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新NISAスタートから3カ月以上も…いまなお「日本人の金融リテラシー」が十分とはいえない、哀し過ぎる事情【FPが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月11日 11時15分

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(画像はイメージです/PIXTA)

新NISAがスタートし、日本人にとって投資はいよいよ身近なものとなりました。その一方で、とても十分とはいえないのが、金融リテラシー教育です。なぜこのような状況にあるのでしょうか。FP資格も持つ公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。

日本の「金融教育」の進捗、正直いまひとつな状況…ナゼ?

資産所得倍増プランの一環として、2024年1月から新NISAがスタートしました。これを機会に投資デビューをされたという読者の方も多いのではないでしょうか。一方、2022年の4月からはすでに、高校で金融経済教育が義務化され、資産形成の授業が行われています。

新しいNISAが始まり、金融機関の顧客獲得競争が激しさを増す一方ですが、日本人の金融リテラシーの改善を後押しするはずの金融教育の進捗は、正直いまひとつだと感じています。筆者は仕事柄、多くの方の投資にまつわる相談に乗っていますが、現状において、若い世代の方々に資産運用の理解が十分進んでいるとは実感できません。

理由のひとつには、教育をリードする「金融経済教育推進機構」の稼働が遅れていたこともあったのではないかと思われます。

令和6年4月5日、正式に設立となったこの組織は(『金融経済教育推進機構の設立について』参照)、日銀の金融広報中央委員会が母体となって設立され、官民両方から理事や運営委員の人材を募り、金融教育の中心を担います。金融広報中央委員会がこれまで蓄積してきた教育コンテンツを活用し、新NISAやiDeCoなどについて、投資助言業の要件を緩和したアドバイザーの資格認定と教育・研修が行われます。

しかしながら、金融経済教育推進機構は、金融機関に中立の立場で適切な指導をしてくれるはずですが、アドバイザーに「どの商品を買ったらいいですか?」と質問しても、正しい答えは得にくいのではないかと、筆者は思っています。なぜなら、金融経済教育推進機構の理事や運営委員には、銀行や証券会社から天下りしてきたOBや業界団体の幹部などが参加するからです。

金融庁は、顧客本位の業務運営、つまり「フィデューシャリー・デューティー」を最優先する、といっている以上、金融庁が責任を持って投資助言業やアドバイザーを教育するのが理想ですが、多忙な金融庁はとてもそこまで手が回らないのが実情ではないかと思います。

高等学校で金融経済教育を行うのは、民間企業のサラリーマン!?

では、高等学校での金融経済教育はだれが行うことになるのでしょうか? 恐らく、金融経済教育に十分な知識を持つ高校の先生はほとんどいないでしょう。そのため、「お金の専門家」として、銀行員や証券営業マンが、全国の高等学校に大量に派遣されるのではないかと推察されます。

しかし、銀行員や証券営業マンはあくまでも〈サラリーマン〉です。そのため、顧客の利益ではなく、勤務先の会社の収益が第一になります。「フィデューシャリー・デューティー」が最優先事項ではなくなってしまう可能性が高いでしょう。

金融経済教育推進機構の理念に不誠実だと思えるかもしれませんが、会社員が会社のために働くのは当然です。大手メガバンクに勤務した経験がある筆者にはよくわかります。当時の筆者が彼らと同じ立場に立ったなら、きっと証券口座は関連する証券会社の利用を勧めたでしょうし、「その銀行の商品であるファンドラップを買って、投資のプロに運用を任せましょう」と、自信満々に教えたでしょう。

そして、富裕層相手の講義では、自身を〈資産運用のプロ〉だと強調したうえで「これからはGAFAを中心としたグローバルなアクティブ運用のファンドを買うべきです。私が教えます」と、セールストークをしたかもしれません。

信頼して招いた講師が、真面目な顔で上記のような講義をしたら、一般の方は簡単に信じてしまうはず。そう考えると、学校が企業の営業現場になりかねません。

では、正しい金融経済教育とはどのようなものなのでしょうか?

どういった商品がよく、どういった商品が悪いのか、区別できなければなりませんから、まずは金融の基礎知識を理解しておくことが必要です。たとえば、複利や割引現在価値の計算は、最初に覚えるべきでしょう。これがわからなければ、儲かる商品か損する商品かが、判断ができないからです。むずかしそうだと思われるかもしれませんが、基本は掛け算と割り算だけで計算ができます。

金融教育はまず「個人のための資産形成・運用方法」を確立し、体系化することが必要でしょう。今後の金融経済教育推進機構の教育に期待したいところです。

岸田 康雄 公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)

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