虚弱は身体だけじゃない…視力が良くても「アイフレイル」の危険あり
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年10月2日 9時26分
病気の始まりは40歳代から
健康長寿を考える上で着目したいことのひとつが「アイフレイル」。京都大学大学院医学研究科眼科学の辻川明孝教授に聞いた。
日本人の平均寿命(2023年)は男性81.1歳、女性87.1歳。
ところが、介護や医療を受けることなく自立して日常生活を送れる健康寿命となると、男性72.14歳、女性74.79歳。この数字は16年発表のものだが、今もそう大きく改善されているわけではない。
10年前後の介護を要する期間をどう短くするか。フレイル対策が大きな鍵を握っている。
「フレイルとは、健康な状態から要介護に至る、中間的な存在です。健康寿命を延ばすにはフレイル対策が必要で、アイフレイル対策もその中に含まれます」
アイフレイルは「アイ(目)」と「フレイル(虚弱)」をくっつけた造語で、視機能の低下、またはそのリスクが高い状態を指す。そもそもフレイルは身体的フレイルを中心に、認知機能低下やうつなどによる精神・身体的フレイル、社会的参加の減少や経済的困窮などによる社会的フレイルが絡み合っている。アイフレイルは身体的フレイルの一要素となる。
「アイフレイルは加齢に伴う変化、外的・内的要因などさまざまなものが関係して起こります。中でも強く関係するのが緑内障、加齢黄斑変性症、糖尿病網膜症です(囲み参照)」
これらはいずれも失明に至る可能性のある病気であり、治療によって進行を遅らせることができるものの、視力低下が進んでから治療を開始すると、失った視力は取り戻せない(不可逆性)。07年の統計では、日本では164万人が視覚障害を伴い、18万7800人が失明と推定されていた。
「失明などの視覚障害が出るのは70歳代からですが、強調したいのは、そこに至る病気の始まりは40歳代からということです。例えば、日本の中途失明の最大原因である緑内障は、40歳以上の20人に1人が罹患しているという報告があります。不可逆性の病気がアイフレイルに関係していることを考えると、アイフレイル対策は40歳代から始めるべきです」
■転倒・骨折のリスクが2.5倍に
アイフレイルで視機能低下が顕著になると「一人で外出できない」「人の顔が判別できない」「薬を飲むのが難しい」「お札が分別できない」といった事態を招く。日常生活に制限がかかり、自立した生活が難しくなる。
「視覚障害があると転倒・骨折のリスクが2.5倍に増加するとの報告があります。アイフレイルは、身体的フレイルを悪化させる因子となるのです。また、精神・心理的フレイルを悪化させる因子でもあります」
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