スーパー「オーケー」創業者の飯田勧氏が死去…「関西スーパー」買収の夢はかなわず
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年4月13日 9時26分
都内のスーパー「オーケー」/(C)日刊ゲンダイ
【経済ニュースの核心】
首都圏を中心に展開するスーパー「オーケー」の創業者で会長の飯田勧氏が2日、肺炎のため死去した。96歳だった。
飯田氏は1928年、東京都生まれ。終戦直後の45年に家業の酒類問屋、岡永商店(現岡永)に入社。58年に岡永商店の小売り部門として「オーケー」を創業し、東京・上板橋に1号店を開店した。86年に一定期間だけ安売りする「特売」からの脱却を決め、ナショナルブランド商品を競合店より安く販売するEDLP(エブリデー・ロープライス=毎日安売り)戦略を打ち出し、首都圏を中心に1都3県で152店舗を展開するスーパーにまで育て上げた。
飯田氏は2014年に会長に退いたが、経営への意欲は最後まで消えなかった。圧巻は21年に、「200日戦争」と呼ばれた関西スーパーを巡る争奪戦だ。
関西地盤の食品スーパー「関西スーパーマーケット」は21年8月末に「エイチ・ツー・オー・リテイリング(H2O)」の傘下の企業と経営統合すると発表した。だが、そこに関西スーパー株の7%強を保有する「オーケー」が割って入る形でTOB(株式公開買い付け)を提案した。「オーケーは関西スーパーの9月2日の終値に6割強ものプレミアムを付けた1株2250円でのTOBを提案し、株主の賛同を仰いだ」(市場関係者)のだ。
この「オーケー」のTOB提案に、関西スーパーの大株主であった「伊藤忠食品」が呼応。関西スーパーに対し統合相手(H2O)の価値評価額や算定根拠を開示するよう質問状を出すなど大揺れとなった。
だが、関西スーパーはオーケーの提案を嫌がり、H2Oとの統合を進めた。そこにはオーケーを率いる会長で創業者の飯田勧氏へのアレルギーがあったとされる。飯田氏は海軍兵学校出身で、セコム創業者の故飯田亮氏ら創業者揃いで有名な飯田5兄弟の三男。立志伝中の人物だ。
「オーケーの買収提案(6割強のプレミアム)は関西スーパーの株主にとって魅力的だったが、関西スーパーの経営陣にとっては飯田氏の存在が不安だった」とメガバンク幹部は振り返る。
■H2Oに軍配
結局、関西スーパー争奪戦は、H2Oに軍配が上がり、オーケーは買収断念に追い込まれた。念願の関西進出は自前で店舗を開設していかなければならなくなった。その関西1号店が11月に大阪府東大阪市にオープンする。飯田氏はその新店舗を見ることなく鬼籍に入ったが、夢は引き継がれる。
(小林佳樹/金融ジャーナリスト)
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