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FC今治オーナー岡田武史の告白(下)「今治で取り組む壮大な実験」

ゲキサカ / 2018年11月17日 7時30分

熱弁は1時間半以上に及んだ

 まさに断腸の思いでした。J3にあがるには、まずJFLで4位以内に入らないといけない。FC今治は昨季6位に終わり、今年は何としても4位以内に入りたかった。しかし6月下旬、8位に低迷していました。当時私はW杯の仕事の関係でロシアにいましたが、日本代表の2試合目を終えた後、一時帰国し、監督(吉武博文氏)を解任しました。監督は「一緒にチームを強くしよう」と私が連れてきた人間です。それでも心を鬼にしました。彼との友情を大切にするあまり、全社員とその家族を路頭に迷わすわけにはいかないからです。
 
 私はFC今治のオーナーに就任した当初、企業理念として「心の豊かさを大切にする社会創りに貢献する」ことを掲げ、チームのビジョンとして「10年後にJ1優勝」を掲げました。勝つだけでなく、選手を育てるプロセスにこだわりを持っています。

 2014年のブラジルW杯が終わった後、ある有名なスペイン人コーチに出会いました。通訳を通して彼と話をする中で、「スペインには『プレーモデル』というサッカーの『型』があるけど、日本にはないのか?」と聞かれました。
 サッカーには作戦タイムがなく、瞬時に攻守が入れ替わります。試合がはじまったら、選手が「自己判断」しなければいけない。だから指導者も一方的に教え込むのではなく「判断させなければいけない」と長年言われてきた。それなのに、欧州の雄ともいえるスペインに『型』があるという。それは型にはめる『型』ではなく、『共通認識の原則集』のようなものでした。それを16歳までに落とし込んで、あとは自由にするのだそうです。
 日本では子供のときは自由を重んじられ、16歳になった高校生からチーム戦術を教えられる。でもスペインでは全く逆でした。「だから日本人は自分で判断できないんだ。驚くような発想ができないんだ」と、今までの疑問がパーンと晴れた気がしました。

 武道には「守」「破」「離」という言葉があります。師匠の教えを忠実に「守」り、他の教えの良いところも取り入れて師匠の教えを「破」り、新しいものを確立して師匠から「離」れる。サッカーにもそういうことがあっていいのではと考え、日本が世界に勝つための「岡田メソッド」を確立しようと考えました。

 「岡田メソッド」は「How To」ではなく、あくまでも原則集です。たとえば「サポート」というプレーひとつにも、原則が4種類ある。そういった原則集を16歳までに落とし込み、原則をもとに選手が自由に発想するチームを作りたい。FC今治から魅力ある選手に育てば、全国から、そして世界から人が集まってくる。コスモポリタンの活気ある街にしたい、という夢に近づくと考えています。

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