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転機は大会直前のPK猛練習…ゴールマウスに座って、踊って、敗れた尚志“PKキーパー”針生東の苦悩、覚悟、未来

ゲキサカ / 2024年12月31日 19時20分

 そんな針生にとっても、PK戦で見せた振る舞いは重い決断の結果だった。宮城県仙台市のA.C AZZURRIから特待生として尚志高に加入し、1年時は国体福島県代表の守護神を務めていたが、2年次以降は序列が大きく低下。控えGKの立場で最後の選手権を迎えようとしていた中、「自分はセービングが武器だったのでそこを活かせれば」とPK戦要員に名乗りを挙げたが、日々の練習では手応えを得られないまま大会が目前に迫ってきていた。

 大きな転機となったのは、大会への準備が佳境に入っていた約1週間前のJヴィレッジ合宿だった。

「それまでは相手にプレッシャーをかけることはしていなくて、真面目にPKをやっていたんですが、まったく止められなくて、なかなか結果がついてこなくて……。ここで何かを変えなきゃいけないなと。そこであぐらをかいたり、ピッチを叩いてコースに誘ったりしてみたら、結構な数を止めることができて、そこでやっと自信を持つことができて……」(針生)

 チームが勝つため、PK戦のチャンスがあればなんとしてでも止める。腹をくくった瞬間だった。

 昨年は高円宮杯プレミアリーグEASTに帯同し、出番を掴みかけた手応えのあった針生だが、夏ごろに「自信のなさ」に起因するミスをし、再びポジション争いから脱落。今季途中に仲村監督からサッカーノートを通じて「自分を他のGKと比べるな。自分らしいGKになれ」というメッセージをもらったのを機に、「だんだん自信を持ってプレーできるようになってきていた」という矢先、PK戦の大役に備えてようやく掴んだ好感触だった。

 それでも結果はついてこなかった。先攻1人目のキッカーに対し、針生はあぐらをかきながら微笑みかける仕掛けをしたが、相手も笑みを浮かべながら高精度シュートで応戦。その後もボールを渡す際にハグをしようとしたり、ゴールライン上でダンスを踊ったりと、バリエーション豊かに揺動を試みたが、相手のキックが最後まで乱れることはなかった。

「俺が止めて勝つんだ、チームを勝たせるんだという強い気持ちで挑めるように入ったし、練習もあの形でやっていて止める回数も多かった。自分の中では自信を持って挑めたけど、止めることができなかったことが悔しい」。運にも左右されるPK戦だが、キックの技術は鍛錬の賜物。東福岡のキッカー陣が一枚上手だった。

 試合後、憔悴した姿でミックスゾーンに現れた針生は敗戦から切り替えられない様子で言葉を紡いでいた。それでも仲村監督からの言葉を報道陣に伝えられると、3年間で積み重ねてきた成長に思いを向けた。

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