[SEVENDAYS FOOTBALLDAY]:「ピッチの上で、ピッチの外で、スタンドで」(駒澤大高)
ゲキサカ / 2017年1月8日 21時45分
東京のユースサッカーの魅力、注目ポイントや国内外サッカーのトピックなどを紹介するコラム、「SEVENDAYS FOOTBALLDAY」
フクアリのスタンドを赤く染めた大応援団に深い静寂が訪れる。「その瞬間は単純に悔しいという気持ちよりも、本当に申し訳ないという気持ちが強かったです」とキャプテンの高橋勇夢はタイムアップの時を振り返る。ピッチの上で、ピッチの外で、そしてスタンドで。自らの持ち場で戦っていた95人の3年生はそれぞれ、最上級生として時には喜び、時には苦しんできたこの1年間を思い出していた。
最後は優勝に輝いた東福岡高に惜敗したものの、全国8強まで駆け上がったのは昨年度の高校選手権。ほとんどの主力メンバーが残り、大きな期待を背負ってスタートした今シーズンの駒澤大高。2月のTリーグ開幕戦は3-0と快勝を収めたが、大野祥司監督の表情は晴れない。「選手権が終わった後は見ていてもモチベーションが高かったですけど、何日も経つとまた元に戻っていて(笑) それの繰り返しだと思うんですけどね」。間違いなく例年以上のベースは築かれていたが、個々の能力の高さゆえにチームとしてまとまるという、例年の“駒澤らしさ”が見えてこないことに指揮官は不安を覚えていた。
3月。関東一高にリーグ戦で1-3と逆転負けを許し、新チームの公式戦初黒星を喫した試合後、大野監督は「新3年は凄く良い子たちなんですよね。1人1人はそんなに怒られることはないんですけど、チームのためにみんなで声を出してまとまろうとかがなくて、怒られないように怒られないようにという感じの子たちなので、今年は言うとシュンとなっちゃうんですよ」と首をひねる。さらに指揮官を悩ませたのが相次ぐケガ人の離脱だ。試合を見に行くたび、“負傷者リスト”に新たな名前が加わっていく。松葉杖を突きながら、寂しそうに会場を後にしていく選手の姿を見送ったのも一度や二度ではなかった。代わりに出場することになった3年生たちの活躍で関東大会予選を制し、関東大会でも優勝を果たしたが、その勢いも続かない。全国切符を懸けた総体予選の準決勝では関東一に0-1で敗戦。相手のエースに目の前で決勝点を叩き込まれた佐藤瑶大は、試合後の整列時も涙が止まらなかった。直後のリーグ戦でも黒星が続き、シーズン初の公式戦3連敗。全国制覇を掲げたチームの士気はどん底まで落ちてしまう。
そんな状況に危機感を感じた大野監督は「中心を作らなくては」という想いから、例年であれば選手権予選の前に言い渡していたキャプテンを、7月末に指名する決意を固める。夏合宿での部員全員による投票を経て、高橋が268人を束ねる大役に選ばれた。「『組織はリーダー以上にならない』とよく亀田(雄人)先生に言われるんですけど、その言葉が凄く自分の中で響いているので、それを常に意識してやるようにしています」と覚悟を決めたキャプテンを頂き、新たな気持ちで日々のトレーニングに向かっていたチームには、それでもなかなかまとまる雰囲気が出てこなかったが、2度の自主的な選手ミーティングをきっかけに、ようやくプレー面でもメンタル面でも向上の色が見えてくる。8月末のリーグ戦では4-1で快勝を収め、約2か月ぶりの公式戦勝利を飾ると、直後にやはりリーグ戦で対峙した関東一を無失点に抑えて0-0のドロー。小さくない起伏こそあったものの、夏休みの約1か月半は駒澤大高にとって1つのターニングポイントとなった。
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