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今年の夏こそ涼しく過ごす…朗報!窓の断熱改修の大型補助金「先進的窓リノベ2024事業」募集開始

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月26日 8時15分

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写真提供:THIS ONE

知られざる「日本の住宅とその性能」について焦点をあてる本連載。今回のテーマは「窓の断熱改修の大型補助金」。昨年、話題になった補助金制度「先進的窓リノベ事業」が、予算拡大で募集を開始しました。軽い費用負担で、住宅性能を向上させるチャンスです。

今年の夏は涼しく、来年の冬は暖かく過ごすチャンス到来!

寒い冬が終わり、ホッとしている方も多いかと思いますが、今度は暑い夏がすぐにやってきます。もっと快適な住まいにできたなら……そう思っている方に朗報です。窓の断熱リノベをとてもリーズナブルに行うことができるチャンスが再到来です。

冬暖かく、夏涼しい住まいのためには、窓の断熱性能が重要ですが、日本の窓の断熱性能は先進国の中でも突出して劣っており、健康・快適・省エネな暮らしの大きな阻害要因となっています(関連記事:『日本の住宅「最高等級の窓」でも「海外では最低基準」という衝撃の事実』)。特に、断熱性能の低い1枚ガラスのアルミサッシの窓を持つ既存住宅の場合、冬には窓から多くの熱が逃げ、夏には多くの熱が流入してしまいます。そのような窓に対して断熱改修を行うだけでも、熱の出入りを少なくし、空調によるエネルギー消費量の削減に繋がります。また、冬には結露も大幅に少なくなるので、窓を拭く手間が減るだけでなく、健康・快適な暮らしや、家の耐久性の向上にも寄与します(関連記事:『我が家は寒すぎる!が、建て直すほどお金はない…住まいの悩み、専門家によるベストアンサー』)。

国は、2050年までにカーボンニュートラル、2030年度の温室効果ガス排出量を国全体で2013年度比で46%削減することを国際的に約束しています。特に家庭部門については、2030年度の排出量を2013年度比で、66%削減という高い目標を掲げています。その目標を達成するためには、住宅の省エネ性能の向上に係る法制度の改正が立て続けに行われています。住宅の省エネ性能の向上に関しては、新築住宅だけでなく既存住宅における対策も重要です。

そのような背景の中、既存住宅の省エネ性能向上を目的とし「先進的窓リノベ事業」という大型の補助制度が創設されました。この制度は、高断熱の窓等の改修工事に対して、定額の補助金が交付されるものです。

先進的窓リノベ事業は、1,000億円という予算の規模や、補助率1/2相当等の定額補助という内容から、リフォーム業界内ではかなり話題を集めました。そして今年度もその後継事業である「先進的窓リノベ2024事業」について、さらに予算規模が拡大して、募集が開始されています。補助率ではなく、窓の断熱性能や工事方法、窓サイズによる定額補助の制度で、実質的な補助率がとても高い制度であるため、とても軽い費用負担で、住まいの断熱性能向上を図ることができるのです。

今年はさらに「予算規模」が拡大!

この制度を担当する環境省の地球温暖化対策事業室の加藤啓司係長によると、昨年度の予算総額は、合計1,000億円で、戸建住宅は900億円、集合住宅は100億円と、戸建と集合住宅で予算枠が分けられていました。そして、最終的な予算の消化率は、戸建住宅で約90%、集合住宅で約98%となり、当初の想定に近い成果を挙げることができたと考えている、とのことです。

昨年度は、補助額の高さが注目を集め、受付開始直後から申請が殺到したため、内窓の受注数が急激な需要に対してサッシメーカーの供給能力を上回り、内窓の納期が通常時に比べて伸びる時期もありました。また、工務店やリフォーム会社においては、予算の早期消化を予想し、年度途中で窓リノベ事業の活用を前提としたリフォーム工事の受注を控える動きも見られました。そのため、最終的には予算のすべてが消化されないという結果になった模様です。

加藤係長によると、今年度は、大手サッシメーカーも供給体制を強化していると聞いており、予算額もが1,350億円と増額されたことから、積極的に事業の活用を検討してほしいとのことです。さらに今年度の大きな制度の変更点として、玄関扉の断熱改修も条件付きで補助対象になっています。

