『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』:32歳の“Jリーガー5年生”(長崎・前田悠佑)
ゲキサカ / 2017年10月10日 15時5分
サッカー面では明確な結果が付いてくる。入社2年目。チームは地域決勝を勝ち抜き、JFL復帰を手繰り寄せる。2シーズンの九州リーグで重ねたゴール数は23。「昔はそういうプレーヤーだったんです。自由にやらせてもらっていたので」と本人は笑うが、その数字がチームにおける存在の大きさを何よりも物語っている。
そこから3シーズンはきっちりJFLに残留。2009年の天皇杯2回戦では、前田が決勝PKを沈め、東京ヴェルディ相手に白星を手にした。「『もうこのまま安定しながらサッカーをやるのもいいのかな』という部分もありながら、『でも、やっぱりサッカーだけをやりたいな』という部分の葛藤がありつつ」、気付けばホンダロックでのプレーも5年が経っていた2011年シーズンのオフ。同じJFLを戦っていたV・ファーレン長崎から正式なオファーが届く。
実は長崎からのオファーは初めてではなかった。前述した入社2年目の地域決勝。ホンダロックと共に昇格を決めた長崎の強化部から、その場で獲得の打診を受ける。結果的に1度目の話は流れたが、2度目のオファーは「本当に贅沢な話なんですけど、ホンダロックでは『やることはやらせてもらったな』という“やり切った感”があって、『ここしかないな』というタイミング」と重なった。妻の「何とかやっていけるんじゃないの?」という力強い言葉も背中を押す。「本当にサッカーに情熱がないと、たぶん耐えられない環境でしたけど、そこがあったから今があるんですよね」というホンダロックでの5年間を経て、前田はプロサッカー選手としてのキャリアを踏み出す決断を下した。
プロ1年目はなかなか出場機会を得るまでに至らなかったものの、チームは見事にJFL優勝を果たし、悲願のJリーグ加盟を手中に収める。28歳で手にした“Jリーガー”という職業。迎えた2013年シーズンの開幕戦。後半41分から途中出場を果たし、早々にJリーグデビューも果たす。
高木琢也監督との出会いも語り落とせない。監督自ら「相当走らせたからね」と笑った就任初年度。前田も「『何だ、コレは?』と(笑) マジでヤバかったです」と苦笑しながら、当時を思い出す。ただ、「今までウチに来たヤツらは数々いるんですけど、走った量では絶対負けないですね。アレがあるから、32歳になっても『まだまだやれるかな』というベースを作らせてもらったかなと思います」と続けた言葉から、指揮官との信頼関係が垣間見える。
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