なぜ、名カウンセラーより親の「傾聴・共感」が大事なのか?【「不登校」「ひきこもり」を考える】
日刊ゲンダイ ヘルスケア / 2024年5月7日 9時26分
【「不登校」「ひきこもり」を考える】#8
これまでお話ししてきた男性Aさんの場合、とても繊細な性格で、親を喜ばせたい、悲しませたくないといった気持ちが幼い頃から強く、親に「子育ては順風満帆」と信じ込ませるほどに、子どもながらに自分を殺して応え続けられる器用さもありました。そうしたことが相まって、手のかからないいい子として過ごしていたのでした。もちろん、そのまま本人と親の意向が合致して、何の問題もなく順調に育っていくというお子さんも世の中にはたくさんいます。
一方で、Aさんの場合には、高校に入りその生き方に限界が生じてきたにも関わらず、膨れ上がった苦悩の感情を心が処理しきれず溢れかえり、頭だけは「もっと頑張りたい」と願ってはいても、心と体がついてこられなくなり、ついには不登校やひきこもりといった形で避難するだけで精一杯だったというわけです。
では、どうすればAさんは「感情不全」に陥らずに済んだのでしょうか。それは、Aさん自身がひとりで溜め込んでいた本音の気持ちを、誰かに深く共感してもらいながら、心の底から思う存分、気の済むまで話すことだったと言えるでしょう。ひとりで遊んでいても味気ないように、人は大切な人と分かち合うことで、その喜びを心から深くまで堪能できます。また、大切な存在を失った時には仲間とその悲しみを分かち合うことで心の底から悲嘆した結果、そのつらさを乗り越えられるように、人は深い感情を感じるには誰かに話し、聴いてもらうことが不可欠な動物です。
その相手は、感情不全の病理が軽ければ友人やカウンセラーなどの専門家の力を借りてでも乗り越えられますが、その病理を根深くこじらせているほど、どんな名カウンセラーでも太刀打ちができなくなってしまいます。そんな中で、最大の特効薬は、その病理が生まれてきたまさに「親子関係」という構造そのものにこそあり、何歳になろうが他の誰よりもお子さんが理解しわかってもらいたいと心の底から願っている、その親御さんに自らの気持ちを受け止めてもらうことなのです。
■子どもの成長に不可欠な「健全な甘え」の欠如が原因
だから不登校やひきこもりの問題は「甘やかしすぎ」が原因でなく、逆に十分に甘えさせたつもりであったお子さんの気持ちを十分には理解できておらず、あえて言えば「形だけ甘やかしていても、子の成長に不可欠な健全な甘えは与えられていなかった」とすら言い換えられるでしょう。
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