玄関・窓の「断熱性能向上」は健康にも貢献

現在の住まいの玄関周辺が寒いという家は多いと思います。これは玄関扉の断熱性能の低さが大きな要因の一つです。特に玄関周辺にトイレや脱衣室・浴室がある間取りの家の場合、入浴やトイレに行く際に、寒い玄関周辺を通らなければならず、脱衣室・浴室やトイレもとても寒い家が多いのではないかと思います。玄関扉の断熱改修により、それらの空間の室温が上がり、ヒートショックリスクを大幅に軽減することができます。(関連記事:『日本の家「寒すぎる脱衣所」…年間“約1.9万人”が亡くなる深刻』)。消費者庁によると、ヒートショックにより、実に年間19,000人もの方々が亡くなっているそうです。これは交通事故死者数の7倍以上にも上る人数です。ぜひ、健康なシニアライフのために、窓だけではなく、玄関扉もセットで改修することをお勧めします。

また、結露が生じると、そこにカビが発生し、カビはダニの餌になるため、結露の多い家は、どうしてもカビ・ダニがアレルゲンになり、喘息やアレルギーを引き起こすリスクが高まります。特に小さいお子さんがいる家は、極力結露が生じない家にしたいところです(関連記事:『住まいの断熱性能と「アレルギー・喘息」の関係性【近畿大学教授が解説】』)。

補助対象となる「窓改修」は4種類

先進的窓リノベ2024事業では、昨年度に引き続き図に示す4種類の窓改修が補助対象になります。既存の外窓の内窓を設置する内窓設置は、最も工事が簡単で、費用対効果が高いと言われています。内窓設置の場合は既存の外窓と内窓の2枚高い断熱性能を確保するため、窓を開ける際には、2枚開けなければならないので、少し不便になります。

頻繁に開け閉めが必要な窓の場合は、外窓交換(カバー工法)をお勧めします。窓の枠は、壁の中にも入っていますから、枠そのものを交換する場合、壁や床の補修が必要になり、少し大掛かりになります。それに対してカバー工法は、壁中の枠を残してカットして、既存の枠新しい枠をかぶせる工法です。既存の窓よりも窓のサイズが少し小さくなってしまいますが、高性能な樹脂サッシに改修することにより、1枚で高い断熱性能を確保することができます。

図の一番右の外窓交換(はつり工法)は、壁の中の既存の窓枠も取り除き、新しい窓に交換する方法です。窓だけの断熱改修の場合はコストが高くなるのであまりお勧めしません。ただ、同時に床・壁・天井等の断熱も行うスケルトンリノベに近い断熱リノベを行うのであれば、この方法も有力な選択肢になります。

とても高い実質の補助率

この制度では、窓のサイズと窓の断熱性能、工事の種類により、下図のように1窓ごとの補助単価が定額で決められております。昨年度に比べて、内窓設置の補助単価が少し減り、カバー工法の補助額が増えていますが、これは、昨年度の補助実績を基に補助率が1/2相当等になるように設定されたことによります。補助率1/2相当等の定額補助は、補助率としてはとても高いといえるでしょう。

また、補助額の上限は、200万円/戸なので、よほどの窓の多い豪邸でない限り、補助額の上限以内で、すべての窓の補助金を利用して、窓と玄関扉の断熱改修ができるのではないかと思います。

分譲マンションや賃貸住宅でも積極的に活用を考えたい

この制度は、戸建住宅だけではなく、分譲マンションや賃貸マンションなどの集合住宅も対象です。昨年度は、上述の通り戸建住宅と集合住宅で、予算の枠が分かれていました。今年度は、その枠はなくなり、総予算が増額になっています。昨年度、より予算の消化率が高かった集合住宅にとっては、朗報と言えるでしょう。

加藤係長によると、昨年度は集合住宅の申請割合は、分譲が約75%で、賃貸が約25%にとどまっていたそうです。賃貸マンションでは、改修を判断するオーナーと居住者が異なるため、断熱改修を行うメリットが感じづらく、活用が少なかったのではないか、と思われます。今年度は賃貸マンションでの積極的な制度活用をPRし、事業の活用に繋げていきたいとのことで、賃貸集合住宅での活用をアピールするとても分かりやすい動画も作成されています。

外壁等の断熱リノベや高効率給湯器への更新も補助対象に!

