伝説のPKストッパー…驚異のPK阻止率の“秘密”に迫る:前編
ゲキサカ / 2017年10月13日 22時14分
「すると体重が増え始めて太っちょになった。それでキーパーをするようになったんだ。学校で試合がある前の日、親がこう尋ねてきたんだ。『だれがゴールキーパーをするの?』。だから正直に『僕だよ』と答えた。するとみんな笑うんだ。それで僕は、どんなシュートでも必ず止めるようにしたんだ。試合のあと、みんなで祝ってくれるからね」
こうして身につけたシュート阻止能力は、アウベスの体重が落ちたあとも変わらなかった。18歳になると、彼はブラジルでトップのクラブチームであるアトレティコ・ミネイロに加入した。その後スペインに渡り、リーガ・エスパニョーラのアルメリアに移籍し、さらにバレンシアに移籍した。
アウベスにとってPKは「心理戦」だという。
「もし試合がPK戦にもつれ込んだら何が起こるか、ということを試合前にシミュレーションしておくようになったよ。何通りかのストーリー、何通りかの状況をね。でもそれだけでなく、その瞬間に、キッカーの考えていることや、緊張の度合いなども知りたいと思っていた。だから相手キッカーに話しかけて何かを感じ取り、予想通りに相手が蹴るかどうかを探ろうとしていたんだ」
こうして多くのサッカー選手は、PKを蹴る前に自分たちの心を読んでいるように見えるアウベスの能力を恐れるようになっていった。
「メッシの同僚のネイマールやクリスティアーノ(・ロナウド)の同僚のマルセロといったブラジル人の仲間に話しかけると、自信のなさそうな顔をするよ。みんな私にシュートを打つときどうやって蹴ればいいか聞いてくるんだ。ネイマールやマルセロは僕のトリックに気づいてないんだね」
彼の阻止率は、トップクラスのサッカーリーグでの平均阻止率25%をはるかに超えている。ドイツのウェブサイト「トランスファーマーケット」によると、アウベスは46回のPKのうちほぼ半数の22回を阻止しており、これは同程度の数のPKを受けている一流キーパーたちの中でも一番の阻止率だとのことだ。
PK戦では、PKに慣れていない選手が120分の試合で疲れ果てている状態でキッカーを任されることも多い。そんな選手でもPK戦できっちりとシュートを決めるための秘訣はあるのだろうか。そこで「PKの神様」とも呼ばれ、1986年から2002年までプレーしたサウサンプトンで数々のPKを成功させたマット・ル・ティシエを取材することにした。
彼がPKに臨むときの姿勢は、記者の予想以上に計算されたものだった。「私自身、必ず決められると思っていました。PKの機会があると私はいつもキッカーを志望していましたし、その点でも少し有利にスタートできたでしょうね」。こう語るマットは、どうしてPKが得意になったのだろう。
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