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自律神経を整える、ウイルス感染を防ぐ…健康のために今すぐ取り入れたい「呼吸法」の極意【医学部教授が解説】<br />

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年3月14日 8時0分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

40歳を過ぎると肺の機能が急速に衰え始めます。その結果、呼吸が浅くなって自律神経が乱れてしまうといった悪影響を及ぼします。これらの悪影響は、どうすれば解消できるのでしょうか。本記事では、順天堂大学医学部で教授を務める小林弘幸氏による著書『自律神経を守る 60歳からの正解』(マガジンハウス)から一部抜粋して、自律神経のバランスを整える「呼吸法」について解説します。

1日数回ゆっくり深く呼吸して、自律神経のバランスを整える

40歳を過ぎると肺の機能は急速に衰え始めます。横隔膜の筋力も低下して、その動きは小さくなり、どうしても浅い呼吸になってしまいます。

老化などによって失われた肺の機能はもとには戻りません。しかし、呼吸の質を変えることで、今ある肺の機能を回復させることができます。

その方法が「ゆっくり深く呼吸する」ことです。

ゆっくり深く呼吸すると、横隔膜は大きく上下に動きます。その動きが大きくなるほど取り込める空気の量も多くなり、副交感神経の働きが高まります。

反対に、速く浅い呼吸をすると、横隔膜の動きは小さくなります。取り込める空気の量も少なくなり、副交感神経の働きが低くなるということです。

つまり、いつもの呼吸を「ゆっくり深い呼吸」にするよう心がければ、副交感神経のレベルも上がり、自律神経のバランスを整えることができるのです。

また、肺には正しく動いているかどうか監視する見張り番が備わっています。それが「圧受容体(あつじゅようたい)」という場所で、肺が収まっている胸腔(きょうこう)にあります。

圧受容体は、血液中を流れる酸素や二酸化炭素の量を監視して、その情報が伝わることで血流量や呼吸数をコントロールする働きがあります。

息を長く吐くほど、圧受容体に圧力がかかり続けます。ゆっくりとした長い呼吸をすることで、血流量が増えて副交感神経の働きが高まる仕組みになっています。

しかも、全身の血液の流れがよくなってくると、硬くなった筋肉の緊張もゆるんで、体もリラックスしやすくなります。横隔膜をはじめとした呼吸にかかわる筋肉もゆるむことで、動きやすくなります。

横隔膜が動きやすくなると、低下した筋力も鍛えられるため、横隔膜の上下運動が徐々に大きくできるようになっていきます。

残された肺の機能を最大限に引き出すためには、横隔膜など肺まわりの筋肉を柔軟にする「ゆっくり深い呼吸」を意識的に行うことです。その結果、肺機能の衰えもカバーすることができ、自律神経の働きを高めることにつながります。

1日数回でも構いません。「ゆっくり深い呼吸」を習慣化しましょう。

日本人の7割ができていない…「鼻呼吸」でウイルス感染を防ぐ

もうひとつ、質のよい呼吸のために大切なことがあります。それは、「口呼吸」ではなく、「鼻呼吸」をすることです。なぜなら、鼻で呼吸をするほうがウイルスに感染しにくいからです。

たとえば、鼻で呼吸すると、鼻毛がフィルターの役割をして、空気中のウイルスや細菌を取り除いてくれます。そうして、きれいな空気だけを気道や肺に送り届けることができるのです。

一方、口で呼吸すると、ウイルスや細菌を含んだ空気が、そのまま気道や肺に送られてしまうことになります。

口呼吸には、他にもデメリットがあります。

口の中には、約1,000~6,000億個の細菌がいると言われています。この細菌が増えていくと、さまざまな病気にかかりやすくなります。細菌を増やさないためには、唾液の量を減らさないことが重要です。なぜなら、唾液は、口の中の粘膜を覆って、細菌の繁殖を防ぐ役割をしているからです。

しかし、口呼吸をしていると、口の中が乾燥して唾液の量がどんどん減ってしまいます。本来、唾液の中にいる免疫細胞が細菌から守ってくれているわけですが、唾液が減ると免疫細胞も減るため、どんどん細菌が増えていきます。そこから、虫歯や歯周病など、さまざまな病気にかかりやすくなってしまいます。

また、口呼吸は喉や気道も乾燥します。喉や気道は、綿毛や粘膜に覆われていて、細菌やウイルスを排出する役割があります。それが乾燥すると、細菌やウイルスを排出する力が弱まり、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなります。

肺の中に直接冷たい空気が送られてしまうのも、口呼吸のデメリットです。それは、肺の免疫力が低下して、肺を痛める原因にもつながります。

鼻呼吸をすれば、冷たい空気は鼻の粘膜を通ることで温められ湿度も加わります。途中の喉を通るときにも肺に届くときにも、温かく湿った空気となって刺激を少なくします。

じつは、日本人の7割が口呼吸と言われています。無自覚で口呼吸をしている人も多いので、気になる方は一度専門家の診察を受けてみるとよいでしょう。

鼻から吸って口から吐く、「1対2」の呼吸法を就寝前の習慣に

鼻呼吸には、もうひとつ大きなメリットがあります。口呼吸よりも、酸素を取り込む量が多いことです。

鼻の粘膜では、一酸化窒素というガスがたくさんつくられています。鼻呼吸をすると、この一酸化窒素が酸素と一緒に肺に送られていきます。一酸化窒素には、肺胞で血液が酸素を取り込む量を増やす働きがあります。そのため、口呼吸よりも鼻呼吸のほうが、酸素を効率よく取り込めるようになるわけです。

これは、スウェーデンのカロリンスカ研究所のヨン・ルンドベリ教授などの研究で広く知られています。

また、ノーベル生理学・医学賞を共同受賞したルイス・J・イグナロ博士は、一酸化窒素が肺に取り込まれると免疫力がアップし、細菌やウイルスなどの感染症などにも対抗できる可能性について研究を進めているそうです。

それでは、息を吐くことに関してはどうでしょうか?

鼻から息を吐くことは、鼻の粘膜でつくられた一酸化窒素を外に出してしまうことになります。一酸化窒素を最大限に取り込むためには、「鼻から吸って口から吐く」呼吸法が最も理想的と言えるでしょう。

ここまで、「ゆっくり深い呼吸」「鼻から吸って口から吐く」がよい呼吸とお伝えしました。しかし、よい呼吸を心がけていても、つい習慣となっている呼吸に戻ってしまうことはよくあります。

「上手に呼吸できない」という方のために、よい呼吸のコツを紹介しましょう。それは、「1対2」の呼吸法です。

① リラックスした状態で、3~4秒かけて鼻から息を吸う

② 6~8秒かけて口からゆっくり息を吐く

ゆっくりと鼻から息を吸ったら、倍の時間をかけて口から息を吐きます。3秒吸って6秒吐く、4秒吸って8秒吐く、どちらでも構いません。ハーとゆっくり吐けない方は、口をすぼめてフーと吐いてもよいでしょう。

まずは、1日に1分、就寝前の習慣にしてみるところから始めてみてください。

小林 弘幸

順天堂大学医学部教授

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