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『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』:信頼(國學院久我山高・明田洋幸)

ゲキサカ / 2019年9月19日 20時22分

 とはいえ、もう1つの想いも明田の中で燻り続ける。「関東大会も自分はメンバーに入れなくて、カシマスタジアムのピッチの外でサポートメンバーと一緒にずっと見ていて、関東大会が終わってから、なおさら『試合に出たい』という気持ちが強くなっていきました」。中学時代は都内でも存在感を高めているFC多摩ジュニアユースで、2年生から試合に出ていた実力者。プレーヤーとしての葛藤はあえて言うまでもないだろう。

「自分も全部理解できているとは言えないですけど、絶対そういう気持ちが明田の中でもあるのはわかっていて、毎試合キャプテンマークは明田から試合前にもらうようにしているんですけど、そこを背負って自分がゲームキャプテンをやっているので、『明田の分もやらないと』という気持ちはあります」(山本航生)「正直、実際にツラいとは思うんですけど、それをあまりみんなには見せないようにしてくれますし、本人が一番悔しいと思うので、『明田のために』とは思っています」(河原大輔)。チームメイトはそんな想いも十分過ぎるほどに理解している。

 総体予選の決勝。大成高を下して、東京の頂点に立った直後のセレモニー。メンバーの中央に進み出て、カップを掲げる明田の姿があった。「自分が試合に出ていなかったので、悔しさが顔に出ていたのかわからないですけど、『明田やれよ』みたいに言われて。その時は『本当にやっていいのかな?』と思ったんですけど(笑)、みんなのノリ的な感じでやりました。嬉しかったですね」。河原の言葉がチーム全員の意思をよく現わしている。「自分たちは明田のことをしっかりキャプテンだと思っていますし、自然の流れでカップを掲げたんだと思います」。あの光景は、『試合に出ていても出ていなくても、明田は間違いなく自分たちのキャプテンだ』という、チームメイトからの決意表明だったように思えてならない。

 7月26日。東京代表として全国総体が開催される沖縄へと乗り込んだ久我山は、神村学園高に2-3で競り負け、初戦敗退を突き付けられる。はっきりと日本一を目指して臨んだ大会だったこともあり、「負けた時は結構みんな落ち込んで、もうホテルに帰っても誰も何も話さない状況だった」(明田)そうだが、スケジュールの関係で敗退後も沖縄に残って、トレーニングやトレーニングマッチを重ねる日々を過ごしていた。

 少しずつ元気を取り戻しつつあった7月31日。「せっかく沖縄に来たんだから楽しんで帰るぐらいのつもりじゃないと」という清水の計らいもあって、選手たちは美ら海水族館を訪れる。この水族館の名物の1つがイルカショー。久我山の選手たちが観覧していると、係の人の「誰か前に出てきたい人はいますか?」という問い掛けに、まずは加納直樹が躊躇なく名乗りを上げる。「もう直樹は水着もちゃんと用意していて。でも『1人じゃつまらないな』ということで、『誰が行く?』となった時に、『じゃあ明田いるじゃん』ってなったんです」と教えてくれたのは河原。チームメイトの推薦に、ここで断るキャラではない。かくして加納と明田は観衆の注目を集める中、イルカの“返り水”を浴びるためにステージへと歩み出る。

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