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『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』:初心(奈良クラブ・有薗真吾)

ゲキサカ / 2019年3月25日 20時44分

 有薗にとってはチームメイトの境遇も、かつての自身に重なる所が多いようだ。「ウチのクラブの選手はほとんど働いているんですけど、今はキツい想いをしていても、何年か後に結果次第ではプロ契約になれますし、そういう姿も自分が見せていかないといけないのかなと。今サッカーだけで生活できることが当たり前じゃないと思うことを、自分でも常に心掛けていますね」。“あの頃”を知っているからこそ、話せることがある。“あの頃”を知っているからこそ、伝えるべきことがある。彼の背中から若い選手が学び、それがまた後進へと受け継がれていくことに、彼が歩んできたキャリアの大きな意義があるのではないだろうか。

 今年でプロキャリアは10年目に突入する。「正直10年前に、今の自分は想像できていなかったです。この年までサッカーができているのも不思議というか。でも、やり続けていく中で、ここまで来たし、最後の最後まで、自分がサッカーをプレーできなくなる環境になるまでやりたい気持ちはありますね」。

 憧れは日常に変わり、日常は現実を伴い、現実はまた憧れを連れてくる。最後に有薗にあえて今後の夢を尋ねると、「夢ですか…」という反芻にこう言葉を重ねた。「まずはこのクラブでJ3に上がることですね。やっぱりDAZNとかもJリーグしか見られないじゃないですか。今まで所属したクラブの関係者やサポーターも気に掛けてくれている方がいると思いますし、またJリーグの舞台で活躍している姿を見せることが一番大事だと思うので、頑張らないといけないですね。もっともっとやらないといけないです」。

 都内の試合ということもあって、数多く応援に訪れた有薗の知人が彼の登場を待っていることは知っていた。取材に応じてくれたお礼を伝えようとした時、もう1つの秘めた夢を、そっと教えてくれた。「夢というか、いつかもう一度“草津”のユニフォームを着たいというのはあります。可能性はゼロに等しいかもしれないですけど、サッカーをやっている以上はもう一度、あのユニフォームを着たいなというのはあります」。“ザスパクサツ”でもなく、“群馬”でもなく、自然と口にした“草津”が、何よりもその想いを雄弁に語る。実直でまっすぐ。丁寧で繊細。今まで踏みしめてきた道のりでもそうだったように、奈良の地を愛し、奈良の地で愛される日々が、きっとこれからの彼を待っているのだろう。

 10年の時を重ねてきたからこそ、その響きがあの頃を鮮明に思い出させてくれる。ただ前だけを見つめて、ただ上だけを見据えて、何者かになりたいと願っていた自分を。「“初心”の気持ちというのは凄く大事だと思ったので、もう一度この番号を付けたかったんです」。あの頃と同じ32番を背負い、歴史ある古都の地で再び“初心”を呼び起こしている有薗真吾は今、サッカーと共に生きる幸せを噛み締めながら日々を過ごしている。

■執筆者紹介:
土屋雅史
「(株)ジェイ・スポーツに勤務。群馬県立高崎高3年時にはインターハイで全国ベスト8に入り、大会優秀選手に選出。著書に「メッシはマラドーナを超えられるか」(亘崇詞氏との共著・中公新書ラクレ)。」
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SEVENDAYS FOOTBALLDAY by 土屋雅史

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