死ぬ間際の「8年間」、“自力で生きられる男性”と“介護される男性”…定年直前の過ごし方の決定的な違い
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月23日 16時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
定年後の生活を考えるようになってから、多くの人にとっての重要な関心ごとの1つが健康ではないでしょうか。よりよい生活を過ごすためになによりも大切なのが健康の維持・向上です。厚生労働省(※1)によると、健康寿命と平均寿命の差は2019年時点において、男性は8.73年、女性は12.07年です。データだけを見ると、あまり自分事と感じることはできないかもしれませんが、この年数を健康に過ごせるか、否かは、人生の充実度合いも変わってくるかもしれません。本稿では日本総合研究所創発戦略センタースペシャリストの小島明子氏が、定年の準備に向けた健康について解説していきます。
学歴が高い人ほど運動やスポーツを行っている!?
日本総合研究所の調査によれば、特に東京圏の企業に勤める高学歴中高年男性ということに目を向けると(大学難易度区分の高さの順はD>C>B>A)、「運動やスポーツをしていない」男性は、学歴区分Aでは40.3%、学歴区分Bでは42.4%と同程度。しかし、学歴区分Cをみると35.7%、学歴区分Dでは32.8%まで減り、大学難易度区分が高いグループほど、運動やスポーツを行っていることが明らかになっています。
体力への自信は、大学難易度区分ではほとんど差異はなく、自信がある男性(「体力に自信がある」「どちらかといえば体力に自信がある」)は約半数であり、大学難易度区分が高いグループほど、普通体重(BMI18.5~25未満)の男性が増える傾向がみられます。運動習慣のある高学歴中高年男性が全体として多いとは言い切れませんが、大学難易度区分が高いグループに含まれる男性ほど、健康への意識は高いことがデータで読み取れます。
コロナ禍以降は、オフィスワーカーを中心に、テレワークが増えたことで、座る時間が長くなっている方は少なくありません。日本人は、諸外国のなかでも座る時間が長い国といわれていますが、座る時間が長いと寿命が短くなるというリスクも指摘されています※2。
厚生労働省では、1日約8,300歩※3を目標に掲げていますが、定期的な運動とともに、歩数計で管理しながら、日ごろから歩いたり、階段を上る癖などをつけることが大切です。因果関係があるというわけではないのですが、年収が高い人ほど、よく歩き、早歩きであるというデータもあります。
健康であれば、仕事のパフォーマンスも上がり、質の高い仕事や勉強ができますので、運動が難しければ、まず、早歩きと、歩数を稼ぐということから始めてもよいのではないでしょうか。
先進国で最も眠らない日本人
OECD※4によれば、日本は諸外国と比べて男女ともに最も睡眠時間が短いことが明らかになっています。諸外国の睡眠時間の平均が男性8.42時間、女性8.50時間であるのに比べて、日本人の男性は7.47時間、女性は7.25時間です。諸外国に比べて、男女ともに睡眠時間の平均が少ないことがわかります。
一方、前述の日本総合研究所の調査によれば、社長、重役、役員、理事など経営幹部においては、「睡眠が取れている」という回答がほかの職位に比べて4割程度、高いことが明らかになっています。
ストレス状況については、「役職なし」の男性を除くと、役職が高い人ほど、ストレスを感じている人が少ないことも示されています。役職が高い人ほど、責任は重いものの、仕事の裁量もあり、働きがいややりがいを感じていることで、たとえ忙しくても睡眠がきちんととれているとうことなのかもしません。
主体性をもって休暇の取得する
休暇をきちんと取得して、心身ともに疲労回復することはとても大切です。働き方改革関連法等の影響から、有給休暇を取りやすい職場は増えていると思いますが、その休暇は、どれだけ自分の意思で取得をしたものでしょうか。なかには、職場の都合上から、取得実績づくりのために、強く奨励されるケースは少なくないと感じます。
しかし、定年後に仕事をしていなければ、毎日、主体的に自分でやることを決めなければなりません。ゴールデンウイークや土日、年末年始だけではなく、日ごろから自分が主体的に休みを取る習慣をつけることは、新たな経験の蓄積だけではなく、定年後の過ごし方の準備にもつながるのではないかと考えます。
答えがでなくても自分を許す
本稿では、定年の準備に向けた健康というテーマについて述べました。
健康寿命と平均寿命の差の期間を健康に過ごすためには、定年直前から運動習慣をつけ、睡眠や休暇の取得を通じた休息を取ることが大切です。しかし、近年は変化の激しい社会を生き抜くために、高い生産性が求められるようになり、体を休めるだけでは、精神的な休息を得ることが難しい時代になってきていると感じます。
2017年、精神科医の帚木蓬生※5氏が、書籍『ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力』(朝日選書)を通じて「ネガティブ・ケイパビリティ」を紹介し、日本でも「ネガティブ・ケイパビリティ」という概念が知られるようになりました。
「ネガティブ・ケイパビリティ」とは、「どうにも答えの出ない、どうにも対処しようのない事態に耐える能力、性急に証明や理由を求めずに、不確実さや不思議さ、懐疑のなかにいることができる能力」※6とされています。
特に、定年前になると、今後のキャリアへの迷いなどさまざまな気持ちが出てくる瞬間もあります。そのようなときに、「ネガティブ・ケイパビリティ」という概念を踏まえ、あえて答えのないなかに身を置くことに慣れることの大切さを知っておくだけでも、気持ちが軽くなる部分があるのではないでしょうか。
参考 ※1:厚生労働省「平均寿命と健康寿命」 ※2:厚生労働省「座位行動」 ※3:厚生労働省「身体活動・運動」 ※4:OECD “Gender data portal2021” ※5 帚木蓬生(2017)『ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力』(朝日選書) ※6:帚木蓬生(2017)『ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力』(朝日選書)小島 明子 日本総合研究所創発戦略センター スペシャリスト
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