克服には親の「傾聴」「共感」こそが特効薬になる【「不登校」「ひきこもり」を考える】
日刊ゲンダイ ヘルスケア / 2024年5月2日 9時26分
【「不登校」「ひきこもり」を考える】#3
思春期や青年期は、子ども特有の「なんでもできる」といった万能感が壁にぶつかり、理想と現実のギャップに健全な葛藤や挫折を生じる時期でもあります。成功体験に喜び、自尊感情を高める一方で、自分と友達との能力の差を感じて自信を失ったり、思わぬ失恋で自尊心が傷ついたり……それでも、周囲の大人や友人たちの力を借りるなどして適切にそれらのつらい感情を処理しながら、挫折を受容し乗り越える中で、「自分とはどういう人間なのか?」「どう生きるべきなのか?」を試行錯誤しつつ探るプロセスこそが、若さの苦しさであり、また素晴らしさでもあるのだと思います。
しかし「感情不全」の状態に陥ると、プラスもマイナスも感情が機能しないために、成功も挫折もまともに経験できないのです。
厚生労働省の調べでは、ひきこもりの約8割はなんらかの精神障害を有しているとの報告もなされています。では、精神科に通院すれば解決するのでしょうか? ことはそう単純ではありません。本人に現状をなんとか解決したいという意思があり、かつその感情不全の病理が軽度であれば、きっと精神医療は足を引っ張る症状の緩和を通じて強い味方のひとつとなってくれることでしょう。
問題は、本人にその意思が皆無、またはそれがあるのかどうかもわからない、そして抱えている精神障害が治療に反応しないとか、そもそも専門家ですらどうしていいかわからないという深刻で根深い病理を抱えた場合です。
■精神疾患の難治化や発達障害による不適応の背景に感情不全
私自身は、精神疾患を発症や難治化に至らせる要因、抱えている発達障害やパーソナリティ障害で不適応を生じる背後には、この感情不全の問題が大きいと理解しています。実際、これまで100%薬で治療すべきと信じられてきた多くの精神疾患においてさえ、昨今の諸外国の最先端のエビデンスは、感情不全を取り扱う重要性を支持する研究が認められてもきているのです。
つまり、ひきこもりも精神障害もその根っこは本質的には一緒で、分けて考えるべきではなく、互いに悪循環を生じる一方で、感情不全を解決することができれば、どちらも好循環を生みながら二人三脚で改善していくのです。
そしてここからは多少耳の痛い話ですが、強く訴えたいのは、この感情不全に至る背景には、親子間の関わり合いにおけるボタンの掛け違いの影響が極めて大きいということと、そこにおける親の意識改革こそがこの感情不全の特効薬、ひいては不登校やひきこもりの解決の鍵だという重大な事実なのです。
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