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[SEVENDAYS FOOTBALLDAY]:苦しさのなかに咲く花(関東一・小野貴裕監督)

ゲキサカ / 2016年11月22日 19時0分

 リーグ戦は黒星スタート。関東大会予選も準決勝で敗退したが、「あまり結果で一喜一憂はしないというか、負けたから全部悪い訳ではないし、勝ったから絶対にどこが強いというのもないと思う」と小野は意に介さない。前年の経験から“勝つため”に必要な最後の条件を自分の中で消化したからだ。「今まで色々なことを潰していって、最後に残ったのがケガに対しての対応だったんです。本当に自分たちが準備して、色々なことをやっても、『試合が始まるまでに選手がケガして出られなくなることってあるんだな』って。『そうか。じゃあこれも潰さないと試合には勝てないな』って。だから、去年の堀越のゲームが終わった後は『絶対に選手層が厚くないと、その瞬間は良くても勝てないな』と思ったんです」という小野は、シーズン開幕からレギュラーを固定せず、様々な選手を様々なポジションで起用していく。一部の主力を除いては試合ごとに顔触れが入れ替わって行く状況の中で、「誰が出ても良いような状態を作っていく」という目標は着実に進行していった。夏の全国では初戦で再会した市立船橋に衝撃的な完敗を喫したが、「総合力で言えば間違いなく今の日本で一番強いチーム」との対峙で、改めてチームの方向性は明確になった。例年以上に行った走り込みも含め、コンディション的にかなり追い込んだ夏が過ぎる。選手層も厚くなった。手応えはある。あとはやるか、やらないか。それだけだ。

 選手権予選の幕が開く。準々決勝では早稲田実高相手に、後半の終盤まで2点をリードされる絶体絶命のピンチに陥りながら、ラスト5分で追い付き、延長戦で逆転勝利をもぎ取る。準決勝でも1年前に行く手を阻まれた堀越に3-1で雪辱を晴らし、4年ぶりのファイナル進出を決める。その堀越戦では意外なシーンを目撃した。ピッチとスタンドの距離が非常に近い西が丘という舞台にもかかわらず、小野は前半終了のホイッスルが鳴る前に、既にベンチを立ってロッカールームに向かっていく。もちろん多くの観衆が見ている前だ。思い起こせば全国出場の懸かった今年の総体予選準決勝でも、前半が終わった瞬間から微動だにせず、ベンチに腰掛けながらハーフタイムの10分間、ずっとピッチを見つめ続けている小野の姿があった。テクニカルエリアで怒声を上げる姿も格段に増えている。その性格ゆえに周囲からの目がどうしても気になっているように見えた、ナイーブな青年監督の面影はもはや残っていない。過去の小野からは考えられないような行動には、目の前の勝利という目標だけに集中できている“勝負師”に近い雰囲気があった。3度目の正直へ。悲願達成まではあと1勝。

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