『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』:恩師(V・ファーレン長崎・高杉亮太)
ゲキサカ / 2018年2月28日 14時42分
「いやあ、惜しかったですね。『行った!』と思ったんですけどね」と振り返る高杉と前田。クラブの歴史を築いてきた2人が絡んでの同点弾は、長崎にとっても記念すべきJ1リーグでの初ゴールだったが、どちらにもアシストもゴールも付かなかった。「一発目に決めてくれたら良かったんですけど、そこは置いといて、次にまたチャレンジしたいと思います」という前田に対して、「そうですよね。決めれば良い感じになっていたんですけどね。申し訳ないです」と苦笑した高杉。この会話にも彼の隠せない性格が透けて見える。
長崎のJ1初出航は、勝ち点を手にすることができなかった。後半35分にフリーキックの流れから、ルーズボールを押し込まれて再びリードを許すと、終盤は猛攻を仕掛けたものの、1点が遠い。高杉も「結果がすべてなので、とりあえず『申し訳ないな』という気持ちでいっぱいです」と唇を噛む。34歳の“デビュー戦”は黒星という結果で、90分間を終えることとなった。
実はこの日のスタンドには、かつての教え子の姿を見守る、よく日に焼けた男の姿があった。「アイツを見に来たことにしておきます? それは本当に全然なくて、監督が曺(貴裁)さんだし、高木さんだしという所で。ちょっと“盛って”も良いですよ(笑)」と笑うのは、今シーズンからSC相模原の指揮を執る西ヶ谷隆之監督。「本当にあの人のおかげで今がある」と言い切る高杉と“恩師”の出会いを知るには、時計の針を一気に14年ほど巻き戻す必要がある。
高知高時代の高杉は3年時に全国総体こそ出場したものの、選手権で全国を経験することは叶わず。進学した名門の明治大も周囲のレベルが高く、「高校から大学に入って、『ああ、コレ通用しねえな』みたいな感じがかなりあって、もうあまりサッカーも楽しくなくて『ダリー』みたいな、典型的なダメになるよろしくない流れ」の日々が続いていた。
西ヶ谷が明治大のコーチに就任したのは、ちょうどその頃だった。「腐っていたのかどうかはわからないけど、あまりサッカーはちゃんとやってなかったんじゃないですかね」と自身の就任以前に言及する西ヶ谷の指導が、高杉にはとにかく新鮮だった。「今まで教えられてきたものじゃない形でサッカーの考え方を教えてもらって、それが僕に合っていたんですよね」。当時は3年生。大学生活も既に折り返しを過ぎていたが、意識とプレーの両面が明確に変化していく。よき理解者を得たことで、ようやく高杉にスイッチが入る。
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