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年金〈月20万円〉もらえるはずが…65歳夫の急逝で受給額が激減。「もう、生きていけない」憔悴する59歳妻を救った、年金事務所職員のひと言【FPが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月1日 11時15分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

夫婦で月20万円の年金で質素ながらもささやかな老後生活を送っていた柳沢夫婦(仮名)。しかし、夫に起こった「まさかの出来事」により、妻がひとりのこされてしまいました。夫の逝去にともない、受け取ることのできる年金が大きく減少することを知った妻は、ひどく憔悴。妻の美帆さんに解決策はあるのでしょうか。FPの辻本剛士氏が、事例をもとに解説します。

幸せな老後生活を送っていた夫婦に起こった「まさかの出来事」

柳沢雅史さん(仮名・65歳)は、妻の美帆さん(仮名・59歳)と2人で暮らしています。

雅史さんは長年、中小企業の営業職として全国を飛び回る生活を送り、定年時には退職金として1,000万円を受け取りました。

一方の美帆さんは専業主婦として家庭を守ってきましたが、マイペースで金銭感覚が少し緩い性格であったため、夫が定年を迎えるまでにできた貯蓄額は300万円ほど。夫婦の総資産額は、約1,300万円あります。

現役時代は、転勤が多かったことから雅史さんの社宅に美帆さんがついていく形でしたが、定年後は家賃9万円の賃貸住宅に引っ越し、現在もそこで2人暮らしをしています。

年金を受け取り始めて約1年が経過。受給額は月20万円です。現役時代の収入よりは少ないものの、2人は仲が良く、夫婦で散歩や町内の集まりに出かけるなど、質素ながらも安定したセカンドライフを過ごしていました。また、今後についても「年に1度は旅行に行きたいね」と計画を立てていたところでした。しかし……。

夫が脳梗塞で突然の逝去…のこされた妻の「絶望」 

そんなある日のことです。雅史さんが脳梗塞で倒れ、還らぬ人となりました。前の日まで元気だった雅史さんの突然の逝去は、美帆さんにとって完全に予想外の出来事です。心身ともに憔悴した美帆さんでしたが、家族の助けもありなんとか葬儀や相続などの手続きを終えました。

夫の死後、妻が受け取れる年金額は大幅に減額

少しして、家計を支えていた夫を失ったことで今後の生活が心配になった美帆さんは、詳しい年金受給額について自分なりに調べてみることにしました。

まず、いままで受け取っていた年金月20万円の内訳は、下記のとおりです。

老齢基礎年金……月額6万6,250円(年間79万5,000円)

老齢厚生年金……月額11万7,000円(年間140万円)

加給年金……月額1万9,000円(年間22万8,700円)

合計……月額20万2,250円

しかし、調べてみたところ、美帆さんが今後受け取ることになる遺族厚生年金は夫が生前受け取っていた老齢厚生年金140万円の3/4になるため、105万円(月額8万7,500円)となるようです。

さらに、遺族基礎年金は「18歳未満の子どもがいること」が条件ですが、柳沢家はこれに当てはまらないため支給対象外となり、ゼロ円であることが判明しました。

これはつまり、これまで月20万円で暮らしていたところ、月わずか8万7,500円で生活しなければならないということです。「愛する夫を失ったうえ、これっぽっちの金額しか受け取れないなんて。もう、生きていけない……」美帆さんはひどく落ち込んでしまいました。

“美帆さんは、「中高齢寡婦加算」の対象ですよ”

その後、友人に相談した美帆さんは、「年金事務所に相談してみたら?」とアドバイスを受けました。

そこで、早速年金事務所に足を運ぶと、40代くらいで親しみやすい雰囲気の男性職員が出迎えてくれました。

美帆さんは勇気を出して、「今後の年金受給額が夫の遺族厚生年金105万円のみでは生活が成り立たないのですが、どうにかなりませんか」と打ち明け、職員に助けを求めます。

すると、担当職員は「美帆さんは、『中高齢寡婦加算』の対象ですよ」と下記のように説明してくれました。

「中高齢寡婦加算」とは?

職員「『中高齢寡婦加算』とは、40歳以上65歳未満の夫に生計を維持されていた妻に支給される年金のことです。今回のケースですと雅史さんも20年以上厚生年金への加入期間があるため、中高齢寡婦加算の支給対象となります」。

「そのため、遺族厚生年金105万円に加えて、美帆さんには年額59万6,300円(2023年度)が65歳まで支給されますよ」。

この言葉を聞いて、美帆さんは大きく安堵しました。毎月8万7,500円で生活しなければならないと思い込んでいましたが、この中高齢寡婦加算が支給されることにより、生活費(年金受給額)は約13万7,000円となることがわかったのです。

このままでは22年後に「老後破産」…FPが妻に提示した「解決策」

とはいえ、美帆さんのこれまでの生活水準を鑑みると、年金額約13万7,000円での暮らしもなかなか難しいのが正直なところです。美帆さんは次に、知り合いに紹介してもらったFPのもとへ相談に訪れました。

自身の生活費が毎月どれだけかかっているのか把握していなかった美帆さんは、まずFPとともに現在の支出を洗い出してみました。すると、支出は毎月18万円であることが判明。

このままでは毎月4~5万円の赤字が発生し、貯金していた1,300万円は22年後、美帆さんが81歳のときに枯渇してしまうことになります。

この老後破産危機を避けるため、担当FPは「徹底的に固定費を見直し、それでも不足する部分に関しては労働収入でカバーしてみてはどうでしょうか」と提案しました。

固定費としてはまず、現在の家賃9万円から手をつけます。美帆さんは高齢での1人暮らしになるため、借りられる物件が多くありません。しかし、URの賃貸住宅といった高齢でも借りやすいところを探すよう勧めました。

※ UR賃貸住宅……UR都市機構(都市再生機構)が管理している賃貸住宅のこと。礼金・仲介手数料・更新料がなく、保証人も不要であることが特徴。

後日、美帆さんは家賃6万円の住宅を借りられることになり、3万円の固定費をカットできました。その他、携帯電話やインターネットなどにかかる通信費なども少しずつ見直し、追加で1万円の節約に成功。支出は18万円から約14万円になり、赤字分はごくわずかになりました。

働くことが活力に…美帆さんが企む「今後の夢」

現在、美帆さんは郊外にある家賃6万円1DKの物件に引っ越し、現在はスーパーマーケットで月に10日ほどパート勤務し、月約3万円の労働収入を得ています。FPに相談し、赤字分をさらに減らすため、心身の様子をみながら可能な限り働くことにしたのです。

雅史さんが亡くなり寂しい気持ちが続いていましたが、仕事を通じて新たな人々との出会いがあり、美帆さんの日常に少しずつですが明るさと活力が戻ってきました。

年金事務所とFPに相談した結果、美帆さんは自身の年金と遺族年金、そしてパート収入で毎月の生活をやりくりし、資産を目減りさせることなく心穏やかに生活ができています。

「いまは元気に生活ができていますが、将来介護が必要になったときは老人ホームに住もうと計画しているんです。そのためにも、貯金を増やしておかなくちゃいけませんね」と微笑みました。

美帆さんが行っているように、今後の医療費増加や老人ホームへの移住を見越して、貯金を減らさないようにすることが重要です。

辻本 剛士 ファイナンシャルプランナー 神戸・辻本FP合同会社 代表

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