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やっちまった…60歳の無職男性、資産家の90歳父から受け取った遺産1億円を「わずか2年で」失ったワケ【CFPの助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年3月29日 11時15分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

一代で財を成した場合、その大切な財産を守っていくためには、本人だけではなく家族の金融リテラシー向上が大切です。ある経営者一族を例に、牧野FP事務所の牧野寿和CFPが解説します。

スーパーで大成功!一代で財を成したCさん

一代で地元の大型スーパーを築き上げた創業者のCさんには、長男のAさん(60歳)と次男のBさん(57歳)の2人の息子がいます。

Aさんの幼児期、C夫婦は八百屋を営んでいました。Cさんはこの八百屋を、Aさんが10歳のころにはスーパーマーケットにして、さらに事業を発展させていったそうです。

両親で家業に専念していたこともあり、Aさんはかなり甘やかされたといいます。そんなAさん、どうも家業を継ぐ気にはなれず、大学卒業後は都内の中堅メーカーに就職しました。

しかし、プライドが高く周りと協調することができなかったAさんは、職を転々とすることに。結局、50歳のころに無職となって、両親の住む実家に戻ってきました。

スーパーを継いだ次男のBさん

一方、弟のBさんは、幼いころから両親の仕事に興味を持っていたそうです。大学では経営を学び、卒業後は大手スーパーに勤務。30歳で帰省し、Cさんの会社に就職しました。

その後は次期社長として、小売販売だけではなく、独自のブランドの開発や通販、地元企業に食材を配送するといった、多角経営で業績をのばすことに貢献。メインバンクからの助言を受けながら段階的に進めていた事業承継も順調に進み、Bさんは52歳から代表取締役に就任しています。

その後、Aさんを心配しながら母が、そのあとを追うように、1年前にはCさんも90歳で逝去されました。

父の遺産で「死ぬまで安泰だな」と楽観的なAさん

相続は、Cさんが残した遺言書の通りに、個人的な財産を兄弟でほぼ2等分しました。

Aさんは、アパート1棟(10室)と実家の土地建物、それに1億円の預貯金を、Bさんは、そのほかの不動産や株式、預貯金などを相続。

Aさんは「実家をもらえてアパートの収入もある。それに1億円もあれば死ぬまで心配いらないよな」と楽観的でした。

しかし、Aさんは「わずか2年」で1億円の遺産をすべて失ってしまいます。いったいなにがあったのでしょうか……。

Aさんが“一文無し”になったワケ

Aさんはまず、相続した1億円で、相続税や不動産のリフォーム代金を支払いました。ここまでは良かったのですが、残ったお金について「形見として、お金を物に変えよう」と、外車や高級腕時計を購入。あっという間に1億円が残り1,000万円を切ってしまったのです。

Aさんは、「やばい……このままじゃ遊んで暮らせない。お金を増やさなきゃ」と、簡単に儲かる方法はないかとインターネットで調べて、FX(外国為替証拠金取引)に目を付けました。

AさんなりにFXについて学び、サイトのシミュレーションで試してみると、簡単に勝てました。

「なんだ、簡単じゃないか。昔からやればなんでもできたからな」と自信満々のAさんでしたが、いざ始めてみると、結果は惨敗。何度か少額の勝ちはあったものの、損切のタイミングを逃して大金を失う……気がづけば「形見だから」と買った外車を手放すハメに。

「やっちまった……俺はなんてバカなことを」幸い借金を作ることはなかったものの、相続から2年後、Aさんは1億円をすべて失ったのでした。

そして兄から事情を聴いたBさんは、ここでお金を渡すだけだとまた同じことを繰り返すからと、以前からの知合いであった筆者に、兄が生涯自活した生活が送れるよう、助言を求めてきたのでした。

弟の正論に声を荒らげるAさんだったが…

筆者の事務所を訪れたBさんは、兄であるAさんへ諭すように話しはじめました。

「兄さんが相続したアパート、入居者探しに苦労していると聞いたけれど、いまのままの家賃じゃ厳しいと思うよ。アパート経営に本腰をいれないと、年金収入だけでは不動産の維持管理も難しいんじゃないかな。もうちょっと真面目に将来のことを考えようよ」

するとAさんは「大げさなことを言うな」と声を荒らげ、その後も兄弟で問答が続きました。そして、Aさんが筆者に、「FPさん、せっかくだけど俺にはお金の心配はいらないよ。きっとなんとかなるはずだから」といって、筆者と話すことなく、Aさんは帰っていかれました。

数日後…筆者のもとにかかってきた1本の電話

Aさんの本心

それから数日後、Aさんから筆者に神妙な声で電話がありました。まず先日の非礼を詫び、そして次のように本心を吐露してくれました。

「優秀な弟と違ってなんにも持っていない自分が無性に情けなくて、C家の長男という世間への見栄もあって相続したお金を散財した。虚勢を張れるお金も無くなったいま、ようやく冷静になれた気がする。弟の助けを借りずに自立した老後を送りたい。けれど、お金のことは正直よくわからないので、色々教えて欲しい」と。

そして電話の最後に「弟さえよければスーパーで働きたいので、弟ににそれとなく伝えて欲しい」と依頼を受けました。

兄の想いを知ったBさんの答え

最初はびっくりしたBさんでしたが、兄の再就職について、笑顔で快諾。

「兄は中高生のころから、事業のアイデアを父に話していたのですが、父には『お前に何がわかるか!』と怒鳴られていました。しかし私が入社してからは、兄はアイデアを私に話し、私が具体的な提案として父に話しました。父はその提案を実行することもあり、現在好調な宅配事業は兄の発案なんです。いつの間にか、親子3人の会社になっていたのですね」と話してくれました。

ただ一方で、「兄を社員にして厚生年金にも加入させて給与を支払うと、65歳から年金を受給する場合、年金+給与+家賃収入で、在職年金制度に引っかかりませんか?」と相談を受けました。

※老齢厚生年金の受給者が、60歳以降も厚生年金に加入して働くと、受給する老齢厚生年金の報酬比例部分(基本月額)と給与や賞与の額(総報酬月額相当額)の合計が、48万円以上(令和6年4月以降は50万円以上)になると、年金額が一部または全額支給停止になる制度。

もっとも、在職年金制度の対象は「年金受給額」と「給与所得」であり、家賃収入は不動産所得に分類されるため、心配無用です。

資産防衛は“家族みんなの”金融リテラシー向上が大切

Aさんのように、お金の知識が乏しい状態で大金を手にした結果、短期間でその大金を失ってしまうというケースは、実は珍しくありません。むしろ、借金もなく、家族関係が崩壊しなかったAさんは、幸運なほうかもしれません。

資産を末永く守っていくためには、本人だけでなく、配偶者や子、孫と、家族みんなの金融リテラシー向上が大切です。「子や孫がきちんと理解できるか不安」という人は、FPや税理士など専門家を交えながら、お金のことについて家族でしっかり話しておくことをおすすめします。

牧野 寿和

牧野FP事務所合同会社

代表社員

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