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子どもに託す?墓じまいする?誰もが知っておくべき「お墓の引き継ぎ方」【司法書士が解説】<br />

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年3月8日 11時15分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

相続には「お墓」や「仏壇」も含まれると思いがちですが、実はこれらは相続財産には含まれません。そのためお墓などを引き継ぐ人は個別に決めなければなりません。本記事では『ふと、終活のことを考えたら最初に読む本』(日本実業出版社)から一部抜粋し、お墓などの引き継ぎ方やするべきことをご紹介します。

登場人物

あんみつ先生(45歳)…司法書士。都内の会社を退職し、実家のある田舎町にUターン。司法書士事務所を開業し、おもに相続と成年後見を中心に業務をしている。また、副業で終活セミナーの講師もしている。

吉田小春さん(65歳)…専業主婦。あんみつ先生のご近所さん。子供2人はすでに独立し、現在は夫と気ままな2人暮らし。

吉田健二さん(70歳)…小春さんの夫。長年勤めた会社を定年退職し、家で趣味を楽しみ、のんびり暮らしている。

相続財産には含まれない「お墓」や「仏壇」の引き継ぎ方

吉田:吉田家のお墓を建てたら、将来、誰に引き継がせましょうか? 小春:子供たちは“財産”とは思わないでしょうから、難しいモンダイよね。 先生:実は、お墓や仏壇などは「祭祀財産」といって、不動産や預貯金などの「相続財産」には含まれないんですよ。 小春:なるほど。たしかに墓地や仏壇って、他の財産とちょっと違う感じよね。 

「祭祀財産承継者」を決めよう

お墓は「祭祀財産」といい、お墓を継いだ人のことを「祭祀財産承継者」といいます。祭祀財産は相続財産には含まれず、相続税の対象でもありません。具体的には墓地、墓石、仏壇、仏具、家系図、遺骨などが祭祀財産に該当します。

故人の遺骨を誰が引き取るか、お墓を誰が管理するのかなどについて、相続人どうしがモメることはよくあることだと思います。そういう意味では、祭祀財産を相続財産に含めないことに違和感を持つ人も多いかもしれません。

しかし、祭祀財産を相続財産に含めてしまうと不都合があるのです。実際に、お墓や仏具、遺骨などを、不動産や現預金などと一緒に遺産分割の対象とするのは、一般的な常識には合いません。お墓や遺骨などを分割して、何人かで分け合うというのは現実的ではないと考えられます。

祭祀財産の承継者は、原則として1人です。その1人は相続人のほか、相続人以外でもかまいません。相続放棄をした人でも問題なく、祭祀財産の承継者になれます。また、友人や内縁関係の妻などが承継をすることも問題ありません。

祭祀財産承継者の指定は口頭でもかまいませんが、遺言やエンディングノート等に書いて指定するほうがいいでしょう。

承継者には、寺院なら檀家料等の支払いや、法事等を主宰する負担もあります。お墓の管理責任を負担する立場であることを考えると、遠方に住む人や体力的に厳しい人、そもそもやる気のない人などを一方的に指定しても現実的ではないと考えられます。この件については、事前に家族でよく話し合うことが重要です。

なお、祭祀財産の承継者は、自分で決めなければその地方の慣習によって決まります。それでも決まらない場合は、家庭裁判所に決めてもらうことができます。 

支払いや管理が難しくなったら「墓じまい」という選択肢も

先生:先ほど説明したように、お墓って、相続財産じゃないんです。 吉田:それはわかりましたが、私にはどうもピンときません。わが家のお墓の場合、兄弟で跡継ぎを決めましたから。 小春:そうよね。それに、お墓を継いだらお墓の名義変更をするはずよ。だから、私たちの常識では、お墓を引き継ぐのも相続手続きの1つだって思うわ。 

承継者はさまざまな手続きを行う…難しければ「墓じまい」も検討

お墓を引き継いだ祭祀財産承継者は、まず、お墓の名義変更の手続きをします。ここで、祭祀財産承継者が相続人であれば、寺院等の管理者に対して相続関係を証明する必要があります。

その際、ほかの相続手続きで用いた相続関係書類一式の提出を寺院等の管理者が求めてくることがあります。そのため、祭祀財産承継者は、書類への署名や押印、印鑑証明書の提出など、ほかの相続人たちに協力してもらう必要があります。

名義変更にあたっては、墓地の使用規約が問題となります。この規約は、墓地の管理者との約束事だと思えばよいでしょう。

使用規約によっては内容が保守的で、承継者が条件を満たさず、お墓を引き継げないケースも想定されます。実の子供や配偶者であれば問題はないですが、たとえば内縁の妻などは、使用規約上、承継ができないことがあり得ます。

承継者がいない場合は、お墓が荒れないよう、誰かに管理を頼むとか、あるいは墓を撤去処分(墓じまい)することを考える余地もあるでしょう。

ちなみに、お墓の名義変更をしても、その墓地を所有したかどうかはわかりません。地域や施設によって様々ですが、一般的には墓地(使用地)は寺院等の管理者から借りているものであり、名義人が所有者となっているわけではありません。

永久に借りて使う権利(「永代使用権」)を持っているということなので、法的にはお墓の持主は期限のない土地使用権(地上権等)を持っていると考えられます。

他方で、お墓(遺骨を納めたり墓石を建てた設備)それ自体については、祭祀財産承継者の所有物となります。そのため祭祀財産承継者は、寺院や霊園管理者に対して、年間使用料や管理料等の支払義務を負っているのが一般的で、寺院によっては檀家料ということもあります。

もし祭祀財産承継者がこの支払いを滞納し、管理者との間の信頼関係が破綻してしまったような場合は、最終的には管理者により墓の強制撤去が行われる可能性があります。

そのため、年間使用料や管理料等の支払いが難しくなった場合には、墓じまいを早期に検討することも考えられます。

墓じまいをする場合は、遺骨をどうするかを決める必要があります。たとえば、同墓地内の合祀墓などに安置したり、別の場所にお墓を移すこと(「改葬」)が考えられます。

改葬の際には、改葬すれば檀家をやめることを意味するため、寺院から離檀料という名目で金銭の支払いを求められることがあるかもしれません。

しかし、この支払いについては、法的には応じなくていい、と考えられています。なぜなら、宗旨替えをしたり、特定の宗教を脱退するのは、個々人の信教の自由の問題であり、それが金銭の支払いによって制約されるのは妥当ではないからです。

あんみつ先生のチェックポイント ●墓、仏壇、家系図、遺骨などは祭祀財産といい、法的には相続財産とは区別される。 ● 祭祀財産承継者を誰にするかについては、遺言書やエンディングノートに書いておくとよいが、指名されたほうも都合があるから、一方的に指名するのではなく、家族会議などで話し合うほうがよい。 ● お墓を引き継げば、その名義変更をする必要があり、その際には他の相続手続きと同様に、相続関係の証明書等の書類一式が必要となることがある。 ● 祭祀財産の承継者は、寺院や霊園の管理者に対して、年間使用料や管理料等の支払義務を負っており、支払いを怠れば最終的には管理者により墓の強制撤去が行われる可能性もある。

加藤 光敏(あんみつ先生)

司法書士

※本記事は『ふと、終活のことを考えたら最初に読む本』(日本実業出版社)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。

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