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横柄な弟から渡された大地主の父の遺産「2,000万円ぽっち」→「明らかに足りない」…母と姉で企てた、遺言で明かされる〈強烈な仕返し〉【元メガ・大手地銀の銀行員が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月12日 10時15分

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(※画像はイメージです/PIXTA)

きょうだいがいる場合の相続対策は、財産分割に向けてよく話し合うことが必要です。言葉に出さないだけで、内心の感情はわからないものです。本記事では、母親の相続の準備を進める渋谷家(仮名)の事例とともに、相続人が複数いる場合の相続対策について、ティー・コンサル株式会社代表取締役でメガバンク・大手地銀出身の不動産鑑定士である小俣年穂氏が解説します。

姉がボケていく母に付け込んでいる?50歳弟の相続対策

渋谷義博(仮名)は地元市役所で勤務する公務員である。5年前に父親が闘病の末に死去し、税理士の助言もあり配偶者控除を勘案して母親と2人で不動産を承継した。義博には姉がいるが、父が加入していた保険金の2,000万円を姉が相続する形で遺産分割協議を行った。

姉は当時シングルマザーとして、一人娘を養育しており、学費や生活費として使えるように金融資産を多めに渡すことにした。

不動産については義博単独所有と、母親単独所有、義博と母親の共有の形で相続をした。父親からも生前「渋谷家」の長男として、しっかりやっていくようにと度々言い聞かせられており、父の遺志にも即した形である。

父の相続から5年経過し母親は80歳になった。最近では母親の気持ち的な落ち込みがみられ、物忘れも進んでいるように感じている。たまに外出をしているようで、気分転換はしているようだが、いつ認知症と診断されるかわからない。

また母親の年齢のことを考えても急速に衰えていく可能性もあることから急ぎ対策を進めていく必要性を感じていた。

渋谷家は地元を拠点とする地方銀行と古くから融資や預金の取引があり、年始やお盆の時期などは支店長と担当が挨拶に来ている。銀行からしてもいわゆる「重点先」の位置づけであり、他行からの被肩代わりを予防する観点からも支店長自ら定期的に訪問を行っている。

前回、義博のもとへ訪れ面談した際には、母親の相続について対応を進めていきたいとの話を聞き、早速行内でも優秀であると評判の提携先の専門家らが招聘された。その翌週には、義博宅にて当該専門家らを含めた相続対策に向けた協議を行った。

義博の意向に従って定めた承継の方針としては、まず母親の認知症対策として義博を受託者とした家族信託の組成および義博氏を後見人とする任意後見制度の準備を行うこと。

そのほか母親と義博氏の長男との養子縁組、母親単独所有の古いアパートの建替え、公正証書遺言の作成を行う計画を立案された。これらのすべてが完了すれば、当面は納税資金の心配も不要であると目論んでいた。

義博は策定した計画に即して実行フェーズに移した。ところが、母親の口座を確認すると預金残高が大きく減っていることに気が付いた。母親に、なににお金を使っているのか問いただしたところ孫(姉の娘)の学費や予備校代、生活費用として援助をしているとのことであった。

姉は、2年前に姉の大学時代の同級生と再婚をしており、時系列で口座の流れを追うと結婚を機に母親の口座からの資金流出が増えているようであった。父親の相続時にまとまったお金を渡したはずなのに、すでに使い切ってしまったのであろうか。

姉は母の認知能力低下に付け込んでいるとしか思えず、また状況から考えても再婚した夫の入れ知恵であるに違いないと考え、渋谷家を守る意味でも早急に対策を進めることにした。支店長にも「急ぎ相続対策を進めたい」と連絡を入れた。

「面倒を看たのは私…」身勝手な弟に悩む、55歳姉の相続対策

石川由紀(仮名)は、父の闘病時において献身的なサポートを行った。3年前(現在からは8年前)に夫の問題で離婚し心身ともに疲れ果てていた際に、父親が支えてくれたことに対する恩返しと考えていた。

父親は小さいころから由紀をとても可愛がっていた。父は結婚に反対していたが、押し切る形で入籍し子供も誕生した。結果としては父の見立てどおりとなってしまったが、離婚した際には理解を示してく暖かく迎え入れてくれた。

父の病気が見つかってからの1年半は、娘が学校に行っているあいだなど時間があれば看病に出向き、父の快復を必死でサポートした。しかし、願いも虚しく父親は力尽き5年前に相続が発生した。

相続が発生すると弟が我が物顔で資産の配分を決めていった。当時、取引銀行の支店長や担当が義博のところに足しげく通っていたようであり、私と会っても軽く会釈するのみである一方で、弟に対しては平身低頭し、まるで将軍かお殿様に謁見するかのようで明確な態度の差を感じた。

おそらく、銀行も承継にあたって弟に対してはいろいろと助言をしていたと思う。

また、父親の闘病時においても弟や弟の妻はほとんど来ることがなかった。何度か「見舞いに行ったら」と声をかけたが、「俺も妻も仕事などで忙しいから無理だ」の一点張りであり、さらに「姉は時間が自由でいいよな」「渋谷家のことを考えるのは俺だけで、姉は気楽でいいよ」など身勝手な発言も目立った。

由紀は相続に対する知識もなく、弟が主体となって決めていくことに特段の疑問は感じなかったが、弟が承継した資産と比べると相続した2,000万円は明らかに少ないと感じていたし、弟らは親のためにはなにもしないくせに明らかに自分を見下すような態度にも不満を募らせていた。

