モーレツ会社員時代から一転、〈自由時間〉の過ごし方が分からず暇を持て余す60代…「定年退職後の生活」を豊かにするために大事なこと【心理学博士の助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月13日 6時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
数十年もの間サラリーマンとして働いたため、定年退職後の過ごし方が分からないという60代は多いでしょう。そこで本稿では、MP人間科学研究所で代表を務める心理学博士の榎本博明氏による著書『60歳からめきめき元気になる人「退職不安」を吹き飛ばす秘訣』(朝日新聞出版)から一部抜粋して、老後の生活を豊かにする方法について解説します。
自由にしていいと言われても、どう過ごしてよいかわからない
自由がほしいと言っていた人も、退職して自由になると、せっかく手に入れた自由をもてあまし、暇でしようがない、毎日をどう過ごしたらよいかわからないなどと言い出す。
強制されると抵抗を示す人も、自由にやるように言われると戸惑う。それはじつによくあることだ。
「言われた通りにやればいいんだ」などと言われるとモチベーションが下がってしまうと嘆く人に、「では、自分の思うように自由にやってくれればいい」と言うと、「いきなり自由にしろと言われても困る。どうすればいいのか教えてほしい」と言い出したりする。
それと同じで、やらなければならないこと、必要なことだけして暮らすなんて虚しいと言う人も、自由にしていいとなると、どうしたらよいのかわからなくなる。
とくに自分自身の欲求や気持ちを疎外して、組織の原理に則って行動するサラリーマン生活を長く続けてきた人は、自分自身の欲求や気持ちがつかめなくなっている。「自分が何をしたいのか、どんなふうに暮らしたいのかがわからない」「どうしたら自分が満足する生活になるのかわからない」というようなことになってしまう。
もっとも、職業生活の真っ只中で、そうした自分の欲求や気持ちを始終意識していたら仕事にならない。そういう自意識を遮断しないと有能な働き手でいられない。その意味でも、自分自身の欲求や気持ちを疎外するのは、組織に適応するための有効な戦略だったのである。
組織からあてがわれた役割に徹していれば、無事に職務を果たせるし、それに見合った報酬が与えられる。自分なりの達成感も得られる。
だが、「毎日毎日ノルマ達成に追い立てられる生活なんて虚しい」「これが自分が思い描いていた人生だっただろうか」「もっと自分が納得できる生き方があるのではないか」などと、日々の仕事生活に疑問を抱いたりしたら、職務に邁進することができなくなる。
ましてや、「うちの会社の商品は、ほんとうに人々の生活向上のためになっているのだろうか」「こんな営業活動をするよりも、もっと考えないといけないことがあるのではないか」などと考え込んでしまったら、組織にとって都合のいいコマとしての動きが鈍りかねない。
いわば組織への適応のために、ある面において思考停止に陥っていたのである。そんな状態が何十年も続いてきたわけだから、自分の欲求や気持ちがわからなくなっているのもやむを得ないことと言える。
過去に置き忘れてきたことはないか
組織への適応のために、ある面において思考停止に陥りがちということは、組織人間としてうまくやっていた人ほど、その状態に陥っていたことになる。組織生活への過剰適応によって、自分の欲求や気持ちが強く抑圧され、自分がわからなくなってしまうのである。
これからはもう稼ぎにこだわる必要もないし、組織に縛られることもない。そこで考えたいのは、稼ぐために犠牲にしてきたこと、断念したことは何かなかったかということである。
若い頃、やりたいことがあったけど、それで食っていくのは無理だと思って諦めた。興味があったし、やってみたいと思う趣味があったけど、仕事が忙しくてなかなか踏み出せなかった。
かつては打ち込んでいた趣味があったのだが、働き盛りになってからは仕事で忙しくなり、休日はぐったり疲れてしまい、趣味どころではなかった。そのときの仕事よりやりがいのある仕事への転職のチャンスがあったのだが、収入が減るため、家族のことを考えて断念した。
だれでもよく思い返してみれば、そのようなことが何か見つかるのではないか。
若い頃から走るのが好きで、定時に帰宅できたときは近くの川辺をよくジョギングしていたが、これからは通勤もないので、体力維持のために毎日ジョギングをして、できればマラソン大会とかにも出てみたいという60代半ばで退職したばかりの人。
器用なほうで何かを自分の手で作るのが好きなのだけど、現役の頃は忙しくて家で何かする余裕がなかったので、退職後は、自分で家の内壁を崩して塗り替えたり、リビングの床を張り直したり、台所を改装したりと、DIYに凝って充実した時間を過ごしているという60代半ばの人。
仕事人間として暮らしながらも趣味人の生活に憧れをもっていたので、退職を機にテレビの俳句講座を視聴し、拙い俳句を詠むのが楽しくなり、昔の俳人の足取りをたどる旅行をしながら俳句を詠んだりして趣味人の生活を楽しんでいるという60代後半の人。
学生時代は山歩きが好きでよく出かけていたのに、就職してからはそんな暇もなく、たまに暇があっても気力が湧かず、遠ざかっていたけど、退職後に久しぶりに山歩きに出かけてみたら、その魅力に取り憑かれ、今は毎週いろんな山に出かけているという60代後半の人。
元々旅行好きで、現役の頃から毎年何回か旅行し、退職してからは時間も日程も自由になるので、より頻繁に行くようになったが、いつまで元気に出かけられるかわからないので、これからはもっと頻繁に旅行に出かけることに決めたという70歳になったばかりの人。
いろんなことに興味をもち、やってみたいと思う性格だが、現役時代は忙しくて趣味に手を出す余裕がなく、淋しかったので、退職後は尺八教室や絵画教室をはじめ気になる習い事に片っ端から通い、暇をもてあますなどということはまったくなかったという80代の人。
何をして時間を潰したらよいかわからないという人は、こうした事例を参考に、稼ぎのためにできずにいたことを思い返してみてはどうだろうか。
榎本 博明 MP人間科学研究所 代表/心理学博士
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