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角川歴彦氏(KADOKAWA前会長)が激白 人質司法違憲訴訟への決意、獄中で考えたこと

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年7月29日 9時26分

■いつもまにか獄中俳句歳時記ができた

 ──拘置所では俳句を作られたそうですね。確か、創業者の源義さんや兄の春樹さんが俳人なので、ご自身はやらないとおっしゃっていたのに。

 ある日、独房で本を読んでいると、人がいるんですね。うわっと思ったけど、なんだか、うれしくなった。そうしたら、人だと思ったのは自分の影だったんです。今度はその影が愛おしくなりましてね。語りかけたくなるような。その影はほんの数センチの窓から差し込む月光でできた影でした。満月でした。

 ──数センチ?

 窓は98%以上は覆われている。日本の拘置所には窓がないと批判されるのを恐れて少しだけ開けてあるが、窓という名のフェイクです。それでもそこから差し込む月光の力に感動して作ったのがこの句です。

 《 獄中の冴ゆる冬月我のもの 》

 ──限界の中の句ですね。自然を制限されると、五感をフル稼働して自然を感じるようになるんですね。

 《 獄中にどんな鬼棲む鬼やらい 》

 ──鬼やらいは節分ですか。

 私は拘置所で日記をつけて、そこに検事とのやりとりとかも記していたんですね。そうしたらある日、弁護士の接見中にそのノートを取られ、コピーされた。これは恐ろしいなと思い、その日から日記はやめました。代わりに俳句を考えるようになったんです。逮捕されたのが9月14日で夏の終わり。秋が来て、12月になり、お正月が来て、春が来たけど、まだ出られない。

 《 冬の獄通いつめたる妻痩せし 》

 《 松過ぎの獄も巷の如くなり 》

  獄中俳句歳時記になりました。

 ──よく心が折れなかったですね。

 怒りもあります。社員への思いもあります。会えないのに小菅に通って差し入れをしてくれた多くの友人がいます。アッ、家内が週に5日、接見に来てくれましてね。たった20分間で、会話はすべて看守がメモ。それを家内が「20分間の日常ね」と言いました。つまり、それ以外の23時間40分間、私は非日常の中にいたわけです。この20分間に救われたところもありました。おかげさまで生きて出られた。会見ではREBORN、RESTART、生まれ変わるんだと言いました。残りの人生はこの闘いに賭けようと思っています。

  ◇  ◇  ◇

▽角川歴彦(かどかわ・つぐひこ)1943年、角川書店創業者の角川源義氏の次男として生まれる。早大第一政治経済学部を卒業後、角川書店入社。兄・春樹氏との対立で一度退社するが、その後、戻り、93年角川書店社長。2013年、事業持ち株会社のKADOKAWA取締役会長。22年9月、東京五輪大会組織委員会の高橋治之元理事への贈賄容疑で逮捕され、取締役会長を辞任。23年4月に保釈。「人質司法」の違法性を訴える「人間の証明」(リトル・モア)を上梓した。

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