『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』:エクストラ・タイム(駒澤大学・須藤皓生)
ゲキサカ / 2019年1月1日 21時0分
高校で終わっていたかもしれない須藤のサッカーキャリアには、1つの敗戦を機に4年間という長めの“エクストラ・タイム”が付け加えられた。「あの時の仲間には申し訳ないですけど、逆にあの“負け”があって良かったなと今は思います」と語った彼にとって、それはどういう時間だったのかが、実はずっと気になっていた。そのことを尋ねると、すっきりとした表情で須藤はこう言葉を紡ぐ。
「ここは人間的な成長を重んじるサッカー部なので、その面ではかなり鍛えられたかなと思いますし、物事の考え方や感覚がより変わりましたね。高校の時は自分が点を取りたいとか、選手権に出てテレビに出たいとか、そういう自分本位の気持ちがあったんですけど、大学では仲間のためにというか、『自分はどんな姿でもいいからチームのために何とかしたい』と思えるようになったので、そういう所はこれから社会に出ても、辛い時に自分のことだけじゃなくて、他の人のことを思えるようになったんじゃないかなと。それを今後に生かしていければと思いますし、自信を持って社会に出ていけるモノを手にした4年間だったと思います」。
おそらく燃え尽きずに燻った想いは、この4年間を経て、彼なりに燃焼されたのではないか。もしもサッカーを続ける選択肢をチョイスしていなかったら、まったく違った大学生活が待っていたことだろう。ただ、須藤はサッカーを続け、自信を持って振り返れる“エクストラ・タイム”の思い出を手に入れた。きっと自分で決めたその道こそが、自分にとって唯一の正解であり、それは今までのサッカーキャリアよりずっとずっと長く続いていく、これからの人生においても同じことが言えると思う。自分で決めたその道こそが、自分にとって唯一の正解であり続けるはずだ。
「これで1つの挑戦が終わったという感じです。非常にサッカーをやって良かったなと思えるキャリアでした。これ以上のキャリアはないと思います」。そう言い切ってスタジアムを去って行く後ろ姿を静かに見送った。須藤皓生は得難い経験を重ねてきた大事な“エクストラ・タイム”の思い出と自信を胸に、新たな人生のスタートを歩み出す。
■執筆者紹介:
土屋雅史
「(株)ジェイ・スポーツに勤務。群馬県立高崎高3年時にはインターハイで全国ベスト8に入り、大会優秀選手に選出。著書に「メッシはマラドーナを超えられるか」(亘崇詞氏との共著・中公新書ラクレ)。」
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