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優秀な人は“自信がない”!?成功するには「自信のなさ」を認識することが大切なワケ【ロンドン大学教授が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年3月10日 11時15分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

「自分には自信がない」と悩んでいる人も多いのではないでしょうか。しかし、自信がないという気持ちは「さらに努力する原動力になる」とトマス氏は言います。著書『「自信」がないという価値』(河出書房新社)より、トマス・チャモロ=プリミュージク氏が解説します。

自信がない人ほど努力する

あなたは今までに、何らかの極限状況に置かれたことはあるだろうか。親しい友人や身内に身の危険が迫るのを目撃したり、不当な行為を目の当たりにして怒りに震えたりしたことは? 心の底から何かを欲しいと思ったことは?

もしあるなら、それらの体験をふり返ってみよう。自信は言われているほど役に立たなかったことに気づくはずだ。それにはもっともな理由がある。

もし本当に欲しいものがあるなら、自信があってもなくてもそれを手に入れようとする。そしてもしそれほど欲しくないなら、自信があってもなくても手に入れようとしないはずだ。

それに加えて、もし何かを目指すと固く決意しているなら、自信はむしろ邪魔になる。なぜなら、欲しいものが手に入ると確信するほど、手に入れるための努力は少なくなるからだ。

逆に、簡単には手に入らないと感じていれば、その分だけ努力も増える。つまり、何かで上達したいと考えることと、何かが得意であると自負することは、実は両立しないのである。

私の知っているもっとも優秀な人たちは、たいてい普通の人よりも自信が低い。そして私の知っているもっとも自信のある人たちは、平均より能力が低い。

私自身について言えば、自信を感じることなんてほとんどないが、自分の専門分野ではおそらく優秀なほうだと思う。もし私にもっと自信があったら、実力は今よりも下だっただろう。なぜなら、自信がない(すなわち、能力も低い)状態を克服するために、さらに努力することもなかったからだ。

自信のなさは、欲しいものを手に入れる妨げにはならないーこの事実を認識することが大切だ。

もし何かが本当に欲しいなら、それを手に入れるだけの実力がないという気持ちは、さらに努力する原動力になる。そして、成功するのにいちばん欠かせないのは、自信ではなく努力である。

自信がない≠悪い事

成功は2つのパートに分けられる。それは、「準備」と「パフォーマンス」だ。

パフォーマンスの段階では、自信があるのはいいことだ。自信があると、周りからは能力がありそうだと思われるし、自分も不安な気持ちに襲われなくてすむ。

逆に、パフォーマンスの段階で自信がない状態だと、不安な気持ちが実力を発揮する妨げになる。やるべきことに集中できず、周りからも能力がなさそうと思われてしまう。

とはいえ、成功の中で「パフォーマンス」の占める割合はとても小さい。何かを達成するまでの時間と労力で考えれば、全体のほんの10%くらいだろう。残りの90%は「準備」だ。そして、自分のパフォーマンスに自信がない人ほど、より熱心に準備することになる。

たとえば、ある重要なプレゼンテーションを任されたとしよう。自信がなかったり、不安になったりするのはたしかにイヤなものだ。しかしそのおかげで、失敗や恥をかくのを避けるために、きちんと準備することができる。そしてその結果、自信があって心配していなかった場合よりも、はるかにいいプレゼンテーションを行うことができるのだ。

つまり、自分を向上させたいと思うなら、スタート時点で自信はないほうがいいということだ。自信を持つことは、本当の実力をつけるまではむしろ役に立たない。

そして自信のなさは、実力を高めることにつながる。言い換えると、成功は努力のたまものであり、そして努力するには自信はないほうがいいということだ。

これは考えてみれば当たり前であり、理にかなった話だろう。

しかもそれだけでなく、きちんとした科学の裏付けもある。高名な心理学者で、「自己効力感」(要するに「自信」と同じような意味だが、1980年代以降はこの言葉のほうが学者の間で好んで使われている)という言葉を作ったことで有名なアルバート・バンデューラは、高い実力が高い自信につながると明言している。

やはりパフォーマンスの質を上げることが、自信を高めるいちばんの近道だということだ。

自信がある人は努力を怠る

次に、科学的な根拠をいくつかあげてみよう。

●依存症や心身の病気(過食症、喫煙、飲酒、ギャンブルなど)の治療からわかるのは、自信の高さが役に立つのは、実際の成功体験に基づく自信である場合に限られるということだ。 つまり、ここで大切なのは、自信が高まったことではなく、能力が高まったことのほうだ。 たとえば、誰かを説得して禁煙させようとするとき、自信を持たせるだけでは何の結果にもつながらない。しかし、その喫煙者が、タバコの本数を減らすという最初の段階をクリアできれば、その成功体験が「本当に禁煙できるかもしれない」という自信につながり、禁煙の成功にさらに近づくことができる。 ●自信がないと、さらに多くのリソースを配分しようとする。目標を達成するために、より多くの時間や労力を費やすということだ。 そして心理学者のウィリアム・パワーズも言っているように、その結果として能力も向上する。被験者のパフォーマンスをランダムに評価することで、被験者の自信の高低を操作するというよくある手法の調査によると、自信が下がるような評価をもらった被験者は成績を上げるためにより努力するが、高評価を受けて自信が高まった人は逆に努力しなくなるという。 たとえば、イリノイ大学のダン・ストーンが行った調査では、自信が高い人は自らの能力を過大評価し、その結果、自信の低い人たちに比べて気が緩み、努力を怠るようになることがわかった。 ●知覚制御理論など、根拠のしっかりした動機付けについての科学的な理論によると、動機が高まるきっかけは、現在の状況と、理想の状況の間にある差を認識することだ。 自信が高いと認識できる差は小さくなり、自信が低いと逆に大きくなる。そのため、自信がないほうが動機は高まるということになる。言い換えると、自信が高まるほど、自分が考える現時点での実力と、理想の状態との間にある差が小さくなり、その結果として努力を怠るようになるということだ。 自信はいわばサーモスタットのようなもので、目標を達成したことを察知する役目を果たす。本物のサーモスタットは温度調節の機能を果たし、設定した温度に達したら運転を停止する。自信もそれと同じで、目標を達成したと判断したら、そこで努力をやめてしまうのだ。そして自信のある人は、自信のない人よりも、目標達成のシグナルを出すのが早くなる。

以上のように、多くの科学的な調査によって、自信の低さが成長の大きな原動力になることが証明されている。実力があることが自信につながるのであり、そしてそのプロセスは、自分に実力がないことを認識し、適切な時間と労力を費やして努力することから始まる。

自信とはおかしなもので、自信があるとたしかに目標は高くなるが、そのための努力は逆に少なくなるという矛盾した面がある。

自分の能力に自信がある人は、より高い目標を掲げ、さらに自分ならその目標を簡単に達成できると考え、その結果として努力のレベルを下げることになる。

逆に自信がないと、そもそも高い目標を持たない可能性もあるが、むしろ高い目標を挑戦しがいがあるととらえ、動機が高まり、より多くの時間と労力をその目標に費やすことにつながる。

また、自分の不安な気持ちを最大限に活用し、慢心することなく成功体験を積み重ねていく。自信から生まれる安心は惰性につながり、必然的に努力が減速していくが、不安はさらなるパワーと加速につながる。

トマス・チャモロ=プリミュージク

社会心理学者/大学教授

ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン教授

コロンビア大学教授

マンパワーグループのチーフ・イノベーション・オフィサー

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