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[SEVENDAYS FOOTBALLDAY]:苦しさのなかに咲く花(関東一・小野貴裕監督)

ゲキサカ / 2016年11月22日 19時0分

 13年は総体予選、選手権予選と共に初戦敗退。その翌年は新人戦の地区予選敗退を筆頭に、総体予選も選手権予選もベスト8で姿を消した。この頃の小野は冴えない表情をしていることが多くなる。「『本当にこのまま俺はダメなのかな』って何度も思いました」と自ら振り返るように、当時は試合後も反省ばかりが口を衝いていたように記憶している。どちらかと言えば優し過ぎる性格の彼は、『結果が出ない』というベクトルをすべて自分に向けている様子が窺えた。いわゆる“負のサイクル”にはまり掛けている雰囲気はこの時期のチームにも、そして小野にもあったように思う。

 そんな状況に変化の兆しが見られたのは15年。4年ぶりに関東大会予選で優勝を成し遂げた関東一は、総体予選も勝ち抜き、同校にとっては8年ぶりの、小野にとっては監督就任以来初となる全国切符を獲得する。指揮官にも変化は確実に訪れていた。「今までは勝ち方だけを自分の中で追及することが多かったので、その勝ち方の中にも一番やりたい勝ち方があるとしたら、もう1つくらいの勝ち方まで持っておかないといけないなと思っています」。チームも例年よりは守備力に特徴を持つ、どちらかと言えば縦に速いスタイルを体現するチームだったことも、関東一の歴史を振り返ると興味深い。乗り込んだ全国の舞台では大躍進。羽黒高、清水桜が丘高、大津高、広島皆実高を相次いで撃破し、堂々ベスト4進出。市立船橋高には力負けしたものの、一気に日本中へその名を知らしめることとなった。

 ある光景が印象深い。準々決勝で広島皆実を下し、全国4強を手繰り寄せた試合後。記者に囲まれ、ゲームを振り返っていた小野が突然声を詰まらせる。「今まで苦しんできた先輩とか… 辛い想いをさせてきた時期もあったので… そういうのをここで出せたというのが凄く良かったなと思います」。過去にも全国の舞台で戦わせてあげたい、そして戦えるだけの力を持った子供たちを数多く指導してきた。それでも届かなかったステージにようやく立ち、一定以上の結果を残した時、脳裏へ真っ先に浮かんだのは、そのステージに立つことの叶わなかった子供たちの顔。普段は比較的淡々とゲームのことを口にしていく彼の昂った感情に、やり切れない想いを抱えていた時期の苦労が偲ばれた。ただ、極力周囲の雑音をシャットアウトすべく取材量も調整しながら、慎重に慎重に臨んだ選手権予選も、主力の負傷欠場を強いられた準々決勝で堀越高に苦杯を嘗める。「このチームでも選手権は獲れないのか…」という想いと同時に、「勝つために必要なことがハッキリわかった」という小野。天国と地獄を味わったシーズンを経て、いよいよ勝負の年となる2016年がやってくる。

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