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求人市場の過熱で採用コストが急上昇中…企業が「失った人材を補充する」ことよりも大切にするべきこと【人材紹介のプロが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年5月10日 7時15分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

採用活動にはさまざまな種類があります。しかしながら業種・業態を問わず「採用コスト」そのものは上昇し始めているようです。本記事では、東京エグゼクティブ・サーチの代表取締役社長・福留拓人氏が、いま採用コストが上がっている背景や、今後企業が人材確保のために留意すべき点などを解説します。

企業が春闘で「賃上げアップ」を受け入れた背景

今年の春闘では、3月にベースアップの集中回答日がありました。報道でご覧になった方も多いと思いますが、大企業を中心に、驚くほどの賃金上昇を企業側が飲んだことで注目されました。政府からの賃上げ要請に対応していくということが大前提にはなっていますが、企業側の本音としては、もうひとつ要因があると思われます。

それは、ここで賃上げを渋って従業員の退職等を引き起こしてしまうと、その後の人材の補充が難しくなるということです。私は、「政府からの要請」と「人材補充の難しさ」、この2点が賃上げ要求を飲まざるを得なかった大きな理由だと考えています。

調べてみると、企業における直近の一人当たり採用コストは統計よりも急上昇しているようです。

採用活動にはいろいろな方法があり、求人広告を打つ公募型もあれば、エージェントを介しての紹介型もあります。また最近普及してきたリファーラル採用(社員の紹介や推薦)などもあります。

私どものような人材紹介会社を経由した採用については、直近では業種を問わず一人当たりの紹介料率が初年度年収の40%を超えることもめずらしくなくなってきました。年収の40%というと非常に高額になるわけで、数年前に30~35%平均だったものが35~40%平均、すなわち5%上昇したということです。

これは大変な上昇といって差し支えないと思います。

需給の理屈ですが、売手市場が過熱して人が採れなくなれば、他社に先んじて紹介料率を引き上げる動きにつながります。すると他社もそれに追随せざるを得なくなるわけですから、この状況はいかに求人市場が過熱しているかということを物語っています。

こういった場合に、一部の大企業は別にして、世の中の大半は中小企業ですから「中小企業にはこういった傾向は見受けられない」というような論調も見受けられます。

しかし、採用コストについては、業種、業態を問わず、おおむね一斉に上がりはじめているといって過言ではないでしょう。

これまでのコラムでもたびたび触れてきているように、残念ながら少子高齢社会という背景は短期間で解決するような問題ではありません。

そして外国人の登用についても、言語の問題もさることながら異文化を社内に融合させる難しさがあり、日本ではあまり積極的ではありません。

優秀な社員を失わないために、何をすべきか考えることが重要

このような状況を考えると、引き続き優秀な若手・中堅の人材を多くの企業が激しく奪い合う構図が続くと思われます。このたびの賃上げと連動し、採用コストもおそらく釣られるように上昇を続けるものと予測しています。

この採用コストを下げるには、人材の流動性を高めることが必須になりますが、一生涯の転職回数が増えることによる多少の流動性の向上は見られるものの、まだまだグローバル化とは程遠い閉鎖的な環境が蔓延しているといえます。

こうした状況においては小さなコップのなかで流動性が高まっているにすぎず、大きな流れで採用コストを下げるというところには至っていないと思います。ですから、今年中あるいは来年あたりまでは採用コストの上昇が続くのではないでしょうか。

伝統的な大手企業のなかには、もともと通年採用を中心としたネームバリューのある会社があります。そこでは集客力や採用力があり、これまで採用に関しては人を選んで採れるという、よくいえば横綱相撲を取ってきた会社も多いと思います。ところが、最近は若年層を中心に企業評価に関しても非常に価値観が多様化してきています。

ですから、伝統的なネームバリューを持つ大手企業といえども、この採用力強化の部分であぐらをかくと危険なことになります。ある年を境に一気に人で対応できなくなるということもあり得ますので、充分な対策が必要です。

冒頭に申し上げたとおり、採用も大事ですが、退職させてしまうとなかなか補充が利かない点に留意するべきではないでしょうか。

さて、若い人のなかには日本とアメリカが戦争をしたことをあまり知らない人もいるそうです。そのような時代に太平洋戦争の例を引くのもどうかと思いましたが、わかりやすい事例なので参考までにご紹介しようと思います。

近代戦争では航空機が大きな存在感を持ちますが、その航空機を乗りこなすのはいうまでもなく訓練された操縦士です。この操縦士を戦闘で亡くしてしまうと補充が非常に難しいわけですが、戦争当時の日本はそこまで対応ができませんでした。

ひとりの操縦士を育てるために必要な訓練や燃料は相当なものになります。ですからアメリカなどはパイロットを戦死させないことにコミットメントし、頑丈な機体を作ったりパラシュートなどの脱出装置を装備したり工夫をしていました。

日本軍は残念ながら兵を使い捨てにする傾向があり、人を守るという配慮ができなかったようで、多くの優秀な人材を失いました。

現代の企業活動でも同じようなことがいえるのではないでしょうか。失った人材を補充するのはもちろん大切なことですが、優秀な社員を失わないために何をすべきか考えるべきです。

言い換えれば、いかに短期退職をさせないか、という仕組みづくりがますます重要になってきます。そういう意味で企業にとっては、採用力の優劣が問われる新年度のスタートになるのではないでしょうか。

福留 拓人 東京エグゼクティブ・サーチ株式会社

代表取締役社長

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