離脱を強いられており、実践学園戦のベンチには“第4GK”に当たる3年生の関根皓基が控えていた。まさにGKグループ全体で乗り切ったこの試合を終えた意味を、山郷はこう捉える。「今日はメンバーに入るような選手が2人もケガをして、4番手だった子が2番手に来るとか、そういう緊張感も彼らにとっては凄く刺激的だと思うし、『やっぱり準備しておかないといつチャンスが来るかわからないぞ』というものは、今日絶対味わったと思うんですよ。そういうことも彼らにとって1つのプラスなので、色々な意味で快というよりも他のキーパー陣に意識付けができたのは確かです。ただ、だからこそ明後日からの練習の姿勢とか、どういう取り組みができるのかというのがたぶん彼らにとって大事というか、それで私がまたアプローチして彼らにどうやらせるかというのが積み上げだと思うんですよね。だから、今日の快のプレーを1つの成果として自分が満足するということはまったくないです」。
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