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【新春ビッグ対談】連載33年格闘漫画「刃牙」シリーズ板垣恵介×大宅賞作家・増田俊也

日刊ゲンダイDIGITAL / 2025年1月2日 9時26分

板垣 一番古い記憶は、近所のアパートの壁にガイコツを描いた。でも、おふくろに言わせると、もっとずっと前、2歳ごろから地面にいろいろと描いては消して遊んでいたらしい。絵を描くと、それをおふくろが褒めてくれるのよ。「あらぁ~上手に描くわねえ」って。あれが大きいんじゃないかな。褒められたいというのもそこにつながる。今でも、ここを描く時は楽しいなって思う。眉毛から目なんだけど、それは小学生の時から変わっていない。読者の皆さんも何を褒められたかは心に刻むべき。もしかしたら、その天才かもしれないから。

増田 板垣さんは矢沢永吉さんともお付き合いがありますよね。

板垣 21歳で読んだ永ちゃんの「成りあがり」(角川文庫)は俺のバイブルだから。成りあがって「角のたばこ屋までキャデラックで行くんだ」って、俺もそんな面倒くせえことやりたい! と思った。

増田 売れたい、成功したい、有名になりたいという強烈な衝動がかき立てられたと。

板垣 矢沢さんも褒められたいんだ。その手段がロックだった。昔、インタビューで矢沢さんは「俺の最大の失敗は芸能人として売れたこと。実業家だったら、サインくれ、握手してくれって人目にさらされることもなかった」と言った。でも、それは嘘だと思う。

増田 理由は?

板垣 だって、一緒に歩いていても、わざと人目につくオープンカフェの前を雰囲気たっぷりで通ったりするし、六本木の自動販売機の前で女の子が2人、迷っているのを見て、「こんばんは」ってすぐに声をかけていたもん。視線、大好き(笑)。それが、永ちゃんの活力なんだろうな。矢沢さんはそりゃ、抜群に格好いいですよ。

増田 今は別の意味で人の目を気にしなくてはいけない時代になった。SNSによる「1億総監視社会」、過剰なハラスメント意識が人々を萎縮させる。僕が書く小説の登場人物にも、ある種の清廉潔白さを求められて驚いたことがある。ただ、そうした理不尽はどこの世界にもある。

漫画家の仕事を頑張れてきたのは、習志野第1空挺団での理不尽があったから(板垣)

板垣 ひとつ言えるのは、俺を大人にしてくれたのは理不尽だった。自衛隊なんか理不尽しかない。命令と了解しかない世界。俺が所属した習志野の第1空挺団には「20万歩を2夜3日で……」というとんでもない訓練が毎年あった。真夏の2夜3日、30キロの装備を身につけて100キロを行軍する。あれほどの理不尽、修羅場はなかったよ。

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