国土交通省、経済産業省、環境省の3省が連携して、省エネ関連補助金を同時に活用できる「住宅省エネ2024キャンペーン」を行っており、専用ホームページが開設されています。

環境省の「先進的窓リノベ2024事業」は、国土交通省の「子育てエコホーム支援事業」、経済産業省の「給湯省エネ2024事業」、「賃貸集合給湯省エネ2024事業」と同時に活用することができます。同一箇所に2つの補助金を使うことはできませんが、窓の断熱リノベと同時に、外壁、屋根・天井、床の断熱改修やバリアフリー改修、高効率給湯器の導入等の補助金を活用することが可能です。

窓だけでなく、もっと本格的な省エネリノベを考えるチャンスでもあります。

賃貸住宅が省エネ性能・断熱性能で選ばれる時代に!

今年4月から、建築物省エネ法に基づく「建築物の省エネ性能表示制度」が始まっています(関連記事:『2024年、住宅業界に大激震!日本の家「高断熱・省エネ重視」の時代到来で「資産価値」にも影響』)。この制度により、新築住宅には、省エネ性能や断熱性能(断熱等級)の表示努力義務が課されており、これらは、SUUMO等の不動産ポータル制度でも表示されます。そのため、今後、賃貸宅の借り手は、省エネ性能や断熱性能(断熱等級)を見比べながら住まい選びを行うことになります。

それでなくても古い賃貸住宅は、一般的に、冬寒く、夏暑く、結露がひどいという印象があります。空き家率がますます高まる中、これからはさらに断熱性能による差別化が明確になり、古い賃貸住宅は、賃貸住宅マーケットで競争力を失う可能性が高まっています。

つまり、既存賃貸住宅も省エネ・断熱の性能向上が求められるようになったということです。窓・玄関だけの断熱改修だけでは、もちろん「高気密・高断熱住宅」と言えるような本格的な高性能住宅相当のレベルまで劇的に性能を向上できるわけではありません。しかしながら、同じ築年数の賃貸住宅に比べれば、かなり断熱性能は高くなりますから、賃貸住宅マーケットでの競争力が間違いなく向上します。

また、結露が生じにくくなり、冬は暖かくなるので、住み心地がかなり良くなります。そのため、退去率が下がり、空室リスクを低減することができます。実際、高断熱の賃貸住宅は、満室稼働後に評判が高まり、退去率が低く、空室待ちの状況になっており、新規募集のたびに家賃を値上げしている事例も多いようです。ぜひこの機会に、この制度を活用して、賃貸住宅経営の競争力向上・安定を図ることをお勧めします。

窓・玄関の断熱改修を行うなら、第三者評価(BELS)の取得も

2024年3月31日以前に建築確認申請を行った既存の賃貸住宅には、省エネ性能表示の努力義務は課されませんが、表示を行うことは可能です。せっかく窓の断熱改修工事を行うのであれば、併せて第三者評価(BELS:建築物省エネルギー性能表示制度)を取得した上で、省エネ性能表示制度を活用して省エネ性能や断熱性能をアピールするべきでしょう。

既存住宅のBELSの評価取得には計算方法がいくつかあり、コストや計算結果に差が出るため、リフォーム会社か省エネ計算業務の委託先等に相談してみてください。

賃貸住宅の賃借人も活用可能

なお、「先進的窓リノベ2024事業」は、賃貸住宅において、賃借人が発注者となって、申請することも可能です。今お住まいの賃貸住宅を気に入っているものの、冬寒く、夏暑く、結露のひどさに悩まされているのであれば、賃借人の費用負担で窓の断熱改修を行うことも可能です。

その場合は、事前に所有者の承認をもらう必要がありますし、基本的には原状回復義務の免除について、書面で合意の旨を確認しておくことをお勧めします。

既存住宅の断熱性能向上は社会全体の喫緊の課題

我が国の住宅の断熱・気密性能がほかの先進国に比べて、非常に劣っていることは、今までもご説明してきている通りです(関連記事:『日本の住宅は「先進国中、ダントツで低性能」…“寒さ、結露、高い光熱費”は当たり前ではない』)。国は、「脱炭素」という観点から力を入れていますが、居住者にとっては、値上がりが続く冷暖房光熱費負担の軽減、ヒートショックやアレルギー・喘息リスク等の健康面、そして何よりも、高気密・高断熱住宅の快適な暮らしは、QOL(Quality of life)を向上させると言っても、過言ではありません。

ぜひ、この大型の補助制度を活用して、住まいの環境改善を図ることを検討してみてください。

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