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「こんなはずじゃ…」を回避するために、相続前に知っておきたい“本当に資産性のある”不動産と“早めに処分すべき”不動産の見分け方【専門家が助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月16日 10時45分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

これまでは「資産価値のある」不動産にかんしては、持っているだけで「とってもお得」な相続案件でした。しかし、最近はそうともいえなくなってきたと、不動産事業プロデューサーである牧野知弘氏は言います。牧野氏の著書『負動産地獄 その相続は重荷です』(文藝春秋)より、相続すると「負の財産」となりかねない、危険な不動産の見分け方を詳しく見ていきましょう。

資産になる不動産、ならない不動産を見極める

相続にあたっては、資産を相続させる被相続人(例えば親)とこれを受け取る相続人(例えば子)の間で、事前に資産の内容をよくチェックしておくことが大切といっても、現預金や上場有価証券、保険などは、金額を把握しやすいのですが、やっかいなのが不動産です。

資産価値が見込める不動産ならば、これを自らの住居としてもよいし、他者に賃貸して賃貸料を受け取ることもできます。相続の際には、不動産について土地は路線価評価額、建物は固定資産税評価額で評価されるため、時価よりも安く評価されています。したがって相続するにあたっては額面以下の評価額で受け取れるはずなので、「とってもお得」というのがこれまでの概念でした。

しかし、これはすべての不動産について利用価値がある、あるいは利用しなくても所有さえしていれば勝手に価値が上がる、そしていざ売却するときには確実に買い手が存在する、ということが前提条件になっていました。

ところが最近では地価が下がる、利用者がいない、そして売却しようにも買い手がいない、という不動産が頻出しています。それどころか、毎年確実に請求される固定資産税、場所によりますが都市計画税の負担。空き家の管理。敷地内の草木の剪定、お隣さんなど近隣住民との人間関係など、不動産は所有しているだけで多くの金銭的、精神的および肉体的負担を伴うものになっています。

よほどよいことがないと、そのまま所有していることにあまりメリットはありません。

では、残して相続したほうがよい不動産、つまり資産性のある不動産と、相続前に処分しておいたほうがよさそうな不動産をどのように見極めたらよいのでしょうか。土地と建物に分けて考えてみましょう。

資産性のある「土地」とは?

土地を見る際にはいくつかポイントがあります。素人の方はすぐに最寄りの駅がどこで、駅から何分だとか、高速道路や幹線道路から近いとか交通アクセスを考えがちです。たしかに交通の要素も大事なポイントではありますが、相続財産として価値があるかないかは、もう少し不動産自体をよく調査する必要があります。

私が戸建て住宅などを見るときに最も重視するのが、道路との接道状況です。これは土地を見る際の基本、「いろはのい」です。建築基準法では、建物を建築する際には、「幅員4m以上の道路に2m以上接していなければ、新たに建物を建築することはできない」とされています。

つまり、この条件を満たしていない家などを相続してしまうと、自分で使う、あるいは賃貸し続ける分にはよいのですが、これを老朽化したからといって建て替えることはできません。ということは売却しようにも、買った人が新たに建物を建築することができませんので、その点が嫌われて売却できないリスクが極めて高いということになります。

道路に2m以上接していても、接している道路が4mの幅員を確保できていないと、建て替えの際に、前面の道路が幅員で4m確保できるように敷地を後退(これをセットバックといいます)させて建築する必要があります。つまりセットバック部分だけ土地は実質的には自分のものにはならないということです。

地形(ジガタチ)も重要です。なるべく整形のものがよいです。その理由のひとつとして、ある程度広い面積になると、売却する際、土地代が高すぎて分割しないと売りにくくなります。分割するためには、そうです、道路に2m以上接することが必要ですから、整形のもののほうが分割しやすいですよね。

日当たりなどを考えて方角も重要です。日本では南西向きの土地が好まれます。周辺環境も大切なポイントの一つです。周辺にパチンコ店などの遊技場、葬祭場、ごみ焼却施設、排煙や音の出る工場などがある不動産は敬遠されがちです。長く所有しても資産価値の向上は限定的でしょう。

また将来的な売却を見据えて、相続が発生する前にお隣さんの敷地との境界を確定しておくことをおすすめします。相続発生後ですと、相続人が意外と隣人を知らないといったケースが増えています。人間関係がある先代の間に境界を確定する、越境物など将来トラブルになりそうな事象を解決しておくことは、スムースな相続を実現するための親の務めともいえましょう。

資産性のある「建物」とは?

建物付きで相続する場合は、相続時までになるべく断捨離をして、家財道具を片付けておくことです。特にタンスや食器棚のような大型の家具を撤去しようと動かすと、壁が傷んでいたり、カビが密生していたり、思わぬ状況に遭遇するものです。

相続後に相続人が住むにしろ、賃貸に出すにしろ、いずれにしてもまず家の中を整理して補修すべき箇所を確認することです。内装ばかりに目が行きがちですが、屋根や外壁などの修繕履歴も確認し、クラック(亀裂)などが入っていないかを確認します。意外と見落としがちなのが樋で、台風や豪雨などの影響で外れている、壊れているようなケースも多いものです。

設備で要チェックなのがエアコンや給湯器です。親がしばらく病院や福祉施設などに入居していると、機器がほとんど使い物にならない状態にある場合があります。相続後どの程度の整備費用がかかるのか、あらかじめ把握しておくと、慌てずに済みます。

最近ではマンションを相続するケースも増えています。マンションの建物価値は非常に重要です。土地の権利があるといっても所詮は敷地権の共有にすぎません。マンションこそは相続後自分が住む、他人に貸す、売る、という視点から、その建物としての資産性を正確に把握しておくことが大切です。

まず、相続するケースでは築40年を超えるような物件が多いかと思います。立地については道路への接続など気にする必要はありませんから、もっぱら建物の老朽化の具合をチェックしましょう。

親の住んでいたマンションの状況なんてわからないと思うでしょうが、管理組合に頼んで、大規模修繕履歴のチェック、特に議事録を見て住民間でのトラブルが頻発していないかを確認します。古いマンションになると、オートロックがない、共用部の清掃が行き届かない、外壁の塗装、配管や設備の更新が思うように進められていないものがあります。

相続後に賃貸したい、売却したいという場合には、今ではネットで相場を簡単に把握することができます。どこのサイトでも大きな違いはありません。ただし、掲載されている賃料や売値はあくまでも掲載側の希望価格であることには注意が必要です。

また一つのマンションでたくさんの部屋が掲載されているようなケースでは、実はマーケットであまり評価されずに、売れ残っている、貸せずに滞留している、といったことが考えられます。またマンションの相続では、相続後速やかに管理組合に届け出て、以降の管理費、修繕積立金などの支払い口座変更の手続きを行う必要があります。できれば理事長さんなどに挨拶をしておくとよいでしょう。

以上のように、できるだけ相続発生前に、相続することが想定される不動産についてはあらかじめ、実際に物件を見て、入念な準備を行っておくことをおすすめします。毎年課せられている固定資産税も、通知書を親から見せてもらえば、今後どの程度の税金負担を覚悟すればよいかもわかるというものです。

そして資産性が見込めない不動産については、できれば早めに処分して現金化することも視野に入れたいものです。特に不動産で相続税を気にする必要のない世帯では、「いらない不動産」をあえて相続することなく、早期に現金化して相続人同士で分けてしまえば、相続発生の際も相続人同士でもめることなく相続が行われることになります。

いらない資産は早めに見切ることです。

牧野 知弘 オラガ総研 代表取締役

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