伝説のPKストッパー…驚異のPK阻止率の“秘密”に迫る:前編
ゲキサカ / 2017年10月13日 22時14分
実際、これまでアウベスは世界最高のキッカーによるPKを止めてきた。その相手は、クリスティアーノ・ロナウド(2回)、リオネル・メッシ、ジエゴ・コスタ、イバン・ラキティッチ、マリオ・マンジュキッチ……挙げていけばキリがない。
双方の選手たちはペナルティーエリアの後ろに下がり、キッカーとキーパーだけがペナルティーエリア内に残った。それからキッカーがペナルティースポットにボールを置くまでの、わずかな時間が重要なのだ。この間、キーパーがストライカーに話しかけてはいけないというルールはない。
「グリエーズマンは前にもPKを失敗しているんだ」とアウベスは語った。「あのとき、『今度も失敗したらひどい目にあうだろうね。そのプレッシャーは理解できるよ』と彼に言ってあげたんだよ」。審判がホイッスルを吹くと、決定的なアクションは一瞬で完了する。
グリエーズマンはボールに向かって走り寄る。アウベスはゴールライン上でシミーダンスを踊っているかのように体を揺らしている。グリエーズマンが左足の内側でボールを強く蹴り上げる。ボールは高速でアウベスの右側を襲った。アウベスはバネのように弾け飛び、体全体が地上すれすれになった。伸びた左腕がボールに触れ、ゴールの外に弾き出した。
5万5000人の観客が絶叫した。アトレティコのディエゴ・シメオネ監督は手を叩いて悔しがった。「あのシュートを止めたあと、1週間は肩が痛かったよ」。アウベスは静かな笑みを浮かべながら話した。
まだ終わらない。試合後半にアトレティコは再びPKのチャンスを得た。今度のキッカーは「ガビ」というあだ名のMF、ガブリエル・アリーナスだ。ガビはアウベスの逆を突くつもりで、シュートを左側に柔らかく蹴った。だが、ボールは簡単に止められてしまった。そのときのガビは「こうなることは分かっていた」とでも言いたげな表情をしていた。
この一戦を終えて、アウベスはリーガ・エスパニョーラでダントツとなる通算PK阻止記録を達成。その数は19となった。バレンシアは公式サイトで“11mの伝説”としてアウベスの偉業を称えた。
バレンシアの練習場は、市の中心部からオレンジの木が立ち並ぶ道路に沿って車で20分ほどのところにある。ある冬の朝、トレーニングを終えたばかりのアウベスと落ち合った。
リオデジャネイロで生まれたアウベスはブラジルの数百万の少年たちと同様に、サッカーに夢中になって育った。11歳のころ、病気でステロイド治療を受けた。
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