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『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』:届かなかった“あの場所”(國學院久我山高・平田周、上加世田達也)

ゲキサカ / 2017年11月15日 17時30分

 タイプは正反対だが、もはや“全国”の空気を知っているのはチームでたった2人だけ。平田も「あまり自分たちを特別視する必要はないですけど」と言いながら、「それでも1年生で全国準優勝して、2年生で初戦敗退してという経験をした高校生がどのぐらいいるかという話なので、達也には特別な気持ちもありますね」とも続ける。彼らだけが背負ってきた重荷を降ろすには、再び“あの場所”へチームを導く他に方法はない。いろいろな想いを抱えながら、最後の選手権予選の幕が上がる。

 初戦は府中東高に2点を先行される苦しい展開。残り10分で何とか追い付き、延長戦で突き放して敗戦を免れると、続く準々決勝の駿台学園高戦も、準決勝の国士舘高戦も、前半で先制点を奪いながら、後半は押し込まれる展開を懸命に凌ぎ、共に1-0で勝利を手繰り寄せる。清水監督も準決勝後には「今年のチームは勝ち上がるために一生懸命頑張っていて、自分たちの良さありきだけではないので、勝ち上がろうという意味では本当に粘り強くやってくれていると思います」と評価を口にする。

 決勝への意気込みも対照的で面白い。「高校生じゃ普通は体験できないので、僕はメディアに出ることに憧れがあるんですけど、ここ1年で『2年前は1年生っていうだけで騒がれていたんだ』というのはヒシヒシと感じているので、もう1回全国に出て力を証明したいというのは凄くあります」という平田に対して、「吹奏楽部がいると全然違いますよね。試合中は聞こえない人もいると思うんですけど、自分は結構聞こえる方で乗っていけるんですよ。そういうのがいいんじゃないですかね。気持ちに余裕があって、少し鼻歌交じりで(笑) それはちょっと言い過ぎですけど、そういう感じでやったらプレーとかも引きずらないと思うので」と上加世田。ただ、すべての想いはこの一心だけに集約される。『もう一度“あの場所”へ』。

 幕切れは唐突に訪れる。0-0で迎えた延長後半のアディショナルタイム。10人の実践学園はコーナーキックを獲得する。右から蹴り込まれた軌道に、ヘディングで合わせたボールはクロスバーを叩いたものの、すかさず詰めたフォワードのシュートがゴールネットを揺らす。それから40秒後。試合終了を告げるホイッスルがピッチを切り裂いた。平田は失点を喫してから、試合が終わるまでの40秒余りを全く覚えていない。「ゴールが入った瞬間から、自分があの時何を見ていたかもわからないし、あの時の光景を思い出せないというか、ただ茫然としていただけだったと思うんですけどね」。“あの場所”へと帰るために苦しみながら、少しずつ、少しずつ前へと歩んできた道は、最後の最後に残酷な形でその行方を閉ざされた。

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