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また2カ月生き延びた…通院で定期検査を受けるがん患者の心境【がんと向き合い生きていく】

日刊ゲンダイ ヘルスケア / 2024年5月3日 9時26分

【がんと向き合い生きていく】特別寄稿

 2年ほど前に大腸がんの手術を受けたDさん(73歳・男性)のお話です。

 定期の病院受診のため、寒いなか朝早く家を出ました。隣の空き家の庭の木が赤く咲き始めていました。「あるじなしとて春な忘れそ、か……」とつぶやいて、駅まで送ってくれる妻の車に乗り込みます。今にも雨か雪が降りそうでしたが、傘はリュックにしまったままです。電車は定刻に来ました。30分弱ほど乗っていつもの駅で降り、今度は傘を差して病院まで歩きました。

 受付の機械に診察券を入れると、予定票が出てきます。まずは採血です。移動してから採血室の前の受付機に診察券を入れたところ、800番台……。相変わらず患者が多い。室内と廊下の椅子に座って、たくさん待っています。今は740番のあたりの方が採血されている。まだまだ待たなければならないのはいつものことです。

 採血室には15ほどのブースがあり、それぞれに採血の技師さんがいます。掲示は「待ち時間20分」となっていました。

 25分を過ぎた頃、立て続けに番号が進みました。「815番の方」と呼ばれ、「はい」と手を挙げてその番号枠に行きます。名前と生年月日、採血試験管のラベルを確認し、右腕をまくりました。「血管がとれにくくてすみません。肘窩の所からなかなかとれないのです」と言うと、技師さんは「はい、見せてください。ん~そうですね」と答えながら前腕の中ごろを指し、「ここでやってみましょう」と言われました。

「よろしくお願いします。私の血管、逃げるんです。皮膚を引っ張ると、血管が固定されて刺しやすいと思うのですが……」

「ベテランの方ですね。はい、じゃあ刺しますよ」

「はい」

 腕だけあずけて、横を向いていました。

「ごめんなさい。うまくとれません。左腕はどうでしょうか?」

「はい、左を見てみてください」

「ごめんなさい。別の担当に代わります」

「いえいえ、私の血管が悪いのです。硬い血管で逃げるんです。面倒な患者ですみません」

「ここ、圧迫してしっかり止めておきますね」

 採血は3回失敗して、別の担当に代わりました。賢明な判断、さすが大きな病院だと思いました。結局、4回目でやっと採血が完了しました。

 他の患者の3倍以上、時間がかかったみたいでした。日によっては、簡単に1回で済む時と、5回も刺されることもあります。仕方がない。採血する側は恐縮していましたが、他の患者たちはスムーズに進んでいるようでした。

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