ノンレム睡眠が少ないと認知症になる? 睡眠中に体の中で起こっていること【医学博士が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年5月2日 11時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠の2種類があることはよく知られていますが、体内ではどんなことが起こっているのでしょうか? 医学博士、また日本リカバリー協会代表理事でもある片野秀樹氏の著書『休養学: あなたを疲れから救う』から、一部抜粋してご紹介します。
電車で寝ていて横の人に寄りかかるわけ
ここからは睡眠について現段階でわかっていることを詳しく説明していきましょう。
睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠の2種類があることはよく知られています。
レム睡眠のREMとは、rapid eye movement の頭文字をとったもので、「急速な目の動き」という意味です。レム睡眠のときは、眠っていても閉じたまぶたの上から目の玉がぐるぐる動く様子が観察できます。このように目が動いているとき、脳は夢を見ているといわれます。
一方、ノンレム睡眠はレム睡眠ではない状態です。
ノンレム睡眠には3段階があり(4段階説もあります)、ノンレムの頭文字のNをとって、いちばん浅いノンレム睡眠をN1、真ん中はN2、そしていちばん深い3段階目の眠りをN3といいます。
人間は一晩に何回かレム睡眠とノンレム睡眠を繰り返すのですが、そこには一定のパターンがあります。
まず入眠するとノンレム睡眠のN1に入ります。そしてN2、N3と深い眠りに移っていく。そして来た道を戻るようにN2、N1に戻り、次にレム睡眠に入ります。
レム睡眠の特徴は、すでに述べたように夢を見ているということです。脳は動いているけれど体は動いていません。首から下の活動がシャットダウンしているからです。体が動かないので寝返りも打てません(寝返りを打つのはノンレム睡眠のときです)。
いわゆる金縛りにあうのは、レム睡眠のときに何らかの影響で意識が戻ってしまって、体を動かそうとしても動かないことに気づいてパニックになるからです。
たとえば電車でうたた寝するとき、たまに隣に寄りかかる人はいても、だいたいの人は眠ったまま座った姿勢を保っているでしょう。それは入眠した直後は、N1に入るからです。もしここでレムに入っていたら、体に力が入らず、倒れてしまいます。
うたた寝が本格的な睡眠になり、N1が徐々にN2、N3になると、体から力がだんだん抜けて、船を漕ぐようになり、N2くらいで隣の人に寄りかかってしまうというわけです。
ノンレム睡眠が少ないと認知症になる?
「N1→N2→N3→N2→N1→レム」のワンサイクルの所要時間はおよそ90分です。この90分サイクルが1晩に3回から4回ぐらい繰り返されます(図表1)。いちばん眠りが深いN3のときに起こされてしまうと、ぼうっとしてなかなか起きられません。N1やレムのときであれば心地よく起きられます。
朝にかけて90分のサイクルを繰り返していくと、N3の深い睡眠の時間が徐々に少なくなって、レム睡眠が増えます。
レム睡眠のときは脳が昼間の経験を整理したり記憶に定着させたりする時間です。ということはレム睡眠の多い後半のほうの睡眠をおろそかにすると、自分が昨日経験したことを記憶として脳に定着させにくくなってしまいます。受験生は勉強のために睡眠時間を削って3時間くらいしか寝ないことがありますが、これではレム睡眠が長くなる手前で起きることになります。ちゃんと寝たほうが、記憶の定着などの学習能力が高くなることは知っておいてほしいと思います。
レム睡眠とノンレム睡眠では、それぞれ体内でおこなわれていることが違います。ノンレム睡眠のときはアミロイドβベータという脳の老廃物を脳外に排出することがわかっています。
アミロイドβは脳内でつくられるタンパク質で、健康な人の脳にもありますが、長期間排出されずに脳内に蓄積することによって認知症になるといわれています。「認知症にならないためには、1日何時間以上寝なさい」といった基準はありませんが、普通に考えて5~6時間以上は必要でしょう。
片野秀樹
日本リカバリー協会代表理事
博士(医学)
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