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【西洋史の裏側】ポルトガル人女性「紅茶ください」⇒「ビールだこれ」…この衝撃体験が〈紅茶大国・イギリス〉を生んだ

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年3月30日 8時0分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

「イギリス人は高確率で紅茶が大好き」。そう聞いて驚く人はあまりいないでしょう。しかし、改めて考えると不思議なことなのです。紅茶はいかにしてイギリスの国民的飲料となり、アフタヌーンティーという独特の習慣を生み出すに至ったのでしょうか? 歴史系YouTuber・まりんぬ氏の著書『思わず絶望する!? 知れば知るほど怖い西洋史の裏側』(佐藤幸夫氏監修、KADOKAWA)より一部を抜粋し、見ていきましょう。

紅茶大国・イギリスだが、実は紅茶は「輸入品」

あなたはイギリス人にどんな印象を持っていますか? 紳士的でいつも紅茶を飲んでいる、まどろっこしい英語を話す、そしてアフタヌーンティーを楽しんでいる…など、いろいろなイメージが浮かぶと思います。確かに、イギリス在住の筆者の周りにいるイギリス人たちは、高確率で紅茶が大好きです。家を訪問すれば「ティー?」おしゃべりしようとなったら「ティー?」と、事あるごとに紅茶を飲むか尋ねられます。スーパーマーケットには巨大な紅茶のコーナーがあり、日常生活にお茶は欠かせないものになっています。また、イギリスで愛されている優雅なアフタヌーンティーは、1881年に発表された小説『ある婦人の肖像』(著:ヘンリー・ジェイムズ)で「人生において、アフタヌーンティーに捧げる時間ほど楽しい時間はない」と表現されました。

しかしながら紅茶はこの国で作られているわけではなく、実は輸入品なのです。ではなぜイギリスで紅茶が国民的な飲み物になったのでしょうか? またアフタヌーンティーはいつから楽しまれるようになったのでしょうか? これらの謎めいた習慣の起源には興味深いストーリーがあります。イギリスがどのように紅茶の愛好国となり、アフタヌーンティーが定着したのかを探ってみましょう。

火付け役は“あるポルトガル人女性”…紅茶はこうして国民的飲料になった 

実は、紅茶は世界では何世紀にもわたって飲まれていましたが、イギリスに紅茶が伝わったのはそのずっと後でした。お茶は中国で生まれ、オランダ商人たちがそれをヨーロッパに運び広めました。その後1650年代に、ロンドンのコーヒーハウスでも紅茶が提供されましたが「なんか飲んだことない飲み物だな…」と思われたのか結局ブームにはなりませんでした。ちなみにコーヒーハウスとはかつて存在した男性の社交場で、店によって詩人や作家、商人など特定の職業の客たちで賑わっていました。1650年にオクスフォード、1652年にロンドンで開業し、初期はコーヒーやチョコレート飲料を楽しみながらビジネスやゴシップが交わされる楽しい場所でしたが、やがて紅茶が流行し、それに伴い18世紀頃から大衆的な場所となって酒場化し、次第に衰退していきました。

紅茶が大流行したのは、ある一人のポルトガル人女性がきっかけでした。1662年、国王チャールズ2世[1630〜1685]との結婚を控えていたポルトガルの王女キャサリン・オブ・ブラガンザ[1638〜1705]は、イギリスに到着するとすぐに「紅茶を一杯いただけるかしら?」と尋ねました。しかし当時、紅茶はまだイギリスで一般的な飲み物ではなく、準備されていませんでした。代わりに、彼女の前にはビールが出されました。

この出来事はキャサリンにとって少々ショッキングだったかもしれません。彼女は自国の習慣でもあった紅茶を愛していたので、即座にイギリスに紅茶の文化を持ち込むことを決意しました。キャサリンはポルトガルから紅茶を取り寄せ、自宅で紅茶を楽しみ、さらには宮廷での公式な行事にも紅茶を取り入れました。王妃の嗜む新しい飲み物ということで、紅茶は社交界の富裕層の間で一気に広まり流行しました。

しかし、紅茶は驚異の119%もの税金がかけられた高級品でした。というのも、紅茶が酒類よりも人気の飲み物になってしまい、アルコールの税収が下がるのではないかと心配した政府が、1676年に重税を課したのです。「紅茶が欲しいけれど高すぎて買えない」というジレンマに直面した人々は、密輸するようになりました。結果として、密輸された紅茶の方が正規で輸入された紅茶よりも広く飲まれるようになってしまいました。上流階級は上質な茶葉、下層階級は手軽な茶葉と、種類は違えど誰もが紅茶を楽しんでいることを受け、1784年に議会は紅茶税を12.5%に引き下げました。

なぜ夕方にお茶会を…?謎の習慣「アフタヌーンティー」が生まれたワケ

さて、アフタヌーンティーは美味しい紅茶に、サンドイッチ、濃厚なクロテッドクリームとジャムが添えられたスコーン、そして甘いケーキが段になった食器で運ばれてくる、イギリスを代表する食事です。ロンドンを訪れたら、一度は味わっておきたい逸品です。

アフタヌーンティーの起源は1840年頃に遡ります。ヴィクトリア女王の侍女であるベッドフォード侯爵夫人が「なんだか17時ぐらいにいつも落ち込んでしまうのよ…」と言い出しました。その理由は…お腹が空いていたからでした! 当時は正午にランチを食べ、夕飯は21時頃になるのが一般的だったのです。

彼女はこの問題を改善すべく、午後に紅茶、パンとバター、そしてケーキを自分の部屋に持ってくるように要求しました。当時の上流階級の人々は全員お腹が空いていたのでしょう。この習慣はすぐさま広がり、その後中流階級にも受け入れられ、ついにはイギリス全土に広がっていきました。人々は、アフタヌーンティーを庭で開催したり、屋敷の全員で楽しむようになったのでした。

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【まりんぬ'sコメント】

現代のロンドンでは有名な高級ホテルや、博物館、小さなカフェなどさまざまな場所でアフタヌーンティーが楽しめます。ただしお腹いっぱいになるので、ランチは抜いていきましょう!

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【著者】まりんぬ  歴史系YouTuber。イギリス在住。イギリスを中心に主にヨーロッパのニッチな歴史ネタを紹介し、支持を集めている。動画は著者自らが出演、ストーリーテラーとなる形式で、中世~近代の王家・貴族から庶民の話まで、多ジャンルにわたる。ゾクッとするような内容もユーモラスかつ丁寧に解説し、女性を中心とした歴史ファンに人気。チャンネル登録者数30.1万人(2024年3月時点)。

【監修】佐藤 幸夫  代々木ゼミナール世界史講師。エジプト在住。世界史ツアーを主催しながら、年3回帰国して、大学受験の世界史の映像授業を収録している。世界102ヵ国・300以上の世界遺産を訪れた経験をスパイスに、物語的な熱く楽しく面白い映像講義を展開する。2018年からは「大人のための旅する世界史」と題して、社会人向けの世界史学び直しツアーを開催。また、オンラインセミナーとして「旅する世界史」講座を実施、世界史×旅の面白さを広げている。著書に『人生を彩る教養が身につく 旅する世界史』(KADOKAWA)などがある。

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