父の死後、日常生活を取り戻し娘も高校受験を終え希望する私立高校に進学したころ、現夫と同窓会で再会した。

その後、何度か個別でも食事をするようになり、父親の相続のときの話も相談してみた。現夫は行政書士の資格を有しており、相続業務にも多く携わっていることからいろいろと教えてもらっていた。由紀自身も本を購入して勉強するなど、相続の仕組みや税務に対する知識を深めていた。

最近の弟の行動をみると、母の相続において自分に有利なように準備していこうという魂胆が見え見えである。父の相続の際には知識が乏しく、弟にとっていい形としてしまったが母の相続の際には一歩も譲るつもりはない。

最近では、母親も80代となり心身が弱ってきているが結局のところ母の通院や身の回りの世話などは、父のときと変わらずにすべてこちらが看ている。現夫も、協力的であり時間があるときは車を出して母の送迎なども対応してくれている。

一方、弟夫婦は我関せずであり協力を仰いでも「忙しい」というだけで感謝の言葉もない。

母からは、日ごろの私たちの対応について少しでも報いたいと考えてくれており、何度か断ったが、最終的には娘の学費など援助してもらうことにした。

「息子夫婦には承継させたくない…」80歳母の相続対策

渋谷千江子(仮名)は今年80歳を迎えた。5年前に夫を病気で亡くし、大きなショックを受けたが娘が献身的なサポートをしてくれたおかげで、なんとか立ち直ることができた。

息子とは同居しているものの、夫婦ともに働きに出ており、孫がまだ小さいころはこちらで面倒を見てきた。息子夫婦は多少の買い物などでは協力してくれるが、あまり積極的ではなくむしろ近くに住む娘がいろいろな面で支えてくれている。

娘から再婚すると聞いた際には、娘の年齢的にも再婚することはないと思っていたので大変驚いたが、結婚した相手が娘の大学時代に交際していた相手(栗山氏:仮名)であり、その当時に何度か会ったことがあったためさらに驚いた。

栗山氏の話を聞くと、大学卒業後一般の企業に就職したが、その後一念発起し資格を取得したとのことであった。仕事に邁進するあまり婚期を逃してしまい、自らも「この年で結婚することになるとは思いませんでした」と当時と変わらない好印象のままであった。

また、栗山氏はもともと独身でいるつもりでいたようであり、将来必要となる資金などは計画的に貯金をしてきたそうだ。

最近、息子がしきりに銀行の支店長らと自宅で打合せをしている。夫の相続のときも、息子主体で取り決めをしており「お母さんはハンコとサインだけすればよい」と強引に押し切られてしまった。

最近も、孫(息子の長男)との養子縁組をするようにとのことで書類にサインをさせようとしたが、調子が悪いように装いサインはしなかった。

正直にいえば、息子とその妻に対してはあまりよく思っていない。昔から、自分たちが主体であり親はそれをサポートするものだとの態度が明らかである。

一生懸命に孫の面倒を見ているときもそれが「やって当たり前」かのようであり、感謝の言葉を伝えられることもなかった。取引銀行も息子の顔色ばかりを伺っており私や娘の意向については聞くそぶりも見られない。

最近では娘の献身的なサポートに報いるために資金面で援助を行っているが、取引銀行の口座から出金を行っていると下手すれば息子にも筒抜けになりかねないと思い、不動産の賃料入金口座はそのまま残したが、それ以外のほかの口座についてはすべて解約し別の銀行へ預け替えた。

銀行が慌てて連絡をしてきたが「こちらの都合なので」と一方的に電話を切った。

先日、息子が残高の減少に気付いたようで理由を聞いてきたが、素直に娘のために使っていると伝えた。「私はあなたより娘のほうが大切だ」と明確に伝えるために。また、可能であれば生前に自分のお金はすべて娘に渡していきたい。

いまの気持ちとしては、息子と共有になっている不動産は息子に承継させようと思うが、持っている預金と千江子の単独所有の不動産は娘に承継させるつもりである。

最近では、弁護士事務所に通い公正証書遺言の準備を進めている。意思能力の点で、後々息子から異議を申し立てられる可能性にも備え、医師から意思能力に問題がない旨の証明書(診断書)を受領した。息子が自分のことを一方的に認知症と決めつけてきているためだ。

来週には弁護士と公証役場に行く予定であり、これで安心して娘に承継することができる。

「付言」には娘の献身的なサポートに対する感謝の気持ちをきちんと残した。相続の内容については「あくまでも自分の遺志」であり、娘にも息子にも内緒で進めていたものであり、決してどちらかの肩を持ったものではない、ということを明確にしておいた。

まとめ:相手が悪いとは限らない!家族と話し合って決めよう

・相続対策は自分がすべてを決めるものではなく、家族や親族の意見も聞くことが必要であること ・言葉に出さないだけで、内心「負の感情」を抱いていることもあること ・「男性」であるから当然に承継する(あるいは「承継できる」)、というものではないこと ・50代の承継においては仕事が繁忙であり、細かい点(特に利害関係者の心境)で疎かになりがちであること ・自分にとって不利益な点については、すべて相手に問題があるとの先入観をもってしまうこと ・特に後継者や当主と目されると周囲の関係先(銀行や不動産業者など)が自分のことばかりを立てるようになり、謙虚さを失いかねないこと ・円滑に行うためには細部にも意識をしながら謙虚な態度で俯瞰して承継の対応を進めること

以上のポイントを押さえることが重要である。

小俣 年穂

ティー・コンサル株式会社

代表取締役

<保有資格>

不動産鑑定士

一級ファイナンシャル・プランニング技能士

宅地建物取引士

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